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――それは恐らくさきほどもあったように、各人が有する意義や目的に違いがあるからではないでしょうか?
そうです。
良くも悪くも、ディズニー嫌いな私は浮いていました。
でも、本当にありがたいことに、コンシェルジュの部署立ち上げに携わることができました。
その理由は、「なにが優秀か」という具体像が企業にないからだと思っています。
逆に、看護師にとって誰が優秀な看護師なのかという具体的な像もないわけです。
私は本来それらを作らないといけないと思っています。
そして、最も重要なことですが、ゆくゆくは自分自身で「良い看護師がなんなのか」を定義づけられるようになってほしいと思っています。
ディズニーランドにしても、会社で掲げていることは凄いのですが、「優秀なキャストはどんなキャストか」となると、「笑顔をどれだけ作れるか」「ありがとう・ハピネスをどれだけ届けたか」というやや曖昧な回答になってしまうんです。
それも、一つの軸だけで良いか悪いかを考えているから、分からなくなるのではないかと思っています。
たとえばさっきの話で言えば、訪問看護ステーションに「黒人さん」のような方がいるとする。
成果で見れば確かにかんばしくないかもしれません。
しかし、その人がいるおかげでステーションがせかせかしないで済んでいたりするかもしれない。
承認欲求が1番強いのは、一般層であり、そして人間すべて少なからず持っていると思っていますので、評価してあげるポイントをしっかり見定められれば、人ってそんなに腐ったりしないのではないでしょうか。
評価を可視化し、伝わるようにするための体制こそを整えるべきであると思っています。
――なるほど。個人的にはどちらかといえば経営層のほうが頑固なイメージがあります。数字だけを見るだとか。そういうケースはあったりしますか?
頑固というよりも、葛藤が強いのではないかと思います。
というのも、未来をみんなに見せていくのがリーダーであり、経営者の仕事です。
その点、未来に根拠なんてありません。
ですので、「毎月10人採用が必要」と言っても、明確な根拠なんてないんです。
つまり、根拠のないものを人に伝えることになるのですが、そういうときはそれなりに腹を決めないと出しちゃいけないし、曲げられないものです。
そこの葛藤と言いますか、「心を鬼にしなきゃいけない」と思っているだけの人の方が圧倒的に多いのではないかと思っています。
心の底からぶっ飛んでる人も中にはいますが。(笑)
看護師の相談に思う、「自分の人生、本にしてみたら?」
――現状、村田さんはどのような時間の使い方をされていますか?
それはもう気分ですね。(笑)
その日の自分の体調や精神面のバランスによって、できる課題のレベルが変わってきますし、優先順位でいつも1番高く置いているのは勉強です。
勉強する為の手段が本であったり、講演やセミナーへの参加や開催です。
あとは、話をきいてもらったり相談させてもらったり。
優先順位の軸としては、自分の時間、妻との時間、家族との時間、最後に仕事の順です。
――それでいうと「人生」思考なのですね。
そうです。
だから、「看護師さん」の良しあしを考えるのも、人生軸で捉える必要があると思っています。
個人的に、看護師さんから相談を受けることがよくあります。
たとえば、「患者さんへのケアに関して、自分はこれがベストだと思ったのに、ドクターが許可しないためボツになってしまったのでつらい」というもの。
そういう時、私は励ましたり同情したりするのは違うように思いますので、「自分の人生を本に書いてみたらどう?」ということを伝えます。
「つらい経験をした先に、自分が何を得たか、何を学んだか、どう生かしたかということが本に書いてあったらすごく良くない?」「その本を自分の息子や娘が困った時に渡してあげられる親だったらカッコ良くない?」と。
「いい看護師」かどうかではなく、本当にいい母ちゃんや父ちゃんになる為であったり、自分の人生の本が出た時に読んでいて楽しいだとか、そういったことの方が重要じゃないか。
私はこのように思っています。
その点、「看護師として」というのは、「人生」においてあまりにピンポイントすぎます。
看護師は人生を豊かにする手段の一部でしかありません。
まず、自分の目的に気づき、自分軸で物事を考えることが大事なのではないでしょうか。
――その通りだと思います。さすが、ストリーテーリングを営む会社の代表。中でも、自分の人生について書かれた本が売ってあったら読むかどうかというのは、非常に分かりやすいです。
「今の仕事がなんとなく嫌で、会社を辞めました」
それで、自分の本を買うか?と。
買わないですよね。(笑)
――それは映画でも良いですね。
起承転結は必ず人生のどんなシーンにも関係するものです。
そのストーリーを自分がどう受け取るか、どうありたいのか。
考え方としては「being」か「doing」がありますが、常に「being」で考え続けていけるような自分を持つことが出来れば、看護師として「いい看護師」になるのではないかと思います。
- 血管見つけるのが得意です。
- 点滴のプロです。
- 私はオペ室では誰にも負けません。
全部「いい看護師」かもしれません。
しかし結局、患者さんにとってはもちろん、患者さんを通じて自分が看護師やっててよかったなと思えるかどうかであったり、そこに「主義」が生まれるのかという点こそが非常に重要ではないかと思っています。
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