尊厳死とは、人が尊厳を保ったまま死を迎えることを目的として、自分で死を選択することは妨げられないとする考え方のこと。
「消極的安楽死」とも呼ばれ、「無意味に死期を伸ばすだけの延命治療を行わないことで、結果的に死に至らしめること」という意味を持っています。
しかしながら、この尊厳死を是とするに際しては、様々な問題点が浮上してきます。
本記事では、その問題点がどういうものなのか、なぜ「問題」とされているのかについて考えていきたいと思います。
※尊厳死について復習したい方は「尊厳死とは ~あなたは延命措置と尊厳死、どちらを選びますか?~」という記事をご参照ください!
画像出典:uncagednews.com
本記事の目次
尊厳死における法的問題
日本では尊厳死はまだ認められていない
2016年現在、日本では法律的に尊厳死を認めてはいません。
尊厳死を選択する患者さんがターミナル期であり延命措置をしても死期を延ばすだけであることや、憲法13条である「幸福追求権」によって自己決定権が尊重されること、そして今はホスピスが国内に浸透しつつあることを考えれば、全く不可能とは言えません。
しかし、尊厳死を選択したつもりでも、後から医師が法で裁かれ罰せられてしまうケースも存在します。
※ホスピスについて詳しく知りたい方はこちら!:『ホスピス緩和ケアと癌(ガン)の基礎知識』 第1回:日本人にとっての癌
〇〇するための法律の必要性?
例えば、呼吸器をつけて延命措置をしているとなると、患者さんの命綱のような呼吸器を外すことは、簡単ではありません。
むしろ、「外すための法律」が現時点では存在しない上にリビングウィルを残していないとなると、「もう生きるための治療法もなく、本人に頼まれたから」という理由で呼吸器を外してしまうことは自殺幇助とみなされる場合もあり得るからです。
*参考記事:日本尊厳死協会
画像出典:slate.com
尊厳死における倫理的問題
倫理とはなにか
生死に関わる事柄には、「倫理」といった表現がつきものですが、尊厳死においても考えなくてはならないものです。
そもそも倫理とは、(簡単に言うなら)私たちが生きていく上で「良いことなのか」「正しいことなのか」と判断する時の根拠をいうものです。
*参考記事:日本看護協会
倫理が問題となるケース
例えば本人だけではなく、患者さんに関わる医師、家族を含め、「死を選択することで本当に全てが解決するのか」「延命をすることで命は続いていくかもしれないのに、そこで断ることで一人の人生が終わってしまうことが最善の選択肢なのだろうか」「命の終わりを決めることまでもが、自己決定権の中に含まれているのだろうか」といったことを考える際に問題となりえます。
価値観の押しつけにならないように真っ当な倫理観を持つべきですが、答えを出すことが難しいのが倫理的問題。
死としっかりと向き合うためには、倫理的観点も当然ながら備えておくべきでしょう。
*参考記事:賛成?反対?日本における安楽死の現状や問題点とは
尊厳死に必要となる「死ぬための権利」の妥当性
「生きるための権利」と「死ぬための権利」
私たちは当然、「生きるための権利」を持っています。
それとは逆に、尊厳死は自ら延命措置をせず死を選択することになりますから、その際に守られるのは「死ぬための権利」であると考え、ここではそう表現していきます。
ここで問題となるのは、生きる権利もまだ不十分な現状で、尊厳死という死ぬための権利を定めてしまっても良いのか?ということ。
それから、「スパゲティ状態になってまで生きているよりも、死んだ方が尊厳は守られる」という死生観を世間に押しつけても良いのか?ということです。
死生観にも関わる、民俗的課題
全ての人が尊厳死に対し同じ価値観を持っているわけではありません。
法律で定められているものの中には、未だに議論されているものがあるのと同様に、「尊厳死」という選択肢もあると知っておくことが、より良い今後の議論の大前提だということです。
しかし、命を救う・維持するという今までの考え方とは違っていることから、特定の価値観・死生観の普及に繋がることが危惧されている、という問題点もあるようです。
*参考記事:尊厳死法制化の問題点はなんだ 川口有美子さんに聞く
尊厳死の問題点 まとめ
尊厳死の問題点はまだまだ多く、現在までたくさんの人が注目しているものの一つです。
もはや尊厳死の問題は医療だけにとどまるものではなく、社会全体で考えるべきことになっています。
生きていくために、一度しかない人生が充実したものであるように、固定観念に縛られず、広い視野を持って皆が考えることが望ましいように思います。
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