意思決定支援とは、文字通り「意思」を「決定」することを「助ける」という意味です。
対象者の意思がある限り、「難しくない」と考えられがちです。
しかし、そのプロセスは支援対象者の個性、認知力、身体・精神状態に合わせた援助であり、支援者には熟練した傾聴技術と忍耐力が求められます。
本記事では、意思決定支援の意味と、看護師が果たす役割について解説していきます。
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意思決定支援とは
昨今注目されている意思決定支援ですが、まだ(医療上の)明確な定義はないようです。
そこで、全国知的障害者関係施設長等会議の資料にあるように、一般的な意味を述べるとすると下記の意味を持っています。
- ① 決定を下支えする十分な体験や経験(決定する経験)があり
- ② 決定に必要な情報の入手・理解(統合)・保持・比較・活用がなされ
- ③ 決定した意思が表出できるという流れのこと
意思決定完了までのプロセスとは
上述したように、意思決定が完了するまでには、プロセスがあります。
また、意思決定の支援の対象者は、患者本人だけでなく、患者を取り巻く家族なども含んでいます。
ここでは手術についての意思決定を例に挙げて説明していきましょう。
意思決定支援 ~手術の過程を例として~
手術を例とした意思決定支援を順に述べると、下記の通りです。
- 1.スムーズな意思決定を阻害する要素を把握します。(認知力の低下、著しい不調・疼痛・苦痛など)
- 2.手術が必要な理由を説明し、正しく理解されているか確認
- 3.手術を受けるとどうなるか、受けない選択をした場合どうなるかを説明
- 3-a.手術に代わる代替治療(例えばカテーテル治療、内視鏡治療)がある場合はその方法を提示
- 3-b.手術を選択した場合も、複数の術式がある場合(例えば開腹手術と腹腔鏡手術の比較)各方法のメリットとデメリットを説明
意思決定支援においては、これらいずれのプロセスにおいても、支援の対象者の認知力や理解力に合った説明方法が選択されているかを確認することが必要です。
そして、正しく情報が伝わり理解され、自らの意思を表出できるように支援することが必要になります。
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意思決定支援が必要な場面とは
日本看護協会のホームページでは「高齢者の意思決定支援」「統合失調症患者の意思決定支援」などについて看護倫理の項で掲載しています。
それによれば、意思決定支援には下記の特徴があります。
- ・「在宅か施設入所か」「手術か保存療法か」「延命治療を行うか行わないか」という場面だけではなく、日常のあらゆる場面に存在している。
- ・特に、判断力、認知力が低下した患者さんの意思決定支援は、日常生活の中に数多く存在
- ・意思決定支援の対象者は、年代や病状を問わない
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