臨床の現場において、患者さんの死は避けて通ることのできないものです。
患者さんの死は残された遺族に対して大きな悲しみと悲嘆を与えてしまいます。
そんな悲しみや悲嘆と向き合い、乗り越えていくためのケアとして、最近注目されているのが、「グリーフケア」です。
今回は医療機関でおこなわれている「エンゼルケア」と「グリーフケア」の違いとその関連性についてまとめてみたいと思います。
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エンゼルケアとは?
エンゼルケアの定義
エンゼルケアは患者さんの死後の状態を整え、来世での生まれ変わりに繋ぐためのケアとして実践されています。
つまりエンゼルケアとは死化粧、死後処置のことです。
看護師にとっても、最後の看護となる「エンゼルケア」は病院や医療機関で働く看護師であれば、誰もが一度は経験しているケアではないでしょうか。
病気と戦う患者さんのそばで看護をしていた看護師だからこそ、それまでの看護を振り返り、患者さんとの関わりを思い返す機会でもあります。
エンゼルケアとは命と向き合うことのできるケアであるともいえるのです。
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エンゼルケアの具体的なケア
多くの医療機関では医療器具などを取り除き、清拭や着替え、化粧などを行い、患者さんの状態を整えます。
また浸出液の排出を防止するために、鼻や口、耳、肛門、腟などを綿など使って「詰め物」をします。
エンゼルケアの最近の動向
しかし最近の葬祭業者のサービス拡大に伴い、病院や医療機関では最小限の清潔の維持と、感染予防対策をすることがエンゼルケアの内容へと変化しつつあります。
葬祭業者でのエンゼルケアの需要が増えてきているのです。
家族の意向を十分に確認し、配慮しながら、エンゼルケアをおこなうことが大切です。
「エンゼルケアは看護師が最後に患者さんにおこなう看護である。」ということを忘れてはいけません。
グリーフケアとは?
グリーフケアの定義
グリーフケアとは、大切な人を亡くした遺族がその悲しみ(grief)を乗り越え、悲嘆から立ち直り、日常生活に適応していくことをサポートするケアです。
※参考記事:「グリーフケア」とは?~看護師なら完璧に知っておきたい看護知識~
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グリーフケアの具体的なケア
グリーフケアの基本となるのが、「12の段階」です。
人間が悲しみや悲嘆を乗り越えていく過程は12の段階に分けられるといわれています。
この12の段階を理解し、その段階に合わせたサポートをおこなうことが、グリーフケアの第一歩であるといわれています。
※参考記事:グリーフケアにおける看護師の役割とは?~「命」「死」と向き合う看護師へ~
グリーフケアの最近の動向
1960年代にアメリカで始まったこのグリーフケアは、現在では全世界で広まり、日本国内においても、そのケアの重要性が注目されており、様々な活動がなされています。
アメリカでは「9.11」の事件以来さらにその必要性が注目されることとなり、現在ではその活動はますます活発になり、「予防医学」の一つとしてその地位を確立しているのです。
アメリカなどではグリーフケアに対応する外来が設置され、グリーフケアの一環としての多くのグループ活動を開催、専門のスタッフを配置し、病院からの電話や、手紙、様々なサポートがおこなわれています。
日本国内におけるグリーフケアは重要性が注目されているとはいえ、まだまだこれからの分野であり、認知度も低いです。
国内においてはグリーフケア外来を設置している医療機関も増えてきていますが、十分に認知されていないだけでなく、現状の業務と併せて対応することは難しいといわれています。
様々な分野での活動が認知度を高め、国内においても「グリーフケア」の重要性が公に認められることを期待しています。