【梅田恵先生インタビュー第2回】 「看護の世界に入ったころは、何の志もなかった」

 

前回、梅田先生の現在のお仕事やお考えに関するインタビューを掲載しました。

今回は、そんな梅田先生がなぜ看護師になったかなぜ大学院まで進まれたのか、といった「過去」の部分を赤裸々に語って頂きます。

 

本記事の目次

梅田恵先生の過去の体験 ~看護師を目指したワケ~

 

梅田恵、看護師

 

――もともと看護の短期大学に入られたのはなぜでしょうか?

 

受かりやすかったからです。

だから、京都にいたころは何の志もなかった気がします。

 

――淀川キリスト教病院に入られたのは?

 

それも一緒なんです(※特に深い理由が無いという意味で)。

今だったら特に、面接するときなんて色んな情報収集するじゃないですか。

ほんと偉いなと思うんですけど、私はしてなかったから、(面接のときに)たまたまそこにあった本を見て「この先生に憧れて来ました」ということを言って、淀川キリスト教病院に入りました。それぐらいの動機なんです。

 

――では、お母様が看護師ということは関係ありますか?

 

逆に、「あんな、仕事をしながら子育てするような人になりたくない」ということを思っていました。

良妻賢母を目指したいと思っていたと思います。

今は母の志を継いだ観にはなっているんですけどね。

 

――お母様はどのような方なんですか?

 

もう、あの世代を象徴するようなナースだと思います。

今も、72歳なんですけど、バリバリでやってます。

介護支援事業を2か所でやっています。

(看護師というよりも)事業者ですよね。

 

――かなりエネルギッシュですね。そうした意味では、梅田先生もご自身で会社を起こされています。看護師としてか、事業家としてか、どちらが(自分の中で)大きいと思いますか?

 

どっちなんでしょうね・・・。
でも、2000年に認定をもらって、その時に自分は「実践者で居続けたい」とか、「実践で見えてないものを可視化して他人と共有する」というのが大学院に進んだ時の志なので、アカデミアが自分の中では大きいと思ってるんですけど、最近母が病気になったりして(母の)事業を手伝ったりしていると、事業家なのかもしれないなと思うこともあります。

 

画像出典:realsuccess.net

 

梅田恵先生の過去の体験 ~大学院進学について~

 

――現在、梅田先生は博士号まで取得なさっていますが、なぜ大学院に進まれたのでしょうか?

 

このわかりにくい看護を可視化したいという思いと、専門看護師コースの教員になりたかっただけなんです。

 

――そうなんですか! それは、もともと(看護師になる前から)そう思っていたんですか?

 

本当に愚かなんだけど、2000年に専門看護師になるために、大学院を修了するときは、「二度と大学院に入るか」と思っていたのを、大学院博士後期課程に入って思い出したんです(笑)。

つらいんですよ(大学院は)。自分のやっていたことを思い出すとか。

看護師って覚えるべきことがしっかりあるわけじゃなくて、他の学問からいっぱい、ものの考え方とかものの分析の仕方っていうのを、社会学、統計学、医学などの知識からもらってきて、その中で看護を表現するところがあるので、実はまだ看護をどう表現するかって形が出来ていなかったりするんです。

「看護の理論」っていうといっぱいあるんだけれども、どれもなんかこう、「この場面にはこれはいいけどこれは(当てはまらない)」といったように看護全体を包括出来るような理論って実はまだちゃんとなかったり、世間の人には看護師が何をやっているかっていうのはほぼ伝わってないっていうのが現状なので、結構大学で研究するっていうのは苦しいんです。

伝えきれないとか、サイエンスの部分とナラティブな部分をどう融合させるかっていうところで四苦八苦している学問なので、苦しい。

投げ出したいって思うことは常時あるけど、大学院にお金払っちゃったら出なきゃいけないから、「はぁ、、、そういえば後悔してたな私」って思いながら過ごしていました。

 

まぁ、なぜ入ったかというと、大学院の教育が博士じゃないと担当させてもらえないからです。

いっぱい(授業を)担当はするんだけれども、講座の責任を持つだとか評価まで自分がやるってなると、やっぱり博士修了者であることが重要になります。

エキスパートな実践を実習で行うような授業を大学院で作りたかったので、博士課程まで進むことにしました。

あとは起業したっていうことから、もっとうまく(言葉で)表現したいっていうのがあって、趣味のように進んだけど、つらかったです博士課程は。。。

 

――少しずれてしまうかもしれませんが、「ナラティブな部分」に関しまして、かなり現場の看護師の方とお話する機会があったと思うのですが、看護師さんたちの問題意識というのはどのようなものだったのでしょうか?

 

私の研究テーマは「看護のコンサルテーション」なんです。

「コンサルテーション」についていろんな方からヒアリングをしたり、フォーカスグループやアンケートをさせていただきました。

そこでの大きな気づきとしては、コンサルテーションに対する認識は、「あぁ、みんなバラバラだな」ということでした。

 

自分がコンサルテーションの専門家だと思って2000年からずっと緩和ケアチームでコンサルやってきたけど、こんなに「コンサルテーション」って、使う人とか立場によって違うこと考えてたんだなっていうのには結構びっくりしましたね。

みんな思うままに(コンサルテーションを定義していて)、そういう用語が看護界はすっごい多いんですよ。

横文字好きだったり。

そういった形で、アメリカから借りてきたもので勝負をしているところがあるので、それを改めて大学院に行って認識した感じです。

ただ、ちゃんと「コンサルテーション」という用語が使える現場にすることで、「心(頭)の整理をしていく」とかそうした点が分かると、コンサルテーションを受ける側と提供する側の軋轢が減るんじゃないかとかは考えていました。

小さなことのようですが、「コンサルテーションってみんなが思ってることは違うよ」ということを自分が調査することで堂々と言っていくことが出来ますし、事実を追求するという点で(大学院に行って)よかったなと思います。

たったそのことを考えるのに、消耗したエネルギーは多大でしたが…(笑)。

 

画像出典:slate.com

 

梅田恵先生の過去の体験 ~イギリス留学について~

 

――(「アメリカから借りてきたもの」との発言を受けて)その点、キャリアの中で目を引いたのがイギリスに留学していらしたというところなのですが、どういった経緯でしょうか?

 

(その前は)短大を卒業し、実際にナースとして働いていました。

その中でホスピス病棟を経験することができました。

そこでかなり看護への好奇心が高まり、編入学へ進みました。

 

大学を卒業しているナースはほぼ臨床では見かけない、そんな時代だったのですが、聖路加大学に編入学時代はほんとに看護が面白いなって思って、人生の中で一番勉強したと思います。

テレビが無かったのもあって。笑

それこそ大阪から東京に出てきて、貧乏でテレビのない生活。

だから趣味は「聖路加の図書館にいること」みたいな。

たった2年間だったんですけど、勉強していました。

実は、勉強したいと初めて思ったんですよ。短大のときには真剣に勉強したことはないんですけど(笑)。

 

そうやって2年間聖路加で勉強して、だけど緩和のことはあまり勉強できなかったり、ちょうどホスピスケアが日本入ってきたころが私が大学にいた頃だったんです。

ただ、勉強しにきたんだけど、たった一年しかホスピスを経験していない私にみんながいろいろ聞くんですよね

「そんなすごいことかな」と思ったり、「ほんとはイギリスだってひどい目に遭う人がいるんじゃないか」とか結構懐疑的に思ったりで、イギリスを一回見に行きたいと思ったんです。(※)

あと、留学先を紹介して下さる方がいたり、ちょうどイギリスの研修から帰ってきた先生が話をつけて下さったり、それこそ親が貯めていた嫁入りの資金を全部頂いて、イギリスに渡りました。

 

(※)梅田先生が留学されたきっかけには、「『マクミラン・ナース』のようになりたい」という想いもあったようです。
「マクミラン・ナース」については、今回のインタビューを踏まえて別稿で取り上げたいと思います。

 

――では、既にその時には緩和ケアの魅力を感じてはいましたか?

 

本当逆で、全然違うかもしれない。

見破ってやる」くらいのチャレンジングな想いは持ってたと思います。

 

インタビュワーのコメント

 

意外や意外、梅田先生はもともと看護師を目指されていなかったそう。
その後、大学に進み「看護」の魅力に虜になっていた梅田先生ですが、緩和ケアに関しては懐疑的な視点をもっていました。

では、イギリスに行き、「緩和ケアの影」とでもいうべきものを見破ろうとしていた梅田先生は、どのような経験を経て、どのように心境が変わったのでしょうか?
次回の第3回は、イギリス留学・研修に関するお話をご紹介いたしますので、乞うご期待です!

 

 

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