『在宅医療・ホスピスのイロハ』 ~第4回:ホスピスとは?~

 

「ホスピス」とは、「根治が難しい患者さんとその家族が、可能な限り質の高い治療・療養生活が送れるように、身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助をするもの」です。

現在は主として、悪性腫瘍(癌)またはエイズ(後天性免疫不全症候群)疾患にかかり、かつその症状が末期である患者さんに対し、ホスピス緩和ケアが提供されています。

昨今の医学の発達により、苦痛を和らげ+るための方法が続々と発見されるようになっていることから、医学界ではホスピスがより注目を浴びるようになってきています。

そこでこの第4回では、「ホスピスの起源」、「ホスピス緩和ケアの種類と各種について」、「ホスピスの制度的発展」という大きく3つのトピックについてご説明していきます。

 

在宅医療、ホスピス緩和ケア

画像出典:hospiceofsiouxland.com

 

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『在宅医療・ホスピスのイロハ』の目次

 

第1回 『在宅医療・ホスピスのイロハ』について

第2回 在宅医療とは?(1)

第3回 在宅医療とは?(2)

第4回 ホスピスとは?

第5回 在宅医療・ホスピスに関する近年の行政の動き(1)

第6回 在宅医療・ホスピスに関する近年の行政の動き(2)

第7回 今後の在宅医療・ホスピス業界の課題

第8回 シリーズまとめ ~在宅医療・ホスピス業界に必要なこと~

 

ホスピスの起源

 

ホスピス」という概念は、決して古いものではありません。

おおよそホスピスを説明する際には、「日本ホスピス緩和ケア協会」の資料が引用されることが多いので、『Be Nurse』でもそちらを引用しておきます。

 

これまでの医療は、治癒させることに専念するあまり、治癒できない場合の対応がほとんど考えられていませんでした。
治癒できなければ延命策を講ずるという図式が連綿と続けられていました。『検査・診断・治療・延命』という4つの働きが近代病院の目的と考えられてきたからです。
しかし、たとえば、病状の進行した癌患者さんの何割かが直面する激しい痛みや息苦しさ、変化する病状への不安に対しては、この4つの流れのなかで対応するには限界があります。
このような状況下におかれた患者さんの痛みと不安を、何とかやわらげてあげたい・・・。それがホスピスを誕生させたときの願いでした。
この考え方を本格的に実践してみせてくれたのが1967年、シシリー・ソンダース医師が率いたイギリスのセント・クリストファー・ホスピスです。(「ホスピスってなぁに?」より引用)

 

このように、1967年よりイギリスではじまったのがホスピスです。

なお、日本で最初のホスピス緩和ケアを提供する病床は、大阪の淀川キリスト教病院(ホスピス長:柏木哲夫)に設けられました。

この病院での実質的なホスピス緩和ケアは、1973年から始められたそうです。

そんなまだまだ若い「ホスピス」という制度には、どんな種類がありそれぞれがどんな取り組みをしているのでしょうか? また、それらはどのような形で広まり制度化されていったのでしょうか?

それらを以下、順にご説明します。

 

ホスピス緩和ケアの種類と各種について

 

ここでは、ホスピス緩和ケアにはどのような種類があり、それぞれがどのようなものかという点についてまとめておきます。

特に医療従事者の方は、今の自分に関係がありそうかどうかという視点で見ると、実感を持ちながら読み進められるのではないかと思います。

 

ホスピス 看護

画像出典:minigolfs.net

 

 

ホスピス緩和ケアの種類

 

まずは、ホスピスの種類についてご説明します。

ホスピスは、下記の5種類に分けることが出来ます。(参照:ホスピスネット

 

  1. 病院内病棟型:一般病院の一部の病棟をホスピスに利用するもの。これは、一般には「PCU(palliative care unit)」と呼ばれています。
  2. 病院内独立型:一般病院の同一の敷地内に存在しながら、一般病棟とは独立したホスピスとしての建物をもつもの
  3. 病院内緩和ケアチーム:病院内に緩和医療を行うための専門家を用意しているもの
  4. 在宅ホスピス:入院施設を持たず(あっても短期入院のみ)、在宅ケアを主としたホスピス・ケアを行うもの
  5. 完全独立型:終末期医療・緩和治療を行う施設。緩和医療以外の積極的な治療を行わない

 

これらの中でも、1と2については比較的認知度が高いと思われますので、割愛します。

以下、制度としては新しい3の「緩和ケアチーム」、そして4の「在宅ホスピス」についてご説明していきます。

なお、1と2についてもっと知りたい方は、上記参照先「ホスピスネット」をご参考くださいませ。

 

「緩和ケアチーム」について

 

<「緩和ケア」が出来た背景>

 

がんに伴う苦痛は、適切に治療しなければ生きる力を失わせてしまうものです。

これまで、そうした方への処置としては、延命ないしは治療の選択肢がとられてきました。

しかし、昔とは違い、医学の発達によって苦痛を和らげるたくさんの方法が見つかっています

各診療科の医師は「がんに対する治療」を専門に行いますが、苦痛を充分にとりきれないことがあるため、
主治医に加えて、苦痛緩和や精神的支援を専門とする医師、看護師、薬剤師、 リハビリテーションスタッフなどが「緩和ケアチーム」として緩和ケアに関する診療を行う活動が始まりました。

緩和ケアチーム」は日本では2002年から保険診療の対象になり、全国で広がりつつあります。(※下図参照)

 

緩和ケア病棟

出典:産経新聞「『延命』から『痛みの緩和』へ 変わる終末期医療のあり方」(2015年1月27日)

 

<「緩和ケアチーム」の担い手>

 

  1. 医師:「症状を緩和する治療を主な業務とした経験が3年以上あること」または「3年以上がん専門病院又は一般病院での精神医療に従事した経験を有する者であること」
  2. 看護師:「経験が5年以上あり、所定の資格を取得すること」
  3. 薬剤師:「緩和ケアの経験を有すること」

 

緩和ケアチームの担い手には、上記が義務付けられています。

※ただし、現状では、これら全ての条件は満たしていなくても、チームとして活動している病院もあります。
施設によってはソーシャルワーカー、リハビリテーションスタッフなどが加わっている場合もあるようです。
(参考:日本ホスピス緩和ケア協会

 

「在宅ホスピス」について

 

<「在宅ホスピス(ケア)」とは?>

 

在宅ホスピス」とは、ホスピス緩和ケア病棟に入院するのではなく、医師や訪問看護師などが自宅に訪問し、患者さんの苦痛症状を和らげたり、精神的支援や環境の整備を行なったりするケアのことです。

看護師や訪問看護師には、患者と家族が家にいても安心して療養できるような、きめ細かな配慮が要求されます。

 

<「在宅ホスピス(ケア)」を受けるためには?>

 

前提として、患者さんとご家族が在宅ホスピス緩和ケアを希望していること、また、患者さん自身が病名や病状を正しく理解されていることが望ましいです。

そのうえで、まずは通院中の医療機関の主治医または医療相談室に相談するのが通常です。

その場合にかかりつけ医がいない場合には、在宅ホスピス緩和ケアを行なっている診療所や訪問看護ステーション、ホスピス緩和ケア病棟に問い合わせをすることになります。

なお、都道府県によっては、在宅緩和ケア支援センターが設置されている自治体もあり、多くは病院に委託して、相談や支援活動を行っています。

患者さんおよびご家族の方が、在宅ホスピスについてより詳しく知ることを望まれる場合は、行政窓口に問い合わせて頂くのがよいでしょう。
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