【がん看護専門看護師・坂元敦子さんインタビュー第1回】意思決定の「下ごしらえ」の重要性

 

がん」は、日本人の「国民病」ともいえる病気です。

日本人の死因第1位ががんであり、約3人に1人ががんによって死ぬという現実があります。また、がんは治療が長期に及ぶケースもあり、訪問看護やホスピスとの関係性は高いと言えます。

 

では、がん患者さんの「看護」とは誰がどのように行うのか?

そこでまず思い浮かぶのが、「がん看護専門看護師」という職種(資格)。

日本看護協会の資料によれば、「がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOL(生活の質)の視点に立った水準の高い看護を提供する」というもの。

 

今回は、そのがん看護専門看護師であり、現在杏林大学医学部付属病院のがん相談支援センターにて、相談員としてご活躍されている坂元敦子さんにお話を伺うことが出来ました。

坂元さんは非常に謙虚な方で、「自分を反面教師にしてほしい」と仰った上で取材に応じて頂けましたが、そんなことは全くありませんでした。

きっと、現場で奮闘しておられる看護師の皆さまにとって、参考に出来るところがたくさん見つかる内容だと思います。

 

本インタビュー記事は3シリーズ構成。

坂元さんの「いま」「これまで」「これから」について順にお話をお聞きしていきます。

まずは、「いま」に関するお話として、坂元さんの現在の業務内容や業務において意識しているポイントをご紹介します!

 

坂元さん インタビュー がん看護専門看護師

 

坂元さんの現在の業務内容

 

――現在、がん看護専門看護師としてどのようなご活動をされていますか?

 

がん相談支援センターの相談員として働いています。*

がん看護専門看護師であるということは、相談員の役割を果たすうえで役立っています。

 

業務内容としては、がん患者さんへの情報提供や、病院・施設・在宅といったさまざまな場所での治療や療養に関する相談に応じる事です。

 

* がん相談支援センターとは、全国のがん診療連携拠点病院などに設置されているがんに関する相談窓口のこと。その病院に通院していなくても、どなたでも無料で利用できるものです。

 

――どのような相談がありますか?

 

相談に来られる方は、患者さんご本人はもちろん、ご家族やご友人、あるいは医療関係者の場合もあります。ですので、非常に幅広いご相談があります。

たとえば患者さんご本人の場合でいいますと、「何をどうしたらよいか分からない」というケースも多く見られます。

そうしたご相談をお聞きし、悩みを整理すること、必要な情報を収集・提供することなど、情報・療養の側面から、相談にいらっしゃった方のサポートを行うのが私の仕事です。

つまり、何か”で困ったときの「入口」という立ち位置です。

 

坂元さんががん看護専門看護師として働く上で大事にしていること

 

――「入口」としての業務を行う上で、大事にしていることはありますか?

 

一つ大事にしていることは、「架け橋になること」です。

というのも、がん患者さんのお手伝いをするときには、誰か一人が頑張れば患者さんの困りごとを綺麗に解決できるということは、ほとんどゼロに近いと思っているからです。

自分が無力あるいは能力が足りないのはもちろん承知していますが、みんなに繋いで、みんなでお手伝いをした方が、より厚みのある看護が出来るだろうというのは強く思っていること。

ですので、がん相談員としてもがん看護専門看護師としても、「架け橋」の役割は非常に重要だと思います。

 

――「架け橋」とは、具体的にはどのようなシーンが想定されるでしょうか?

 

まず、病院の中でよくあることですが、患者さんと医師のコミュニケーションの「架け橋」です。

患者さんが先生とのコミュニケーションに難を抱えている際に、患者さんの心境をお聞きして、「その点についてはあらかじめ先生に一言伝えておくこともできますよ」などの言葉をお掛けして、後押しするというシーンです。

 

また、地域のケアマネジャーさんと協力するこもあります。

がん患者さんが抱える問題を一旦整理した後に、「私がもう少しお手伝いが出来るかもしれない」ということがありますので、地域のケアマネジャーさんなどと相談しながら進めていくといったケースです。

 

それから、患者さんやご家族間の「架け橋」です。

患者さんと家族、家族間でも、お互いを思うあまりに遠慮や言い過ぎをすることがありますので、上手く関係者の間を取り持つ必要が出てきます。

 

こういったことが私の仕事だと思っていまして、私自身が出来ること、そして他の人に委ねるべきことを意識しつつ「橋をかけていく」ということを大事にしています。

出来ているかは別ですが。(笑)

 

――がんに関する困りごとというのは多岐にわたるのでしょうか。

 

そうですね。

がん患者さんは、最初の診断が下りて診療が一区切り着いた後、つまり、医師から「日常の生活に戻っていいですよ」と言われた後でも、「病気ではないけど困ること」はたくさん抱えているように感じています。

それは、医療でも福祉でもなさそうな、ちょっとこぼれ落ちてくる「暮らしの中の困りごと」です。

ですので、治療期とか終末期だけが相談員やがん看護専門看護師の担当範囲だとは思っておらず、一生付き合っていくことが私の仕事だと思っています。

 

「マネジメント」と「意思決定支援」で必要なこと

 

――坂元さんのご業務は、大きくは医療者向けの「マネジメント」と患者さん向けの「意思決定支援」の2種類に分けられると思うのですが、業務上注意している点などはありますか?

 

私の業務は、例えて言えば「下ごしらえ」が重要だと思っています。

つまり、患者さんが決められるようにするための準備を医療者側もしておく必要があり、患者さん側にも準備が必要だということ。

たとえば、医師や看護師が患者さんに対して病状説明・ICをする場合でいうと、患者さんが判断できるように丁寧にご説明するのはもちろんですが、その場に座るまでの患者さんの心の準備・情報の準備のお手伝いも重要な要素です。

より具体的に言えば、(患者さんが)その場に座る理由をわかって心の準備をしているか、説明を受けるときに隣に座っていてほしい人は、奥さんなのか息子なのか娘なのか、それをちゃんと伝えているかなどなど。

医療者側も、どんな話をどういう風に展開していくか、あるいは、資料の説明を簡易にした方が良いのか、より詳細にするのかといった「下準備」をしておく必要があります。

 

このように、一言で「意思決定支援」と言っても、「意思決定支援を出来る状況にもっていく下ごしらえ」も、専門看護師の仕事ではないかと考えています。

ただ、この下ごしらえにすごく時間を使わなければいけない込み入った症例もあるので、いつでも・全員にそれをすることは難しい事です。

しかし、下ごしらえを上手に進める役割は少なからず必要だと感じています。

 

料理の時に、アジとエビの下ごしらえのやり方が違うように、あるいは、煮物とお寿司を作る場合では違う下ごしらえが必要なのと同じように、相手のことをよく理解し、どのように進めるのが良いのかを分かったうえで「下ごしらえ」をするのが重要だと思います。

これはマネジメントでも同じではないでしょうか。

 

――一例ですが、「強面のお医者さんで、患者さんがなかなか言いたいことが言えない」なんてことも、「意思決定支援」に含まれると考えて行動している、と。

 

そうですね、関係づくりの面は重要だと思います。

お互いに緊張が高まっているとき、勘違いや誤解がよく起こります。

そんな時はたとえば「先生も家に帰れば、裸でうちわを扇いだりしているんだよ。きっと、ね?」というコミュニケーションをとったり。(笑)

緊張の緩和に努めることも仕事の一つだと思いますね。

 

――病院で勤務していない立場からしても、そういった役割を預かってくれる看護師さんがいればすごく有り難いと思います。

 

がん看護専門看護師や相談支援センターが「やるべき」というか、「やった方がいい」「出来ればやりたいこと」としては、そうしたたくさんの点が挙げられるかと思います。

ただ、患者さんが大勢いらっしゃることや「下ごしらえ」にはとても時間がかかることがあって、みんなにとって必要だと思っても、なかなか浸透・徹底するのは難しいという現実についてはもどかしく感じています。

 

「がん専門相談員」について

 

――ところで、形式的な話として、「相談員」というのはがん看護専門看護師が行うものなのでしょうか?

 

現在の私の勤務先の病院では違いますし、一般的にも異なります。

 

勤務先の病院では、がん看護専門看護師とベテランの看護師が「専従」としてやっており、ソーシャルワーカーも他の業務と並行している形(「専任」というそうです)で相談員になっています。

一般的に他の医療機関では逆で、ソーシャルワーカーが「専従」で、看護師が「専任」という場合があったり、臨床心理士も相談員に加わっていたりと、色んなパターンがあるようです。

 

現在私は(専従する看護師として)「相談員」をしていますが、実はこれは私がもともとやりたかったことなんです。

 

→坂元さんの「いま」のお話はここまで! 次回は、坂元さんの「これまで」のお話へと移っていきます。

 

 

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