「レスパイトケア」という言葉は間違っている?【Kukuru・鈴木恵代表インタビュー1】

本記事の目次

可愛い子には旅をさせよ

 

――先ほど少し触れられていましたが、個人的にも、障がい児を持つご家族の方は戦々恐々とされているイメージがあります。ある種かわいい子を崖から落とすのを「やっちゃいけないこと」だと強く思われている気がしていて。Kukuruのサービスにお問い合わせくださる方は、もともとその辺りに理解がある方が多いのですか?

 

そうですね。

うちの訪問看護のスタンスは、私自身が親も寝たきりだったし子供も障がい児ということもあり、常に「家族」・「当事者」なんです。

実際に自分が介護に関するいろんな目に合ってきて、親の時も子供の時もそうなんですけども、もう正直、医師と看護師さんが苦手なんですね。笑

もちろん全員が全員ではないのですが、病院で自分たちが「指導」をしているという感覚の方や、考えた結果として行動を起こしているのに、そこを聞きもしないで全否定される方なんかは、やはり「合わないな」と感じますね。

一部の看護師さんやお医者さんは、とても家族に寄り添って、気持ちをきちんと聞き出して、「そっか、そういう風に思っているんだね」という形で一緒に歩んでくれます。

ただ、そういう人はすごくまれで、多くの方は「自分の考えが合っている」とか「そういうことやっている親がいかん」といった考えになってしまっている気がします。

 

実は、私が東京で訪問看護をしていた時に障がい児の親として嫌な思いをたくさんした経験があるのですが、その時に、「そのことを何か社会に還元しなかったら私の経験が無駄になる」と言ったら大仰ですが、「とにかくもう私と同じような思いをさせちゃいけないな」と思って。

だから、たくさんの悩みごとを抱えるお母さんたちを守る・守れる自分、お母さんたちが自分で自分を守れるように手立てを講じていきたいと思っています。

 

――看護師の価値のお話に関して、看護師ではない私が思うのは、「時間軸が違うんだろうな」ということです。治療空間を「卒業」していく以上、その後の時間については、言い方悪くするとある種「無駄」に思えちゃうんじゃないかと。。。

 

でも、本当にそうですね。

たぶん医療って中で見ると、今目の前にある現象しかみていないと思う。

で、今この時間で言われたことを解決して終わりみたいな感じじゃないですか。

しかし、私たち自宅で暮らしている人にはいろんな背景があって、いろんな毎日があって、今ここだけのことを言っているのではありません。

治療は、いちトピックスとして言っているだけなんですよね。

だから、そこが分からなければ「在宅支援」は出来ないだろうとは思います。

 

だから、うちはすごく「変」な法人に見られていると思います。笑

要はうちがやっていることの意味が分からないから、変なことをやっているように見える。

だからうちの場合は、病院からの依頼よりも、お母さんからの紹介や自分で探してこられる方が多いです。

 

その点、私はいつもスタッフに言うのですが、別に私たちは県や病院の人たちに良い点もらいたくてやっているわけじゃなくて、お母さんたちがkukuruのおかげで仕事をしていられること、お母さんに良かったって思ってもらえるだけでいい、と。

 

――サービスの根本の部分ですね。。。

 

そうなんです。

だから、うちのスタッフは私の考えに賛同できる人だから、ちょっと変な人だと思います。笑

 

――笑。医療からすると、という意味ですね。

 

そうですね。医療的な感じではない。

この子の「ココ」を支えるためにどうすればいいかというのを看護師として見ているのではなくて、人間として見ている人が多くて。

病院チックな思考の人が来ると、おそらく違和感がすごくて続けていられないと思います。

 

――でも、もし自分が家族の立場だったらと考えるとありがたいです。

 

絶対いいですよね! 私も自分でそう思います。笑

家族を支えるってそういうことじゃないですか。

 

以前東京であった例ですが、ステーション内の会話で「医療ケアがお母さんができるようになったらもう卒業よ」みたいな発言があったのですが、「卒業」というのもおかしい気がしていて。。。

代替案があって、他に行くところがあってということなら話は別ですが、まだショートステイにもいけない段階で、「お母さんが医療ケアできるようになったら卒業」というのはあまりに乱暴です。

 

近年、在宅が盛んになってきていることから、病院志向的な看護師さんが在宅に行くケースが増えてきているかと思いますが、こうした事象を見ていると、基本の「き」の字が分かっていないと上手くいかないように思います。

実際に、東京でもそうでしたが、沖縄でも訪問看護をやめてしまうお母さんがたくさんいるんです。

(配慮が足りなければ)「そりゃ、やめるよね」と。私自身も「嫌だ」と思いますので。

だからそうはなりたくないですし、親の立場に立って物事を捉えて、伝えたり分かり合えたりしていきたいと思います

これが、「レスパイト」の推進にも繋がってくると思っています。

 

――ネット上のコメントでも、訪問看護師の方が「訪問看護って病院と全然変わらない」というご意見を表していることがありますが、それはもともとその人がずっと患者さんと向き合うときに「人対人」で接していたからなのですかね。

 

それは違うような気もします。

本当のところはわかりませんが・・・笑

 

――あ、そうか。「時間が決まってる中でルーティン的にこなすという意味では変わらない」という線もありますね。笑

 

そうです!

多分介護保険はそうなっちゃうと思います。時間が30分とかですから・・・。

30分とか1時間とかの訪問だと、バイタルを測って、お薬確認して。で、膀胱洗浄して終わりだとか、体拭いて終わりだとか、そういうルーティーンワークに陥りやすいかと思います。

 

ですので、介護保険をやっているところのステーションさんが障がいと一緒にやっていくのはなかなか厳しいと思います。

基本的に考え方が違いますし、時間に追われて訪問回数をこなさなきゃならい業務とお母さんやお子さんとじっくり話す業務の切り替えが結構難しいと思います。

 

実例としては、「病院で子どもや親の状況のことはお構い無しに、ケアを進められる毎日が耐えられない」って言っているお母さんがいて、「お家に帰ってきてまだそんな目にあいたくない」と仰っていたことがあります。

これには、「そうだよね~」としか言えません。

 

何か「業務」をやっていないと気が済まない看護婦さんはたくさんいると思うんです。

病院にいたら、こなすことが業務だから。

そういうマインド、つまり、ゆっくり話すといったことを「無駄なこと」と認識する仕事の仕方が定着している人は、訪問に行くときに考え方を変える必要があると思います。

 

――鈴木さんが病院で勤務されているときはいかがでしたか?

 

病院は耐えられなかったですね。笑

 

――昔からそれは思っていたのですか??

 

かもしれません。。笑

ただ、私が病院にいた時のことを思い返すと、やはりいかに早く終わらせるかが「デキる看護師」の指標にはなっている感じでしたね。。。

 

※次回は、「若い時の困難は必ず活きてくる!」との題にて、鈴木恵さんの過去を遡っていきます!

 

 

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在宅介護する家族を癒すレスパイトケアとは?明るく前向きにケアを続けるために

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