病床機能分化とはなにか? 医療提供体制の変化を簡単におさらい♪

 

2013年12月、少子高齢化の進行ならびに社会保障費の増加に対応するため、『社会保障と税の一体改革』がスタートしました。

その「改革」の一環として、「医療提供体制の改革」が存在し、そこに紐づく形で「病床機能報告制度」が設けられました。

病院の今後や「在宅シフト」と呼ばれる動きを予想・予測するためには、この病床機能に対する理解は欠かせません。

そこで今回、病床機能や医療提供体制について、改めて簡潔にご説明したいと思います!

 

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病床機能、医療提供体制

画像出典:haklak.com

 

医療提供体制の改革とは

 

「医療提供体制の改革」の基本的な考え方

 

平成23年12月22日の社会保障審議会医療部会では、「医療提供体制の改革に関する意見」として次のような事柄が述べられています。

 

  • ・我が国の医療提供体制は、50 年前に国民皆保険制度を実現して以来、全国民に必要な医療サー ビスを保障していくため医療提供体制の一層の充実が図られた
  • ・その結果、世界最長の平均寿命を達成するなど、高い保健医療水準を実現してきた。
  • ・一方、急速な少子高齢化の進展、人口・世帯構造や疾病 構造の変化、医療技術の高度化、国民の医療に対するニーズの変化など、医療を取り巻く環境は大きく変化している。
  • ・しかしなが ら、我が国の医療提供体制は、機能の分化が十分とは言えず、ま た、必要な医療サービスが不足している面があるなど、こうした変化に十分に対応できていない。
  • ・さらに、国際的に見て人口当たりの病床数が多い一方で、人口 当たりの医師数は少ないなど医療を担う人材の不足や、医師の地 域・診療科偏在などが課題とされ、また、救急患者の受入れの問題、地域医療の困窮など様々な課題に直面している。
  • ・限りある医療資源の中で、世界に冠たる我が国の医療制度を将 来にわたって維持・発展させていくには、よ り効率的で質の高い医療提供体制の構築を目指していく必要があ る。
  • ・「社会保障・税一体改革成案」においても、医療・介護の分野について、病院・病床機能の分化・ 強化と連携地域間・診療科間の偏在の是正在宅医療の充実等 といった改革項目が示された。
  • ・このような状況の中で、国民が安心で良質な医療を受けること ができるよう、①医師等の確保・偏在是正、②病院・病床の機能 の明確化・強化、③在宅医療・連携の推進、④医療従事者間の役割分担とチーム医療の推進といった視点から、医療提供体制の機能強化に向けた改革に積極的に取り組んでいくべきである。

 

すなわち、後述する病床機能の分化(明確化)とは、医療提供体制の改革の「手段」という位置づけになります。

 

地域医療構想について

 

では、医療提供体制の改革はどのように具体化されるのでしょうか

病床機能の分化の話の前に、地域医療構想について簡単にご説明しておきます。

 

地域医療構想とは、「医療介護総合確保推進法」により、平成27年4月より、都道府県が「地域医療構想」を策定するもので、「2025年に向け、病床の機能分化・連携を進めるために、医療機能ごとに2025年の医療需要と病床の必要量を推計し、定めるもの」になります。

つまり、まずは医療機能を自主的に選択した上で、都道府県が地域の特性に合わせた対策を打つための構想であり、これによって病床の機能分化が具体化されていくことになります。

具体的には、下図の通りです。

 

地域医療構想について

画像出典:全国厚生労働関係部局長会議資料(平成28年1月19日)

 

※参考資料:地域医療構想策定ガイドライン

 

 

病床機能分化とは

 

病床機能分化

 

病床機能分化は、「どの地域の患者も、その状態像に即した適切な医療を適切な場所で受けられることを目指すもの」であり、「『病院完結型』の医療から、地域全体で治し、支える『地域完結型』の医療への転換の一環」と言われています。

 

この点、上記の社会保障審議会医療部会の資料にも、「病床区分のあり方」との表題にて、同様の趣旨が述べられています。

 

  • 患者の疾患の状態に応じ良質かつ適切な医療が効率的に行われるよう、一般病床について機能分化を進め、急性期医療への人的資源の集中化を図るなど、病床の機能分化・強化を図り、もって医療機関が自ら担う機能を選択し、その機能を国民・患者に明ら かにしていく必要がある。
  • ・病床区分のあり方を検討するに当たっては、地域の実情を踏ま え地域に必要な医療機能とは何かという観点からも検討する必要がある。
  • 急性期や亜急性期等の医療から在宅医療についても機能分化・ 強化を図っていくとともに、国民・患者にとって分かりやすいものとしていく必要がある。

 

下図は、この病床機能分化の具体的な内容が一目で理解できるものですので、ご参考になさってみてください♪

 

 

2025年のあるべき病床数の推計結果について

 

画像出典:全国厚生労働関係部局長会議資料(平成28年1月19日)

 

病床機能報告制度

 

上述の通り、病院は自院でどの病床機能を有するかを選択し、都道府県に対して報告する必要があります

その際に必要なのが、病床機能報告制度になります。

この制度については、日医工医業経営研究所の資料が非常に分かり易いため、以下にご紹介しておきます。

また、それに続けて、4つの病床機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)について簡潔に示した図もご紹介します。

 

 

病床機能報告制度とは

画像出典:nichiiko.co.jp

 

 

病床機能報告制度

画像出典:全国厚生労働関係部局長会議資料(平成28年1月19日)

 

病床機能分化に関する2016年度診療報酬改定項目

 

ビーナースでは、診療報酬改定項目を個別に記事にて扱っています。

以下、関係の強い改定項目の記事リンクを貼付しますので、是非ご参考になさってください。

 

7対1入院基本料等の施設基準の見直し

重症患者を受け入れている10 対1病棟に対する評価の充実

病棟群単位による届出

地域包括ケア病棟入院料の見直し

療養病棟の在宅復帰機能強化加算の見直し

 

病床機能分化がなぜ必要か

 

上述した内容と一部重なりますが、最期に改めて病床機能分化が必要な理由についてまとめておきます。

 

1.高齢化に伴う疾病構造の変化高齢化に伴い、「治らない病気」が増加しており、「患者が病気と共存しながら生活の質を上げる医療」 が求められています。

2.医療提供システムがニーズの変化に対応できていない上述した「治らない病気」という「需要」に対して、「治らない病気へのケア」という「供給」のギャップが存在している。

3.医療現場は人員不足で、働き手の過労が常態化:例えば急性期病床に慢性期の患者がいるなど、日本は病床は多いにも関わらず機能分担が不明確で非効率な側面がある。

 

2025年を目前にして、「機能分化」による医療提供体制の改革が必要な理由、お分かりいただけましたでしょうか。

 

病床機能分化 まとめ

 

今回、医療提供体制の改革の中でも、「病床機能分化」についてご説明しました。

しかし、注意点が一つあります。

 

「機能分化」だけでは患者は「移動」が多くなり、大きな負担に(なる)。

医療機関同士の連携、医療・介護の連携、多職種連携が欠かせない

 

機能分化と連携編 -データを共有し、熟議を行う-』という文書からの抜粋ですが、これによれば、病床機能分化”のみ”を達成すればよいのではなく、「連携」が必要不可欠だということです。

どんな事柄もそうですが、調べれば調べるほど、何かを達成するのは簡単ではないことが分かります。。。

 

それだけで独立しているものなんて無くて、全ては繋がっています。

皆さまの一つ一つの行動が、明日の医療を作っていることこそが、一番伝えたかったことなのかもしれません。

 

 

※参考文献

社会保障審議会医療部会「医療提供体制の改革に関する意見」(2011年12月22日)

浜田淳(岡山大学教授)、石川雅俊(国際医療福祉大学准教授)『RH‐PAC地域医療ビジョン・地域医療計画ガイドライン 機能分化と連携編 -データを共有し、熟議を行う-』(2014年10月12日)

医政局『全国厚生労働関係部局長会議資料 (厚生分科会)』(2016年1月19日)

厚生労働省『病床機能報告』

 

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