看護師は、患者さんにもっとも近い職業です。
これは言わずもがなの話。
しかし!
これは、看護師のスキルアップが、
「治療の促進」のみならず、
「患者さんの満足度の向上」につながることを意味しています。
すなわち、これは患者さんのQOLが向上するということ。
本記事では、
「介護・介助スキル」、「コミュニケーション術」、「効率的な業務遂行術」
の3種の看護スキル(計20のスキルアップ術)を身につけることで、患者さんのQOL向上を目指します。
画像出典:fasttrack.nu
本記事の目次
看護師スキルアップ術 ~介護・介助スキル編~
【看護師スキルその1】食事介助
食事介助は、シーン別に分けると理解が進みます。
シーンとは、「食前」「食事中」「食後」の三つを指します。
(1)介助における「食前」の確認事項
事前に身体、精神、環境などの利用者が置かれている現状を十分把握し、そのうえで利用者に適した介助方法が必要です。
以下の確認を行い、食欲減退や事故につながる原因をあらかじめ取り除いておきます。
- ●便秘・便意や尿意の有無
- ●体の痛み、痒みなど苦痛の有無
- ●口腔内の炎症や虫歯の有無
- ●間食の有無
- ●誤飲の危険性の有無
- ●上肢の機能障害の有無と状態
- ●食べ物の温度や味付け・栄養バランス・盛り付け・咀嚼能力に適した調理法
- ●食事環境(悪臭の有無・清潔さ・団らん状況など)
(2)介助における「食事中」の確認事項
食事介助は、寝たきりの人でも、安静の必要がない限りは座位を保った姿勢で可能な限り自分で食べることが必要です。
食べこぼしや時間がかかっても自分で食事をする意欲と楽しみを尊重し、あまり手を出さずに以下の項目を見守る介助を心がけましょう。
- ●嗜好への配慮
- ●箸やスプーンなどの自助具や福祉用具は適切か
- ●食べる量は適切か
- ●食べる速さは適切か
(3)介助における「食後」の確認事項
食事の残量が多い場合は、「心身機能」の確認のほか、食事量と調理内容、介助方法などについても再確認していきましょう。
また、食事介助の注意点は、下記3つの「形態」で考えるといいでしょう。
こちらは、簡単に注意点をご説明しておきます。
(1)片麻痺のある利用者
片麻痺がある場合は利用者によって稼働の範囲が異なるので、まずは稼働範囲の確認をすることが重要です。
(2)嚥下障害のある利用者
嚥下障害がある場合は、食事中の誤嚥によって、嚥下性肺炎になりやすく、窒息などの危険性もあります。
(3)痴呆のある利用者
痴呆がある利用者の食事介助では、食べたことを忘れる・過食などへの対応が必要です。
食べたことを忘れる場合は、決して否定しないで、ほかに気が紛れることをしたり、「今準備中ですので待ってくださいね」などと話したり、上手に話題を変えていきましょう。
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【看護師スキルその2】口腔ケア
口のなかを清潔に保つことは、虫歯や歯槽膿漏の予防だけでなく、肺炎などの感染症の予防、食欲増進などにも効果があり、大変重要なことです。
自立に向けた介助を心がけたいので、座位を保った姿勢で口腔ケアの介助を行います。
歯ブラシの柄を握りやすくするなど福祉用具も活用していきましょう。
口腔ケアのポイントとしては、下記の3つがあります。
(1) ブラッシング法
(2) うがいができない利用者の場合
(3) 義歯の手入れ
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【看護師スキルその3】移動介助
移動介助のポイントをまとめると、下記の通りです。
(1) 利用者の状態把握
利用者の状態として以下の内容をチェックします。
- ・利用者の疾病、障害の部位と程度
- ・活用できる機能
- ・体型
- ・めまいの有無、呼吸の状態
- ・理解力・意欲の程度
- ・筋力の状態やバランス感覚
(2) 移動介助における留意点
移動の介護では、以下がポイントになっていきます。
- ・導線を考えた動きができること
- ・必要な物品を準備しておく
- ・使用する福祉用具が所定の位置に置かれていること
- ・活動しやすい服装・履物であること
- ・利用者に危害を与えない配慮(爪の長さ・名札・ベルトの金具・ピアス)がなされている
- ・事前に利用者への説明がなされている
以上の内容を確認し、利用者へ移動の介助を行っていきます。
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【看護師スキルその4】移乗介助
(1) 移動介助のポイント
車いすは種類が多いので、利用者に合った種類を選び、使用方法を確認していきます。
必ず、ブレーキ・タイヤの空気量など安全かどうか点検しましょう。
利用者には深く腰をかけてもらい、足はフットサポートに、腕はアームサポートに乗せてもらいます。
(2) 移動介助の留意点
座り心地を必ず確認し、発進することの声掛けは忘れずに行ってください。
止める時は、少しの時間であっても必ずブレーキをかけます。
このとき、片手はハンドルを握り、他方でブレーキをかけましょう。
QOLの向上のためには、時間がかかっても、
できる部分は利用者が自力で行うように見守り、促していくことが重要です。
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【看護師スキルその5】入浴介助
ここでは、入浴介助における手順を、シーン別にご紹介します。
<入浴前>
入浴の前に体調を確認したうえで、全身の状態を観察し適否を判断しましょう。
その後、入浴の意思を確認する声掛けを忘れずに行います。
入口の段差や転倒の危険性に注意しながら脱衣室へ移動し、衣類を脱がせます。
この時、麻痺がある場合は、「脱健着患の原則」(※)にそって行いましょう。
※身体に麻痺のある場合の衣服の着脱の原則で、服を脱ぐときは麻痺のない側から、服を着るときは麻痺のある側から行うというもの
<移動時>
浴室へ移動する際には、入口の段差や濡れた床への注意が必要です。
これは、最も初歩的なミスになりますので、毎回しっかりと注意しておきましょう。
なお、シャワーチェアが必要な場合には、シャワーチェアに湯をかけて温めておき、安全に座れるようにしておくと良いでしょう。
<シャワー時>
シャワー時のポイントとしては下記の通りです。
- ・シャワーの温度は必ず介護者自身の肌で確認する
- ・利用者の左足元からゆっくりシャワーをかけ、適温かどうか確認してから全身に十分シャワーをかける(心臓への負担を軽減)
- ・でん部・陰部用のタオルやスポンジに石鹸をつけてきれいに流す
- ・身体用のタオルやスポンジで全身を洗う
- ・手と足は身体の中心部に向かって洗い、心臓への血液の流れを補助する
- ・顔や髪を洗い終えたら乾いたタオルで耳の中も丁寧に拭き、浴槽に入ります。
- ・浴槽の温度も介護者自身の肌で確認することと、利用者の状態に合わせて適宜バスボードを使用
- ・浴槽から出る際は、利用者は体力が消耗しているので、注意を払いながら介助
- ・上がり湯をかけ、乾いたバスタオルで身体や髪を冷えないうちに短時間で拭く
<入浴後>
入浴後、衣類を着せたあとは、必要な場合はドライヤーで乾かし、ローションやクリームを塗ります。
そして重要なのが、必ず水分補給を忘れないように、部屋に移動してから飲み物を飲んでもらうことです。
上記が、入浴介助の手順やポイントです。
この工程で行えば、事故が発生することを防ぎながら入浴介助ができるでしょう。
ただし入浴介助において最も重要なことの一つに、
利用者とコミュニケーションをはかりつつ、体調をよく観察することもあるという点は、忘れないようにしましょう!
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【看護師スキルその6】トイレ介助
(1) トイレ介助における事前のアセスメント
利用者その人の「心身機能」「活動」のアセスメントと「環境因子」のアセスメントをつなげながら、安全に気持ち良く排泄行為が行えるようにしましょう。
以下、利用者の「活動」におけるポイントとなります。
- ●尿意・便意の自覚があるかどうか
- ●どのくらい我慢できるか
- ●トイレまでの移動動作に問題はないか
- ●トイレの便座に座る動作は可能か
- ●排泄に伴う一連の動作ができるか
- ●トイレから居間・ベッドまでの移動好意が可能か
上記ポイントに対して、「環境因子」が整っているか確認していきます。
- ●トイレまでの距離と廊下や床の状態→障害物や段差の確認
- ●トイレの広さ→車いすもは入れるスペースがあるか、介護者が一緒に入れるか
- ●便座の高さ、便器・便座の種類
- ●手すりの位置や段差の確認
- ●用便中・後の連絡方法
ここで、細かい箇所でも環境が整っていないと、簡単に事故が起きてしまいます。
小さな所まで視点を広げ、少しでも危険が生じる所は、あらかじめ対処法を考えておきましょう。
(2) 環境面でのトイレ介助のポイント
転落・転倒の防止、手すりや滑り止めの設置など、全過程が安全であることを確認していきましょう。
あくまでも、自立を尊重とした介助を心がけましょう。
また、可能な限りトイレで排泄はできるようにし、プライバシーを保って落ち着いて排泄ができるように配慮します。
そのため、心のこもったさりげない介助が必要です。
頼みやすい態度で接したり、頼まれたらすぐに応じる行動を意識していくと、利用者に我慢をさせない行為へとつながります。
さらに、当たり前のことですが、必ず清潔な環境と手洗い・換気を心がけましょう。
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【看護師スキルその7】体位変換
ここでは、体位変換の中でも「水平移動」の方法をご紹介します。
(1)移動方法
- ①利用者の両腕を腹部の上(もしくは胸のあたり)で組み、膝を立てましょう。
- ②肘関節で首を支えながら、手掌で肩骨部を支えます。
- ③介護者の反対側の腕を支柱にし、利用者の上半身を持ち上げ、手前に移動させていきます。
- ④片手を腰の下、片手を大腿部(お尻の近く)に入れ、手前に引きます(介護者の両膝は、ベッド脇につけ、介護者の腰を後方に下ろす)。
また、膝を立てられる場合は膝を経て手前に移動します。
(2)コミュニケーションの必要性
介助されることに慣れている利用者でも、テキパキと対応しながら取るコミュニケーションは大切です。
必ず、「膝を立てますよ~。痛くないですか?」などと自分が触れる部分とどのような体位になるのか、利用者に報告しましょう。
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