訪問看護ステーションが利用者獲得のためにすべきこと
――さて、ステーション運営に話が戻りますが、特に在宅に関わる読者の方などは「なんでそんなにお客さんがとれるの?!」という点に関心があるかと思います。サービスの質の高さ、自分達の強みが明確であることはもちろんかと思いますが、他にもヒントがあれば是非教えていただきたいです。
前提として、弊社には基本的に医療保険の依頼と介護保険の依頼があります。
医療保険は病院や市役所から、介護保険はケアマネジャーさんから依頼がきます。
そして、「1:4」ぐらいの比率で介護のほうが多いため、介護でどうやって依頼をいただくかを考えなければなりません。
そこで私が最初に行ったのは、ケアマネさんが何の仕事をしているのか改めて確認するということでした。
すると、ケアマネさんも人と人とのつながりに関わる仕事なので、「やりづらい部分」がたくさんあることが分かりました。
そこをくみ取って、ケアマネさんごとの得意不得意を見極め、苦手なところを補佐する。
それによってケアマネさんから見て頼みやすい相手になることができれば、依頼を頂きやすくなるかなと。ここは非常に大事にしています。
同じように、往診の先生に対しても、報告を丁寧に行う、指示受け後にはすぐに動くなど、フットワークを軽くして、求められていることにしっかり応える部分は徹底して行っています。
――素晴らしい考え方ですね。どの領域にも当てはまるお話かと思います。
あとは、最初に任せていただけた時に120パーセントの全力投球ができるかということ、それから、自分達の成果をしっかり見せるということは欠かせないことだと思います。
たとえば、初回の訪問に行った日にすぐ報告を行い、「今後はこういう感じで動いていこうと思っていますが、どう思われますか?」といったものです。
ちなみに、少し話はそれますが、ケアマネさんとの関係作りにおいて、看護が上に立とうとするケースは多く見られるそうなので、そこは気になるところです。
あくまで介護保険のリーダーはケアマネさんですので、そのフラットな関係性は凄く大事にすべきだと思います。少なくとも依頼を受ける時点では、私たちよりもケアマネさんの方が利用者さんとの付き合いは長い場合がほとんどですので。
――うまくいっていないステーションは、意外とそこが1番できてないかもしれませんね。
そうかもしれません。
他にも、ライバル会社の評価をしっかりと把握することなど、出来ることややるべきことはたくさんあると思っています。
――お話をお聞きしていて、すごく面白そうだと思えます!
私自身が、わりとそういうことが好きなタイプなんです。(笑)
立ち上げを散々やらせて頂いたのですが、どうやら私は「0→1」が好きで、どちらかというと安定すると飽きっぽくなってしまうタチのようでして。
ですので、今を安定させて早く次へ次へと展開していきたいです。
えいる訪問看護ステーションの今後
――それでは、今後はステーションをいくつか持ちたいなどお思いなのでしょうか?
この小金井市のステーションを拠点に、今年中に1~2店舗をサテライトとして周りの市にも増やしていきたいと思っています。
また、小金井市の訪問看護の底上げに貢献したいです。
たとえば、23区では毎月されている訪問看護の集まりは、小金井市では年に数回しかありません。加えて、小金井市は他の市に訪看を依頼するケースが少なくありません。
ですので、連携を深める動きや、市で訪問看護を充足するための底上げを頑張りたいと思っています。
さらには、私自身が認定看護師を取得し、マネジメントの勉強を進めていくことも今後取り組みたいことの一つです。
――野望がたくさんですね!
できる範囲からではありますが、先ほどお話したことを実践していくことで、訪問看護の普及に力を尽くしたいと考えています。
在宅はマイナーな業界と言われていますが、私個人的には看護師全体の10パーセントぐらいまでは訪問看護師が増える、増やしたいと思っています。
時代的には勝手に増えていくと思いますが、もっと早くに種付けがしたいので、自分からどんどん発信していきたいと思っています。
そのためのネタ集めも進めていかなければなりません。
――それでまた色んな活動を行っていくというサイクルになるわけですね。
そうです。
現状でもたとえば、知り合いから依頼された看護学生向けの講義を行う予定がありますし、看護師さんに在宅の良さを伝えつつ、看護師さんが楽しいことを伝えるコミュニティ(※)を作りながら、さらには看護師の質向上やメンタルケアをできる場所作りも行っています。
※佐藤さんが参画されている【オフリラ】というコミュニティは、「看護師の心と活動を支援し、笑顔をつなげる場を提供し、ナースライフの向上に貢献する」ことを目的に立ち上げられたそうです。ご興味がある方は、是非Facebookページなどで、メッセージを送ってみてはいかがでしょうか?
▶ 次ページへ:佐藤友紀から、未来の訪問看護師へのメッセージ!
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