前回はAIDS(エイズ)の定義・日本人にとってのエイズについてご説明しました。
日本において患者数が年々増加していること・日本人の多くはエイズに関する知識、とりわけ感染のメカニズムに疎いことが特徴的でした。
第2回は「日本人が疎いエイズ感染のメカニズム」を解説していきます。
『ホスピスとエイズの基礎知識』シリーズの目次
第2回:エイズの感染原因
第3回:エイズの治療法
エイズの感染原因
エイズ(AIDS)とは、「HIVに感染し、23個の指標疾患のいずれか1つ以上を発症した状態」と前回説明しました。
ここでいう「エイズに感染する」とはHIVに感染する事を意味します。
HIVへの感染部位は粘膜もしくは血管に達するような皮膚の傷の2点に限定されます。
よって傷のない皮膚からは感染しません。
HIVに感染すると、HIVは精液、膣分泌液、血液、母乳等に多く分泌されます。
(唾液、涙、尿などの体液では他のヒトに感染させるだけのウイルス量は分泌されていません。)
感染部位と分泌部位の関係から、HIVの感染原因は主に性的感染・血液感染・母子感染の3つに分けられます。
・性的感染
いわゆる性行為による感染です。HIV感染は、性行為による感染が最も多いです。
主として、女性は膣粘膜から、男性は性交によって生じる亀頭部分(粘膜)の細かい傷から、精液、膣分泌液に含まれるHIVが侵入することで感染します。
また、男性同性間の性的接触では、腸管粘膜から精液中のHIVが侵入します。
膣や口腔の粘膜は重層ですが、腸管粘膜は単層であることから傷つき易くHIVが侵入し易い為、膣性交よりも感染リスクが高くなります。
性的感染防止には、コンドームの使用が効果的です。多くのHIV感染が性的感染である事からも、性行為でのコンドーム使用を徹底しましょう。
・血液感染
主に麻薬注射で注射器を使いまわすことによる感染です。
輸血、注射器・注射針の共用による麻薬の回し打ち、医療現場による針刺し事故などから、感染者の血液が他のヒトの血管中に侵入することにより感染が成立します。
現在、日本赤十字社においてすべての献血血液について非常に厳格なHIV検査を実施しているため、感染の危険性は極めて低いです(ただし、献血のHIV検査結果は献血者本人にはお伝えしていません)。
医療現場による針刺し事故は主として医療従事者に起こりえますが、万が一HIV感染者の血液により暴露事故が起こってしまった場合には、2時間以内に抗HIV薬の予防内服を行うことによって、感染の危険性を低下させることができます。
・母子感染
母子感染は、出産時の産道感染、母乳哺育による感染、胎内感染があげられます。
母子感染を防止・逓減させる施策として、初期のHIV検査実施による感染診断・妊娠中の抗HIV療法・陣痛発来前の選択的帝王切開術・出生児への人工乳哺育などが行われており、母子感染率は0.5%未満にまで低下させることが可能となっています。
感染から発症までの流れ
HIVに感染した後は感染初期(急性期)・無症候期・エイズ発症期の経過をたどります。
感染初期では、HIVは体内で免疫のしくみの中心であるCD4陽性リンパ球に感染し、急激に増殖します。
このため、感染者は発熱などのインフルエンザ様症状がみられることもありますが、感染者の体内の免疫応答により、数週間で消失します。
その後、無症候期に入ります。無症候期は数年〜10年以上続く人もいますが、感染後、短期間のうちにエイズ発症をする人もいます。
無症候期の間もHIVは体の中で増殖しており、CD4陽性リンパ球は次々とHIVに感染して死滅していきます。
健康な時には血中1μl中に700〜1500個あるCD4陽性リンパ球が200個未満になると免疫不全状態となり、日頃かかることのない様々な病気(23個の疾患)にかかりやすくなり、エイズを発症します(エイズ発症期)
感染検査について
HIVに感染してから2〜6週間(感染初期)には、50〜90%の人に何らかの症状(発熱、リンパ節腫脹、咽頭炎、皮疹、筋肉痛、頭痛、下痢等)がみられると言われています。
しかし、いずれもHIV感染に特異的な症状ではないため、HIVに感染したかを調べるためにはHIV検査を受けるしかありません。
HIV検査は全国のほとんどの保健所等で無料・匿名で検査が受けられます。
有料ですが、医療機関でもHIV検査は受けられます。陰性であればその日のうちに結果が判明する「即日検査」を実施している保健所も増えています。
全国のエイズ検査・相談窓口はこちら
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