【訪問看護に係る診療報酬改定2016】在宅自己注射指導管理料の見直し(用語説明付)

 

平成28年度(2016年)の診療報酬改定では、在宅医療・訪問看護・(ホスピス)緩和ケア・看取りに関する制度改定が多数行われました。これは、「在宅」領域が医療・看護・介護業界に関わる方々に大きな影響を与えることを意味します。

しかし、web上のサイトでは、政府資料のペーストがされているのみで、情報が整理されているとは言い難いのが実情。
そこで、ビーナースが他サイトに先駆け、「在宅」にかかわる診療報酬改定項目を順次見やすい形に整理して参ります。

 

今回は、中でも「訪問看護」に関わる改定項目(「在宅自己注射指導管理料の見直し」)を、用語解説を含めてご説明します。

 ※公式資料はこちら(本記事に関連するのはp124-127)

 

診療報酬改定、訪問看護

画像出典:biotechin.asia

 

「在宅自己注射指導管理料」とは?*

 

まず、「在宅自己注射指導管理料」についてご説明します。

 

近年、患者のQOLの向上や医療費の適正化などを目的として在宅医療が推進されるようになってきた中で、「在宅療養(在宅医療)」が認められている指導管理料のうち、注射薬がかかわるものに対して付加される診療報酬のことです。

 

法文的な定義としては、

別に厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている入院中の患者(いわゆる外来の患者)に対して算定するもの

になります。

 

なお、在宅自己注射指導管理料を含む「在宅療養指導管理料」を算定する場合は、当該指導管理に要するアルコール等の消毒薬、衛生材料(脱脂綿、ガーゼ、絆創膏)、酸素、注射器、注射針、翼状針、カテーテル、膀胱洗浄用注射器、クレメン等は、指導管理料を算定する保険医療機関が提供することとなっています。

また、医療材料の費用は、特に規定する場合を除き所定点数に含まれ、別に算定できません。

 

* 本章は、医療事務サイトを多分に参考・引用しました

 

・在宅自己注射指導管理料の対象注射薬 一覧

 

やや古い資料になりますが、『よくわかる処方せんの基本と読み方』(柳川忠二監修、2010年発行)という書籍の66ページに「対象注射薬の一覧」が載っておりますので、そちらを引用する形でまとめておきます。

 

薬剤 主な製品(ブランド)名
インスリン製剤 アビドラ、イノレット、ノボラビッド、ノボリン
ヒューマリン、ヒューマログ、ペンフィル、ランタス、
レベミル
性腺刺激ホルモン製剤 ゴナトロピン、ゴナールエフ
ヒト成長ホルモン剤 グロウジェクト、サイゼン、ジェノロトロピン、
セロスティム、ノルディトロピン、ヒューマトロープ
遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤 ノボセブン
遺伝子組換え型血液凝固第Ⅶ因子製剤 アドベイト、コージネイト
遺伝子組換え型血液凝固第Ⅸ因子製剤 ベネフィクスM
乾燥人血液凝固第Ⅶ因子製剤 クロスエイト、コンファクトF
乾燥人血液凝固第Ⅸ因子製剤 クリスマシンM、ノバクトM
顆粒球コロニー形成刺激因子製剤 グラン、ノイアップ、ノイトロジン
性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤 ヒポクライン
ソマトスタチンアナログ サンドスタチン
ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体 フォリスチム
グルカゴン製剤 グルカゴン、グルカゴンGノボ
ヒトソマトメジンC製剤 ソマゾン
インターフェロンアルファ製剤 イントロンA、オーアイエフ、スミフェロン
インターフェロンベータ製剤 アボネックス、ベタフェロン
エタネルセプト製剤 エンブレル
ペグビソマント製剤 ソマバート
スマトリプタン製剤 イミグラン
グリチルリチン酸モノアンモニウム・
グリシン・L・システイン塩酸塩配合剤
強力ネオミノファーゲンシー
アダリムマブ製剤 ヒュミラ

 

 

「在宅自己注射指導管理料の見直し」の概要

 

では、「在宅自己注射指導管理料」の定義を確認したところで、改定項目の内容に触れていきましょう。

 

・本改定の趣旨

 

「質の高い在宅医療・訪問看護の確保すること」

 

・本改定の基本的な考え方

 

疾患の医学管理に関する評価を踏まえて、現行の注射指導回数に応じた評価の差を縮小する。また、導入初期の指導と難病患者への指導管理を重点的に評価する。

 

・改定項目概要

 

1. 在宅自己注射指導管理料の指導内容を明確化した上で、頻度に応じた点数を設定するとともに、難病患者への指導管理を行った場合を重点的に評価する。 

2. 2以上の保険医療機関において、同一の患者について異なる疾患の在宅自己注射指導管理を行っている場合に、それぞれ当該指導管理料を算定できることとする。

 

 

「在宅自己注射指導管理料の見直し」の具体的内容

 

・「在宅自己注射始動管理料」の明確化に関する具体的内容

 

まず、「1」の「在宅自己注射指導管理料の指導内容を明確化」および「頻度に応じた点数の設定」、「難病患者への指導管理を行った場合の重点的評価」についてです。

当該改定は、自己注射の”回数”による区分を単純化した点併算定が可能になった点の二点が大きな特色です。

具体的に現行法制と改訂案の比較したものが、下の表になります。

※下図は、公式文書から引用

 

現行 改訂案
【在宅自己注射指導管理料】

1. 複雑な場合 1,230点
2. 1以外の場合
イ 月3回以下 100点
ロ 月4回以上 190点
ハ 月8回以上 290点
ニ 月28回以上 810点

 

 

注2 導入初期加算 500点

【在宅自己注射指導管理料】

1. 複雑な場合 1,230点
2. 1以外の場合
イ 月27回以下 650点
ロ 月28回以上 750点
(削除)
(削除)

注: 「2」については、難病外来指導管理料との
 併算定を可能とする。

注2 導入初期加算 580点

 

・「指導管理料算定」の方法に関する改定の具体的内容

 

こちらについては、上記概要にある、「2以上の保険医療機関において、同一の患者について異なる疾患の在宅自己注射指導管理を行っている場合に、それぞれ当該指導管理料を算定できることとする。」という文言のとおりで、

指導管理の理由が異なれば、患者が同一だからといって、2以上の機関に対する報酬算定は妨げられない

ということを意味しています。

 

まとめ

 

以上が、「訪問看護」に関わる改定項目(「在宅医療における看取り実績に関する評価の充実」)の整理になります。

まだまだ改定から間もないため、独自の解釈は控えております。

今後、業務等で改定にかかわる疑問が出てきたときには、ビーナースでざっと把握していただければ幸いです。

 

 

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