「あなたが知っている訪問看護師と言えば?」と聞かれたとき、おそらく“必ず”挙がるであろう秋山正子さん。
今回は、なんとその秋山さんにインタビューに応じていただけました。
「在宅」の第一人者の一人である秋山さんに、現在のご活動のことはもちろん、これまでのご活動や今後の展望(過去と未来)について伺いました。
全3回のシリーズ記事でお送りします。
第1回は、秋山さんの「現在」のお話からスタートです!
秋山正子さんプロフィール
株式会社ケアーズ白十字訪問看護ステーション代表取締役、所長
NPO法人maggie’s tokyo 代表理事
1950年(昭和25年) 秋田県秋田市に生まれる
1969年(昭和44年) 秋田県立秋田高等学校 卒業
1973年(昭和48年) 聖路加看護大学 卒業 →1973年(22才)の時、産婦人科の看護師となる
1992年(平成4年)9月 ライフケアシステム 訪問看護師(保健師)
1992年(平成4年)12月 医療法人春峰会白十字訪問看護ステーション 勤務
2001年(平成13年) (有)ケアーズ・白十字訪問看護ステーション 設立 代表取締役所長 就任
2001年(平成13年) 特定非営利活動法人白十字在宅ボランティアの会 理事長 就任
2009年(平成21年)11月 社会貢献支援財団「平成21年度 社会貢献者」受賞
2010年~ マギーズをモデルケースとした活動を展開
2011年~ 暮らしの保健室の立ち上げ〜運営
2014年~ 鈴木美穂氏と共同でマギーズプロジェクトを推進(2016年10月にオープン予定)
秋山さんの現在の業務内容について
――秋山さんは現在どのようなご活動をされていますか? 時間の使い方についてもお聞かせ頂ければと思います。
「暮らしの保健室」の運営が主な活動内容になります。
また、私たちがもともとベースキャンプとしてきた市ヶ谷の「白十字訪問看護ステーション」に加え、「東久留米白十字訪問看護ステーション」「坂町ミモザの家」の統括もしております。
時間の使い方としては、現在一番多くいる場所は「暮らしの保健室」ですが、会議に出ることが多いです。昨日も東京都の会議が2つ重なっていたほか、厚生労働省や新宿区の会議にも出席しました。
また、大学や看護学校に講義に出ることもあります。
このような活動をする中で、日々の活動の時間を捻出しています。
――大学の講義の掛け持ちはされているのでしょうか?
いくつもの大学に行っており、月に10回くらい講演・講義に出ます。
先ほど申しましたように、これに加えて会議があるので、それだけで予定が埋まってしまうという状況ですね。
――秋山さんは非常にご多忙な身ですが、時間をより多く割きたい活動等はありますか?
「暮らしの保健室」にいるときは直接利用者さんの相談に乗らせて頂いているのですが、ただ私も年代が上になりましたので、次世代を育てるという点にはもっと力を割けたらという思いはありますね。
指導者としての秋山さん ~自立した看護師の育て方~
――後進の育成という点ですが、現在どのような指導方法を実践されていますか?
それぞれの人が自立した考えをもつことを目指しています。
もちろん入りたての看護師は先輩看護師のもとにつきますが、それぞれが自立した考えを
持つことができるように指導や工夫をしています。
その点、「在宅は一人で行う必要があるため不安だ」という話をよく聞きますが、逆に言えば自立した看護師を育てる場になっていると思います。
そうゆう意味では、はじめは厳しくて嫌に思う面もあるかもしれませんが、結果として成長をもたらしてくれるのは、在宅の場そのものです。
――やっていくうちに慣れる、そして学んでいくのが望ましいということでしょうか?
学びを得るためのヒントは現場にたくさんあります。
ただ、そこから自分で主体的に学びとることが出来るかということは非常に重要です。
先輩の動き方を「見て習う」というところはあるかもしれませんが、「なぜそうゆう答えが出されているのか」については、人から教えてもらうのではなく、自分で考えることが必要だと思っています。
――もう少し「教育」という点について伺いたいのですが、先輩として後輩を育てるときに、どういったアドバイスをしているのかがすごく気になります。自分で答えを見つけないといけないけれどもなかなかヒントを見つけあぐねている人がいたとして、どういったサポートやアドバイスをされますか?
そもそも、訪問看護の仕事というのは、その方のお宅を訪ねて一対一で看護をすることです。
そのため、具体的な課題解決が必要になります。
看護技術に関しては、使用する器具や手順などを先輩からきちんと教わることが基本になります。
そして教えられた通りにまずはやってみて結果を出し、その後はそれぞれの個別性にあわせて応用できることが重要です。
ただ、訪問看護ではそれに加え、ご本人の様子をうかがい、その日その時の状態に合わせて微調整すること、つまり「判断力」が必要になります。
自分なりにやってみた結果に対してとても不安が大きい場合などに、「チームメンバーにバックアップをお願いすることが出来る環境」を整える。
そして、自分でわからないところについて、「他人に聞きたいことを聞けるフラットな職場環境」を作ることでサポートしています。
そうすると、自分なりに考えた結果として、「ここではこうやったんだけど、うまくいかなかった。どこに問題があるのでしょうか?」と自分で聞ける人が育ちます。
言われたことしかしないのだと全然発展がありません。
職場の中でフラットな環境、土壌ができているからこそ、自立した看護師が育つと考えています。
秋山さんの強さの源泉 ~問いかけはいつも一つ~
――秋山さんのご経歴を拝見しますと、ご自身が率先して動いてきた印象を受けます。それは幼少期からのマインドもあるのでしょうが、看護師時代にそういったフラットな土壌で育ったというご自身の背景があるのですか?あるいは元から持っている感覚なのでしょうか?
そうですね、もちろん教育の場で自分で考えて行動できるように育てられた経験もあるかと思いますが。。。
時代背景としてあるのは、私が教育を受けたときは学生運動がとても盛んだったということです。
教師に反発しながらも、「自分たちはどうしようか」と必死に考えた時代でもあったので、その影響はあるかもしれません。
あと、自分がどうするか・どうしたいかの前に、まずは目の前にいる患者さんがどうなりたいと望んでいるのか、どうなればいいのかを考えるべきだという思いがあります。
その点、当事者の目線で常に考える訓練の場が在宅の場にはたくさんあります。
答えを自分自身で出していかないといけません。
ですので、いろんな人と調和を持ちながら、チームをつくったりネットワークを組んだりするのがとても大事だと思っています。
自分がどう看護するかが常に問われています。
――自分のケアが本当に正しいのかどうかについて考える、ということでしょうか?
そうです。その人にとって本当に必要なことかどうか。
そこにいつも問いがあると思っています。 (第1回:完)
※第2回インタビュー(【暮らしの保健室 秋山正子さんインタビュー第2回】秋山さんの人を巻き込む魅力のルーツ)はこちらから!
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