オレンジプランとはなにか ~振り返り編~

 

1-2それぞれの柱について詳しく説明します!

 

次に、それぞれの柱について厚生労働省の資料をもとに解説します。

 

1. 標準的な認知症ケアパスの作成・普及

 

認知症ケア」とは、認知症の進行状況に合わせて提供される医療や介護の標準的な流れを示したものです。

厚生労働省はこの流れを市町村ごとに作成し、普及することをオレンジプランで定めました。

「認知症ケアパス」作成のメリットとして、市町村ごとが地域の実情に応じて、その地域ごとに認知症の人やその家族が認知症と疑われる症状が発生した場合に、いつ・どこで・どのような支援を受ければよいか理解できるようになる、というのが挙げられます。

 

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画像出典:厚生労働省「標準的な認知症ケアパスの概念図~住み慣れた地域で暮らし続けるために~」

 

作成の流れ

平成24~25年度 調査・研究を実施
平成25~26年度 各市町村において、「認知症ケアパス」の作成を推進
平成27年度以降 介護保険事業計画(市町村)に反映

 

2. 早期診断・早期対応

 

認知症と疑われる方に対して早期に対応するために厚生労働省は以下の5つの目標を定めました。

 

・かかりつけ医認知症対応力向上研修の受講者数目標の策定(累計)

 

認知症は進行してから受信する方が多く、対応が遅れることが問題点として挙げられていました。

そこで、かかりつけ医を受診した段階で医師が対応できるよう「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を実施する目標数を定めました。

 

目標の推移

平成24年度末見込:35,000人→平成29年度末:50,000人目標(累計)

 

画像出典:alz.to

 

・認知症サポート医養成研修の受講者数目標の策定

 

認知症サポート医」とは、認知症の方の診療に習熟し、かかりつけ医への助言その他の支援を行い、専門医療機関や地域包括支援センター等との連携の推進役を果たす医師のことです。

この医師の養成研修を行うことにより、各地域において、認知症の発症初期から状況に応じて、医療と介護が一体となった認知症の人への支援体制の構築を図ることができます。

 

目標の推移

平成24年度末見込:2,500人→平成29年度末:4,000人

 

・「認知症初期集中チーム」の設置

 

認知症初期集中支援チームとは、厚生労働省の資料によると「複数の専門職が家族の訴え等により認知症が疑われる人や認知症の人及びその家族を訪問し、アセスメント、家族支援などの初期の支援を包括的、集中的(おおむね6ヶ月)に行い、自立生活のサポートを行うチーム」であると定義されています。

 

目標の推移

平成24年度 モデル事業のスキームを検討
平成25年度 全国10か所程度でモデル事業を実施
平成26年度 全国20か所程度でモデル事業を実施
平成27年度以降 モデル事業の実施状況などを検証し、全国普及のための制度化を検討

 

参考資料:厚生労働省「(参考)認知症初期集中支援チームについて」

 

・早期診断等を担う医療機関の数

 

厚生労働省は平成24年度から29年度に書けて認知症の早期診断などを行う医療機関を約500か所整備することをプランに盛り込んでいます。

 

・地域包括支援センターにおける包括的・継続的ケアマネジメント支援業務の一環として多職種協働で実施される「地域ケア会議」の普及・定着

 

厚生労働省の資料によると、地域ケア会議とは「高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備とを同時に進めていく、地域包括ケアシステムの実現に向けた手法」であるとしています。

具体的は、地域包括支援センターなどが主催し、

・ 医療、介護等の多職種が協働して高齢者の個別課題の解決を図るとともに、介護支援専門員の自立支援に資するケアマネジメントの実践力を高める。
・ 個別ケースの課題分析等を積み重ねることにより、地域に共通した課題を明確化する。
・共有された地域課題の解決に必要な資源開発や地域づくり、さらには介護保険事業計画への反映などの政策形成につなげる。

ことを目的としています。

 

普及目標

平成24年度 地域ケア会議運営マニュアル」作成、「地域ケア多職種協業推進等事業」による「地域ケア会議」の推進
平成27年度以降 すべての市町村で実施

 

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画像出典:厚生労働省「地域ケア会議について」

 

3. 地域での生活を支える医療サービスの構築

 

・「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定

 

「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」では、その計画の一つとして「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定を決定しました。平成24年に作成した当該ガイドラインは、目的として以下のように述べています。

かかりつけ医は、高齢者の身体疾患への日常的な対応や健康管理などを通じて、状態の変化をいち早く捉えることが可能である。さらに、認知症者を取り巻く家族の状況を含めた環境についても把握しやすい立場である。BPSD (Behavioral and Psychological symptoms of Dementia: 認知症の行動・心理症状)が多要因によって発現あるいは修飾されることを考えれば、かかりつけ医が認知症疾患医療センターなどの専門的な医療機関と連携することにより早期の対応が可能となり、BPSD の悪化防止に寄与することができる。

引用:かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン

 

目標の推移

平成24年度 ガイドラインの策定
平成25年度以降 医師向けの研修等で活用

 

・精神科病院に入院が必要な状態像の明確化

 

平成24年度から、調査研究を開始するようオレンジプランには記載されています。

 

・「退院支援・地域連携クリティカルパス(退院に向けての診療計画)」の作成

 

厚生労働省の資料によると、精神疾患に関する医療計画の目指すべき方向として以下の5点を挙げています。

  1. 住み慣れた身近な地域で基本的な医療やサービス支援を受けられる体制
  2. 精神疾患の患者像に応じた医療機関の機能分担と連携により、他のサービスと協働することで、適切に保健・医療・介護・福祉・生活支援・就労支援等の総合的な支援を受けられる体制
  3. 症状がわかりにくく、変化しやすいため、医療やサービス支援が届きにくいという特性
    を踏まえ、アクセスしやすく、必要な医療を受けられる体制
  4. 手厚い人員体制や退院支援・地域連携の強化など、必要な時に、入院医療を受けられる体制
  5. 医療機関等が、提供できるサービスの内容や実績等についての情報を、積極的に公開することで、各種サービス間での円滑な機能連携を図るとともに、サービスを利用しやすい環境

 

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画像出典:厚生労働省「認知症患者への退院支援」

 

目標の推移

平成24年度 クリティカルパスの作成
平成25~26年度 クリティカルパスについて、医療従事者向けの研修会などを通じて普及。あわせて、退院見込者に必要となる介護サービスの整備を介護保険事業計画に反映する方法を検討
平成27年度以降 介護保険事業計画に反映

 

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