看護師が起業してみて
――創業されたのは2009年・・・?
そうです。
結局そこでも、私のように「困っているけどキーワードを知らない人」に対し、病院に来るよりももっと早い段階でアプローチしたいという想いがあったため、ビジネスモデルとしては生命保険・がん保険を使うことを軸に、何でもいいから相談を受けられる場所を作るために動き始めました。
それによって、質の高い看護師さんが“ご飯を食べられる”ようになったら何か変わるんじゃないかと思っていましたし、保険に入って備えをしてきた人たちに、看護のサービスを受けてもらえるようにできるんじゃないかとも思っていました。
そこで、保険会社のコールセンター業務を2014年にスタートしました。
それが私の理想的な事業モデルだったんです。
ただ、今はそれが頓挫してしまいました。
がん保険の保険商品は売れない限りはコールセンターのサービスが良かろうと悪かろうと何も評価されません。ビジネスの世界というのは、ボトルネックをつかんでいないと下請けになるのですごく難しいです。
――サービスの趣旨としてはどんなものだったのでしょうか?
「困っていることにワンストップで全部手配してくれる」というものでした。
たとえば自動車保険には自賠責保険・任意保険の大きく2種がありますが、民間の保険と公的な保険が2つセットで1つの話になってて、実質的に機能するのは民間の保険の方ですよね。
「交通事故で人をひいてしまった場合、自賠責保険だと300万しか出ないけど、民間の保険だと1億円2億円まで保証します」
そう言ってくれると、やはり安心します。
また、何かあった際にコールセンターに電話をすれば、かなり詳細な指示出しまでしてくれます。
これってすごい安心感なのですが、「がん」になった人たちも同じです。
がん保険のコールセンターに電話して、それを専門性の高い看護師が受け答えしたらすごく安心感が大きいんじゃないかと思っていて。
電話をした時点で、困っている事とキーワードの整理ができたり、意思決定や解決方法を模索できたり。
そういうことができればいいなと思って動いてきて、保険会社と3年かけて商品開発を行った上で契約にたどり着きサービスフローや基本的な体制などは出来上がりはしましたが、保険会社内部の理解や取引先の思惑があったことなどもありなかなかうまくいきませんでした。
――「がんと暮らしを考える会」とかなり近いという印象を受けました。
そういうふうに言ってくれる方って実は少なくて、ほとんどの人は「何でもやってるよね」って感じで怪しまれます。笑
ただ、その人たちがどう見ようと「がん患者の困りごとに手を打つ」という目的は同じなので、関係ないと思えるようにはなりましたね。
ちなみに、私は20代後半までは「かっこよく働きたい」と思っていましたが、かっこよさよりもがむしゃらさに向かうようになると、自分にとっての「ロールモデル」というものが自然といなくなっていました。
「本当にやらなきゃいけないこと」が見えてくるとロールモデルよりももっと先に目が向き始めます。
「自分に目線が向いている」時期には見えなかった景色があります。
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