・「まずは自分たちで使ってみて、理解する」
・「デメリットを探してでもお伝えする」
・「考えて選択したら、即行動」
といった、山上さんのいわば「仕事(人生)哲学」のようなものを紐解いてきました。
最終回である今回は、そんな山上さんの「今後の展望」について伺います。
なお、「病院と在宅の連携」に関するお話は、インタビュワーも鳥肌が立ってしまいました。
是非ご覧くださいませ。
本記事の目次
自分も体感した「気づき」を多くの人に知ってもらいたい
——今後はどのようにご活動されていきたいですか?
色んな方に、福祉用具専門相談員の行う環境づくりの仕事について知っていただける機会を増やしていきたいです。
もちろん、そのきっかけは僕じゃなくていいんですけれども。
実際に、「環境によってダメになってる場合がある」「環境を変えれば状況がよくなる」ということをまだ知らない方が多いということを、現場でもすごく感じています。
自身も、かつてはそういった視点を持っていませんでした。
ヘルパー時代の話ですが、利用者さんをマットレスからずらしてしまい、しりもちをつかせてしまったことがあるんです。
もちろんそれは私の技術不足ということもあったのですが、今だから考えられるのは、「あれは福祉用具が合ってなかったからでもある」ということなんです。
その時の私は、マットレスを変えられることすら知らず、毎回ずれ落ちそうになるのを必死に直していました。
その当時に、「変えられるんだよ」とだれかが助言してくれていれば、利用者さんにとってもヘルパーにとっても「プラス」になったはずです。
ですので、これからは他職種の方、そして特に利用者さんに「知っていただく機会」を増やしていきたいと考えています。
——「知ってもらう機会を増やす」という点に関し、現在は外部(他職種)の方とのかかわり合いは持たれていますか?
ありますね。というより、あるようにしています。
例えば、地域で活動している勉強会だったりとか、コミュニティ作りをやっているところとつながりを持ったりだとか。
逆に、自分から呼びかけて勉強会を開いたりもしています。
——「勉強会」というと、どのようなテーマで行うのでしょうか?
例えば、車いすの調整の仕方について、メーカーの方に来てもらってご説明頂いたりしていますね。
そこには理学療法士さんや、看護師さんが来ています。
看護師さんでいうと、病院の車いすを見慣れていますので、そうした勉強会で普段とは違う視点を身につけられたりされています。
あと、私は新宿区の福祉用具部会の会長をさせて頂いてますので、その会で、協働の取り組みや交流を広げる活動もしています。
——そうした取り組みは、これから主流になっていくような気がします。
そうですね。
それこそ、2年後の法改正もあることから、特に福祉用具はこれから生き残りの時代になります。
なのでこちらから動くという取り組みは、自分としてもどんどんやっていきたいですし、事業としても非常に重要になりますね。
——今後の事業全体についてはどのようにお考えでしょうか。
2年後の話でも、福祉用具の一部が介護保険の対象から削られるという制度的な話があります。しかし、自立支援の視点では、今後もニーズは絶対にあると思っています。
「本当に必要なもの」であれば、自費でもいいから借りたいと思うはずです。
「1割負担の400円なら借りるけど、4000円だと私要らないです。。。」というモノは、本当に必要じゃないから借りられないと思います。
でも、本当に必要で「この手すりがないと段差を超えられないんです、だから4000円になっても借りたいんです」と言われるようなモノを提供できるように、今のうちから体制を作っておくこと、信頼関係を築いておくことが非常に重要だと考えています。*
また、先ほどお話したことにも関連しますが**、会社として、「大きい会社」というよりも「強い会社」を目指しています。
つまり、「そこになくてはならない」会社を目指していまして、「私はK-WORKERさんじゃないと!」と言ってもらえるような会社・事業所にしていきたいと思っています。
* たとえば、「デメリットを探してでもお伝えする」というのは、まさに信頼につながります
→こちら、インタビュ-第1回を参照のこと
** 「自分が高齢者になったときに、こんな事業所があったらいい」というお話のこと
→こちら、インタビュ-第2回を参照のこと
「環境」に着目する私たちは「病院と在宅の橋渡し」を目指したい
——最後に、病院で働く看護師さんや訪問看護師さんへのメッセージをお願いします。
私たちの福祉用具貸与事業は、「環境作り」という面において、「病院と在宅の橋渡し」だと思っています。
病院は、病院で与えられた「環境」で懸命な治療を行います。
ただ、在宅と違うところがいっぱいあるんです。
特に、病院で出来ていたけど、在宅で出来なくなったということは本当に多いです。。
例えば、病院からおうちに帰ってきた際に、おうちの食具を使うと食べられなくなった場合などが挙げられます。
私たちは「環境」を見るプロとして病院に伺って、「ギャッチアップが何度必要なのか」、「現在どういうものを使っているのか?」という点を拝見し、病院で上手くいっていたことを環境の違う在宅でも上手くいくようにするんです。
「病院では上手くいったので、その食具を使ってみましょうか」、「もしかしたら離床出来るかもしれないので、在宅でのベッドとテーブルの配置をこうしましょうか」といった「環境作り」をしていきます。
また、時には「家にはトイレに行くまでにこういう段差があるので、退院までにその練習をやっておいてください」などのご提案をすることもあります。
こうした視点は、看護師さん、理学療法士さんやヘルパーさんたちと共有するようにしています。
もちろん、私たちが環境を整える事が仕事であることを(看護師さんたちが)「知らない」ということは私たちのせいでもありますので、私たちがもっと「環境」の視点をご提供していく必要があると思っています。
その取り組みを通じて「病院と在宅の橋渡し」をすることで、ひいては利用者さんの「プラス」を作っていきたいです。
インタビュワーのコメント
以上が、K-WORKER福祉用具部の山上智史所長のインタビューになります。
第1回、第2回、そして今回を通して印象深いフレーズを再掲すると、下記のようなものが挙げられます。
- ・「まずは自分たちで使ってみて、理解する」
- ・「デメリットを探してでもお伝えする」
- ・「プラスの多い選択を」
- ・「本当に必要なモノを提供したい」
- ・「環境作りの面で、病院と在宅の橋渡しをしていきたい」
上記のインタビュー内容をご覧になってすでにお分かりのこととは思いますが、山上さんは、本当に気さくで、そして謙虚な方で、人間的に魅力溢れる方だという印象を改めて抱いたというのが、インタビュワーの偽らざる本心です。
そして何より、利用者さん第一に考えるその姿勢には、商売(特にサービス業)にかかわるすべての人にとって見習うべき部分があるのではないでしょうか。
また、冒頭でも申した「病院と在宅の連携」についても、非常に参考になるお話が聞けたのではないでしょうか。
現在病院で務められている方にとって、「環境」という視点を持つことは、きっと患者さんのQOL向上につながるはずです。
用具の知見を通じて私たちの「環境」に「プラス」を与えてくれる、山上智史所長ならびにK-WORKER。
ビーナースは、今後も彼らの視点・取り組みに注目していきたいと思います。
さぁ、次に車いすやベッドを目にしたとき、あなたは何を思うでしょうか?
(完)
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