亡くなられた患者さんに対しておこなう「エンゼルケア」。
看護師さんなら一度は行ったことがある方が多いですが、
その目的をしっかりと理解して、皆さんは実施できていますか?
今回は「エンゼルケア」にはどんな目的があるのか、海外との比較、ポイントなどを含めてご説明させていただきます。
目的を理解することで、よりいっそう患者さんに寄り添ったケアができるようになりますよ。
画像出典:telegraph.co.uk
エンゼルケアの歴史
エンゼルケアのはじまり
エンゼルケアとは、死後の処置と呼ばれており、明治時代の伝染病拡大の予防策として実施されたのが始まりと言われています。
伝染病の予防を目的としていた死後の処置は、その後
- ●患者さんの最後にふさわしい状態に整える
- ●ご冥福をお祈りする
- ●故人を来世に送り出す
などの目的も加わり、「エンゼルケア」と呼ばれるようになりました。
最近では遺族の悲しみや悲嘆に対しておこなわれるケア「グリーフケア」が注目されており、日本国内でもこの「グリーフケア」に対しての活動が盛んになってきています。
*グリーフケアとは?と思った方は〈こちら〉をご覧ください。
患者さんが亡くなった直後におこなわれる「エンゼルケア」は、家族が患者さんの「死」と向き合う時でもあり、グリーフケアの面においても大切な時間であるとされています。
医療機関以外でのエンゼルケア
最近では葬祭業者の様々なサービス拡大に伴い、医療機関でおこなわれていた「エンゼルケア」を葬祭業者がおこなう場合も増えてきています。
特に「湯灌」という、ご遺体を入浴させ、清潔を保つというケアについては、多くの方が利用されています。
またこの湯灌には、現世の汚れを来世に持ち越さないという意味や、来世に生まれ変わるようにという意味も込められているようです。
また様々な宗派や土地柄などによっても求められるエンゼルケアは変化してきています。
以前はごく当たり前におこなわれていた医療機関でのエンゼルケアもその目的が少しづつ変化してきているのです。
画像出典:npr.org
海外でのエンゼルケアとは?
海外においても亡くなった患者さんに対しておこなわれる死後の処置は当然ありますが、その目的に若干の差があります。
海外では「エバーミング」という手法で、遺体の殺菌、消毒、防腐処理をおこなう場合があります。
エバーミングはそのライセンス「エンバーマー」によりおこなわれます。
遺体を洗浄、消毒したのち、全身の血液を抜き取り、代わりに防腐液を体内に注入します。
また損傷した身体を復元したりします。
その結果、遺体は青白い状態にはならず、生前のままの表情を保つことが可能になります。
また長期間に渡り清潔な状態が保てる事になるのです。
最近では国内でもこのエバーミングをおこなう葬祭業者があるようですが、特殊な技術が必要となるため、「エンバーマー」の資格を取得し、実際の「エバーミング」をおこなっているところは少ないようです。
▶ 次ページへ:エンゼルケアのポイントとは??
関連する記事
在宅におけるエンゼルケアの方法と体験談 ~患者さんだけでなく家族の方にも♪~
病院や施設にて最期を迎えられた患者さんに対しては、看護師がエンゼルケアを行うことが多いかと思いますが、在宅で亡くなられた患者さんに対してのエンゼルケアはどのようにおこなわれているのでしょうか。
知っておくべき(最近の)エンゼルケアのポイント〜エバーミングという新たな考えが広まってきています〜
エンゼルケアとは亡くなられた患者さんを最期にふさわしい状態に整えることですが、もともとは伝染病の拡大を防ぐための感染予防対策として始まりました。患者さんの最期に私達看護師がおこなう「エンゼルケア」について、注意すべきポイントや、エンゼルケアをおこなう意義などをまとめてみたいと思います。
エンゼルケアとグリーフケアの関連性 ~「死と向き合うケア」という共通項~
臨床の現場において、患者さんの「死」は避けて通ることのできないものです。今回は「死」に関連する「エンゼルケア」と「グリーフケア」の違いとその関連性についてまとめてみたいと思います。
エンゼルケアとは?〜看護師が患者さんに関わる最期のケアです
看護師として患者さんと向き合う以上、避けて通ることのできないのが患者さんの「死」です。死に向きう回数が多くても、寂しい気持ちは変わらないですよね。今回はそんな患者さんに看護師が行なう「最期ケア」である「エンゼルケア」についてまとめてみたいと思います。
【まごころ介護代表 榎本吉宏さんインタビュー第2回】「危険を冒す権利」
長期に渡って訪問介護事業所を運営されてきた榎本さんは、どのようなご経験を経て現在へと至ったのでしょうか。本記事では、榎本さんの過去の経験を踏まえ、今後の展望までお聞きしました!