助産師、婦人科の看護師、ホスピス病棟看護師、NPO法人立ち上げを経て、現在は「楽患ナース訪問看護ステーション」および重症児向けのデイケアを行う「楽患チャイルド」の所長、そして医療コーディネーターと、非常に幅広いご活動をされている岩本ゆりさん。
2016年5月には、「MED」というイベントにて「意思決定支援」についてのプレゼンテーションもされるなど、精力的にご活動されている方です。
今回は、そんな岩本さんに、「いま」のご活動、「これまで」どのような想いを持ちながら経験を積まれてきたのか、「これから」はどのようにご活動していくのかといった点を伺うことが出来ました。
本インタビューは、次のようなことを考えるきっかけとなるかもしれません。
- ・自分は何を軸に行動しているのか。すべきなのか。
- ・自分は「死」についてどのように受け止めているのか
そんな実践的かつ哲学的な内容が詰まった本インタビューですが、まずは岩本さんの「いま」のお話から展開していきます!
岩本ゆりさんプロフィール
<年表>
1972年 神奈川県にて生まれる
1995年 東京医科大学病院 産科病棟勤務
1999年 東京大学病院 婦人科病棟勤務
2001年 東京大学病院 特別室・緩和ケア病室勤務
2002年 NPO法人楽患ねっと副理事長就任
2003年 医療コーディネーター開業
2010年 楽患ナース訪問看護ステーション所長就任
2015年 楽患チャイルド所長就任
<ホームページのご紹介>
・医療コーディネーター:http://www.rnurse.jp/
・楽患ナース訪問看護ステーション:http://hn.rnurse.jp/
・楽患チャイルド:http://blog.rakkan.net/cat33/
<ご著書(共著)>
・『患者中心の意思決定支援―納得して決めるためのケア』
・『在宅医療 多職種連携ハンドブック』
「楽患ナース」、「楽患チャイルド」でのご活動について
※岩本さんは、現在足立区にて「楽患ナース訪問看護ステーション」と「楽患チャイルド」の運営をされています。まずは、それらにおけるご活動内容のお話からスタートです。
――訪問看護ステーションの方ではどのような業務をされていますか?
主に管理者としての管理業務を行っており、夜間帯や週末には実質の訪問業務も行っています。
夜間の緊急の当番も受け持っていますので、当然のことながら夜間に呼ばれることがあれば訪問業務を行うことになります。
――立ち上げが2010年とのことですが、順調に進めてこられましたか?
いえ、弊社は株式会社であること、それから、病院との連携など地場があって開いたわけではなかったことから、営業をして一件一件信頼を重ねていくことがスタートでした。
――今も営業活動はなされていますか?
今はそれほど営業をしなくても、これまでの繋がりでお話を頂けるようになってきました。
――楽患チャイルドの立ち上げは2015年9月とのことですが、立ち上げにはどういった経緯があったのですか?
訪問看護を始めた早い時期から小児の訪問をしていたことが、そもそものきっかけです。
開設当時、私自身が助産師の資格を持っていたこともありましたし、また、成人に限らず小児も含めての緩和ケアを中心に訪問看護をやっていきたいという思いがありました。
そうして活動していると、重症心身障害児のケア、それから、NICU(Neonatal Intensive Care Unit:新生児特定集中治療室)から出てきたばかりのお子さんたちのフォローアップをする機会が増えてきました。そういった小児の訪問は、現在は10人以上に行っています。
小さいお子さんは、保育園や幼稚園で子供同士のふれあいを通じて成長していくもの。
しかし、訪問看護を通してお子さんと関わっている中で、病気で気管切開などをしているお子さんはどうしても幼稚園やその他の集まりに行くことが出来ず、行き場がなくなってしまう。そして、お母さんたちは寝る時間もないような状態になる、ということが分かりました。
「子供の養育とご両親のレスパイトという点で何かいい方法はないのか」と思い、自分でも色んな施設を探したのですが、実際には預けるところが全くなくて。
そういうわけで、「無いなら自分で作ろう」と思い立って立ち上げたのが楽患チャイルドです。
写真:楽患チャイルドの施設内
――2016年の診療報酬改定では小児に関する改定もありました(※)が、制度としてまだまだ不足していると思われるところはありますか?
やはり小児はもう少し手厚くする必要があると思います。
たとえば、重症心身のお子さんたちは訪問入浴を利用するにもかなり制限があります。
介護保険だと週2回は利用できるのですが、今の制度では月に1回ないしは2回となっており、かなり制限があります。
(※)2016年度の診療報酬改定(機能強化型訪問看護ステーションの要件見直し)にて、「超重症児等の小児の訪問看護に積極的に取り組む訪問看護ステーション」への評価が見直されました。
なお、ビーナースでも、小児に関する制度的な課題は今後取り上げていければと思います。
医療コーディネーターとしてのご活動について
――もう一点興味深いのが、医療コーディネーターという業態です。そちらはどういったご業務でしょうか。
医療コーディネーターは、患者さんから直接的に雇用される業種になります。
医療は普通は保険を使うのですが、コーディネーターの場合は相談に対する対価が時間によって決まっています。
ですので、「看護師が行う相談業」という形で行っているのがこの業態です。
――どういう方のご相談が多いのですか?
医療コーディネーターを始めた当初は、いわゆる「がん難民」と呼ばれる方のご相談が多かったです。
たとえば、がん末期でどこにも行くところがなくなってしまった方が、病院で「治療できない。あとはホスピスしかない」と言われたけれども諦めきれない場合などです。
当初はそれが8割~9割を占めていました。
しかし、がん対策基本法が出来たこともあって、かなりがんの相談体制が充実してきたので、今は割合としては半分くらいに落ち着いています。
これから治療を受けようと思っている方から「どこの病院にしたらいいか」とのご相談を受けたり、認知症の方、難病の方もいたりと多岐に渡っています。
――ご家族からのご相談が多いイメージですが、そちらはいかがでしょうか?
そうですね。
基本的には、本で紹介されているものやインターネット経由でご相談下さる方が多いので、ネットを使える年代の方、具体的には息子さん娘さんからのご相談が多いですね。
割合にすると、半分くらいはご家族からです。
中には、70代80代の方が自分でネットを見て来ましたという例もありますが。笑
※上述したように、現在は訪問看護、特に小児のケアに勢力的なご活動をされている岩本さん。
なぜ訪問看護ステーションを始められたのかについてお聞きするためにも、「そもそも看護師を目指した理由は何か」というところから伺っていくことに。
岩本さんが看護師を目指したきっかけとは
――看護師になろうと思ったきっかけはどのようなものでしょうか?
小さいころから「人が死ぬ」ということに関心が深かったことがきっかけです。
ですので、自分が仕事をしようと考えたときに、「生死」と遠く離れた職業に就くイメージが湧かなかった。
そこで、「何か生死にかかわる仕事がしたいな」と考えて思い浮かんだものには、まぁ宗教者もそうですし、あとは臨床心理士もありました。ただ、臨床心理士はその時代にはまだ仕事にはならない職業でした。
あとは、医師や看護師が候補としてあったのですが、医師は治すことが仕事で、死にゆく人に関わるには看護師が近いんだろうなというイメージがありました。
私の周りには医療従事者がいませんでしたので、本当にイメージで看護師になろうと思って看護学校に行きました。
※なかなか新鮮なきっかけをお聞き出来たところで、第1回はここまで。
第2回インタビューは、岩本さんの「生死への興味」というところを皮切りに、「これまで」の経験についてどんどんお聞きしていきます!
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