梅田先生の今後のご活動について
――では、未来の話として、日本でもっと緩和ケアを進めていくには誰がどのように行動すればいいとお考えでしょうか?
実は私の今のターゲットは、看護教育もだけれども、病気になる前の市民(患者さん)の意識の持ち方です。
というのも、医療者だけで頑張りすぎてたなと思っているところがあるんです。
医療者が緩和ケア病棟で、患者さんたちの「こういうケアを受けたい」などの意見にあまり聞く耳を持たないようにしちゃったところがあって、まだ患者さんたちが考えるチャンスをもらってないような気がします。
施設を利用するようになってからではなく、みんな年をとりみんな病気になるわけなので、要所要所でみんなが考えるきっかけを持てればと思っています。
また、これまでわたしたちは死亡率が下がる時代を生きています。
でも、またここから死亡率が上がる時代を生きていかなきゃいけない時に、死に方をあまり見ないできた人たちが死ななきゃいけない時代に突っ込むという面がある。
ですので、今の時代の人に足りない経験みたいものを、ケアの提供者もケアの受け手もあまりそこは関係なく、自分の死に方を考えられる文化を作っていくことが大事だと思っています。
死に方と言ったら変ですけど、自分を幸せにできることを自分で考えられる機会を作っていきたいなと。
それも、病院の機能というよりは「コミュニティ」として、つまり、「こっちの人は提供する人!」ということではなく、ケアの提供と受け手の境がないような関係性、そういうことが育めるといいと思っています。
こうした、市民向けの発信はこれから頑張りたいなと思っています。
現役看護師へのメッセージ
――最後に、現役の現場で働く看護師さんたちにメッセージをお願いします
「あなたが楽しく仕事することがまず大事」ということを言いたいです。
仕事のときは主役は患者さんだけど、自分が楽しいかどうかということはすごく大事なことだと思います。
何かしてあげるというよりも、まず自分の生き方をしっかりすることが大事ではないでしょうか。
(その点多くの人は)社会との付き合いかたを何か勘違いしているかもしれないですね。
たとえば、「去年頑張ったからここからここの期間に海外に行きたい」とナースが(事前に)言った時に、師長がダメというわけです。
「あなただけ長い期間休みはあげられない」と。
そうした時に、若い人には「辞めて他の病院で働く」ぐらいの勇気を持ってほしいなと思っています。
そう言われて「休みを取れなかったんですー!」となる人は、(他人に)のまれすぎかなとは思いますね。
自分で表現したり自分のやりたいことをやることは全然よくて、それをダメって止めなければならない組織の事情を何とかしないといけないと思います。
――一人許しちゃうと連鎖するって考えがあるのかもしれませんね
そこもアメリカなんかだと、ナースが休むと、働きたい人がいっぱい登録されているから、代行の人が現れるんです。
だから、「私が休むとみんなに迷惑をかける」っていう考えにはならないんです。
休みをみんなが楽しめるような就業関係ですよね。
労働環境も是非(変えていって下さい)。笑
梅田先生の思想に触れて・・・インタビュワー所感
本当に気さくにお話して下さる様子からは、多くの体験を積んでこられた方だからこその温かさが感じられたような気がしました。
ホスピス緩和ケアが世界で普及しはじめた頃から緩和ケアに携わっている梅田先生は、きっと孤独に闘う機会も多かったはず。
それでも現在の緩和ケアの土台を作ってこられたのは、第1回でまさに梅田先生が仰っていたとおり「看護師の仕事への敬意」があるからだと感じました。
「死」に真正面から向かい合いながら「生き生きと働く」梅田先生の看護知識・技術、そして人間的魅力は、これからも多くの人々の心身を救っていくでしょう。
この記事はいかがでしたか? ・週一回なら、まぁ見てもいいかな♪ といった方は是非ご登録をお願いします!!
下記リンクからの無料会員登録で、 メルマガ受け取り@毎週土曜日 診療報酬改定まとめ資料受け取り などが可能になります!! (もちろん、わずらわしい情報は一切お送りしませんよ♪)
|
☆関連お役立ち情報☆ |
・【岩本ゆりさんインタビュー第1回】「死」への怖れから看護師へ。意思決定支援スペシャリストの素顔とは。 |
☆おすすめのまとめ記事☆ |
・【看護師スキルアップ術まとめ20選】3種の看護スキルでQOLを最大化! |
★ここまでで分からない用語はありませんでしたか? そんな方は・・・
関連する記事
【梅田恵先生インタビュー第3回】「日本のナースは世界一」
イギリスに行き「緩和ケアの影」とでもいうべきものを見破ろうとしていた梅田先生。そんな先生は、どのような経験を経てどのように心境が変わったのでしょうか。そして、イギリスとの比較して、日本の看護は先生にどう映るのでしょうか。
【梅田恵先生インタビュー第1回】「ナースはすごい!」
現在大学院講師であり、事業家でもあられる梅田恵先生にインタビューを行いました。インタビューを通して感じたのは、梅田先生の根底にある「『看護師』という仕事への敬意」でした。現役のナース必見の貴重な情報です!
【梅田恵先生インタビュー第2回】 「看護の世界に入ったころは、何の志もなかった」
前回、梅田先生の現在のお仕事やお考えに関するインタビューを掲載しました。今回は、そんな梅田先生がなぜ看護師になったか、なぜ大学院まで進まれたのか、といった「過去」の部分を赤裸々に語って頂きます。
【田村恵子京大教授インタビュー1】ホスピス先駆者のイマ語り ~京大教授と対話とヒトデ~
日本を代表するホスピスナース、京都大学大学院の田村恵子教授のインタビュー記事第1回です。約30年に渡る臨床経験を持ち、がん看護専門看護師の草分けとしてもご活躍された田村先生に、約3時間みっちりとお話を伺えました。まずは、現在のご活動内容からスタートです!!
【田村恵子京大教授インタビュー2】なぜ京大教授に? ~教授公募の裏側、田村恵子と現象学~
田村恵子先生のインタビュー第2回です。今回は、下記のような内容を収録しております。なぜ京大教授に就任されたのか?/なぜ「現象学」にご興味を持たれたのか?/田村先生の人生を変えた、全身が震えたある言葉とは? 実践者であり研究者でもある田村先生の含蓄溢れるお言葉の数々。 是非ご覧下さい!