エンゼルケアとは亡くなられた患者さんを最期にふさわしい状態に整えることですが、もともとは伝染病の拡大を防ぐための感染予防対策として始まりました。
実際に英国などでは死後の処置に対してのマニュアルなどが決められています。
患者さんの最期に私達看護師がおこなう「エンゼルケア」について、注意すべきポイントや、エンゼルケアをおこなう意義などをまとめてみたいと思います。
画像出典:virakesari.lk
現在のエンゼルケア
突然の死、または闘病生活の末の死、臨床の現場には様々な死があり、私達看護師はその死と向き合わなければいけない職業です。
亡くなられた患者さんを最期にふさわしい状態に整えることが一般的な「エンゼルケア」の目的ではありますが、最近では医療機関でのエンゼルケアも変化してきています。
それは葬祭業者のサービスの拡大が大きく影響していると言われています。
葬祭業者によるエンゼルケアの変化
患者さんがお亡くなりになられた場合、当然葬祭業者にご家族が依頼をされ、病院から自宅や葬祭場までの移送から、葬祭業者の仕事は始まります。
病院においては患者さんの清拭をし、化粧をし、ヒゲを剃り、着物を着替え、患者さんの状態を整える「エンゼルケア」がおこなわれていました。
現在では、葬祭業者によっては、「湯灌(ゆかん)」によるケアをおこなう場合があり、病院での清拭や、化粧、着物への着替えをせずに、創部や注射痕などの処置をするだけで、患者さんのご遺体を移送する場合もあります。
「湯灌」は患者さんのご遺体を入浴させ、現世での汚れを来世に持ち込まないという意味や、赤ちゃんが生まれてすぐに産湯につかるのと同様に、来世への生まれ変わりを祈るという意味合いがあるようです。
実際に長い闘病生活などで入浴ができていなかった患者さんなどにとっては、最後に入浴し、清潔を保持するということは非常に嬉しいことなのかも知れません。
多くの葬祭業者がこの「湯灌」によるケアをおこなっており、利用される方も増えてきています。
家族の意向に沿ったエンゼルケアを
患者さんがお亡くなりになった後、医療器具などの取り外し、輸液の抜針などをおこない、処置をしたのち、患者さんと家族の時間を設けます。
その後「エンゼルケア」についての意向を家族に確認をします。
従来通りの「エンゼルケア」を希望される家族に対しては、着物の準備をお願いし、清拭などは一緒におこなうように相談をすることも多いでしょう。
しかし、葬祭業者に連絡をし、葬祭業者から最低限の「エンゼルケア」で良いと指示をされる場合も実際増えてきています。
もちろん家族の意向が最優先ですから、指示された通りのエンゼルケアを行いますが、医療機関における「エンゼルケア」の目的や役割が変化してきているのは間違い無いでしょう。
エンゼルケアは診療保険点数には含まれず、自由診療費として算出されるため、病院によってその費用は違います。
亡くなられた後に「エンゼルケア」をすることは当然のことではあるのですが、様々な家族の思いや意向がありますので、きちんと確認し配慮することも大切です。
エンゼルケアの手法についての変化
従来のエンゼルケアでは、ご遺体からの排出物の流出などを防ぐために、綿を鼻、口、耳、肛門、腟などに詰めていました。
現在では綿の代わりに、一定の時間で固まるゼリーを使用する場合や、詰め物をするよりもご遺体を冷却することの方が排出物の流出予防には効果があるとし、詰め物をされない場合もあります。
こちらもご家族の意向などを確認し、実施する必要がありますが、感染予防対策としてのエンゼルケアの意味から考えると、最低限の処置はする必要があるのではないかともいわれています。
画像出典:propublica.org
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