「グリーフケア」という言葉を聞いたことがありますか?
グリーフケアとは、大切な人を亡くした遺族がその悲しみ(Grief)を乗り越えて、悲嘆から立ち直り、日常生活に適応することをサポートしていくことです。
今回はグリーフケアにおける看護師の役割をお伝えしたいと思います。
グリーフケアとは?
グリーフケアは1960年代にアメリカで始まったと言われています。
その後イギリスやドイツ、オーストラリアなどでも広まり、現在アメリカでは「グリーフケア」の必要性が様々な場所で認められ、その立場を確立しつつあります。
死別などで大切な人を失うと大きな悲しみ=悲嘆(Grief)を感じることになります。
人間の悲嘆という感情は段階を経て経過し、やがてその悲嘆を乗り越えていくことになります。
しかしその経過は人それぞれです。
悲嘆の程度や深さは、亡くした人との関係や関わりによって大きく違い、また悲嘆に暮れる人の性格などにも影響を受けます。
この悲嘆を乗り越えるために必要な時間が半年〜数年とされていますが、この悲嘆を乗り越えていくプロセスは「グリーフワーク」と呼ばれています。
画像出典:vnsny.org
グリーフワークの「12の段階」
悲嘆を乗り越える12の段階提言者 アルフォンス・デーケン
人間が悲嘆を乗り越えていくまでの経過は、12の段階に分けられると言われています。
この12の段階を提言したのが、アルフォンス・デーケンです。
彼はドイツに生まれ、1959年に日本に来日しました。
上智大学で教鞭をとる一方で、生死学の権威として、厚生労働省のオブザーバーとして、「死」に対するテーマの有識者会議などにも参加していました。
癌の告知をしなかった時代に、「癌患者への告知は行うべきだ」という考えを、日本国内で唱え、生死学においては日本の代表的な人物です。
彼が提唱した12段階が以下のとおりです。
12段階の詳細
- <第一段階>:精神的打撃と麻痺状態
- 愛する人の死という衝撃によって一時的に現実感覚が麻痺する。
- <第二段階>:否認
- 感情、理性ともに、相手の死を否定する。
- <第三段階>:パニック
- 身近な死に直面した恐怖による極度のパニック。
- <第四段階>:怒りと不当感
- 不当な苦しみを負わされたという感情から強い怒りを感じる。
- <第五段階>:敵意と妬み
- 周囲の人々や個人に対して、やり場のない思いを敵意としてぶつける。
- <第六段階>:罪意識
- 悲嘆の行為を代表する反応で、過去の行いを悔やみ自分を責める。
- <第七段階>:空想形成
- 空想や仮想の中で、まだ故人が生きているかのように思い込み、そのように振る舞う。
- <第八段階>:孤独感と抑鬱
- 取り残されてしまったという孤独感で抑鬱状態になる。
- <第九段階>:精神的混乱と無関心
- 日々の生活を見失った空虚さから、どうしていのかわからなくなる。
- <第十段階>:あきらめ、受容
- 自分の置かれた状況を「明らか」に見つめ、勇気を持って現実に直面しようとする。
- <第十一段階>:新しい希望、ユーモアと笑いの再構築
- ユーモアと笑いは健康的な生活を送る上で欠かせないもので、この復活は悲嘆を乗り越えつつあるしるし。
- <第十二段階>:立ち直りの段階 新しいアイデンティティの誕生
- 以前の自分に戻るのではなく、苦悩に満ちた悲嘆のプロセルを経て、より成熟した人格者として生まれ変わる。
この12の段階が、悲嘆のプロセスとされていますが、そのプロセスは前後することもあり、また同時に起こることもあり、さらには段階を飛び越える場合もあると言われています。
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