利用者が絶えない「えいる訪問看護ステーション」の経営手法【佐藤友紀代表インタビュー2】

未来の訪問看護師へのメッセージ

 

――最後に、ポジティブで前向き、そして好奇心旺盛な佐藤さんから、未来の訪問看護師さんにメッセージを是非お願いします!

 

私の仕事は、在宅の良さを説くことも入っていると思いますので、そのあたりを長々と申し上げたいと思います。(笑)

 

在宅の良さの1つはその人らしさに触れられることです。

看護師にとってみれば、「本性のその人」とぶつかり合える打率が高いのです。

 

わがままな人はわがままです。壁を作る人ももちろんいます。

例えば、訪問しても玄関をあけてくれないような人がいたりします。

しかし、訪問を何度か重ねて仲良くなると、「お茶を飲むまで返しません」なんて言ってくださることもたくさんあります。

 

そういった「心を許しあえる関係」下で関われるからこそ、本当に求めているところが理解できます。

病院では目的の大部分が治療に置かれてしまうため、「治れば帰す」が先行してしまう。また、患者側も「早く治りさえすれば良い」という割り切りがあるケースも多いかと思います。

しかし、在宅では「暮らし」が中心ですので、そこは自分の思いを率直にぶつけてくれます。

だから、めんどくさいなと思う時も正直ありますが、それこそが「人としてのキャッチボール」ができる醍醐味であり、最も面白いところであると思っています。

 

次に、在宅では利用者さんを中心に自分主体で仕事ができる点が魅力ではないかと思います。

病院や先生の指示を待つだけではなく、他職種との連携として自ら情報を発信し、他の介護士さんやケアマネさんに医療者として頼られやすい存在になる。あるいは、自分としての見解を述べて認めてもらったり、自分が関わったからこそ生活を続けていけることにやりがいを感じたり…さまざまです。

 

私の勝手なイメージかもしれませんが、看護師になる人は大体、人と関わることが好きだったり、人の役に立ちたい気持ちが強い方が多いと思うので、それが集約したのが「在宅」にあたるのかなと思っています。

 

病院だと、業務に追われ、気づけば休みを取っていないなんてこともあります。

実は、私が救急病棟で働いていたときにそうだったのですが、「私はなんでこんな事をやってるんだろう・・・」と夜勤の時にふと思ってしまったり。

それでも、目の前には処置、処置、処置の連続。またローテが回ってきて、1周目がはじまるわけです。

 

そうなった場合により深刻なのは、患者さんとのコミュニケーションをとる時間がなくなること

すると、「もともと患者さんと関わりたくて看護師になったのに、なにやってんだろう」といったことになります。

病院では、こうしたケースは多いのではないかと思います。

 

一方で、在宅では「(利用者さんが)とにかく喋りまくって困ってます!」という例は往々にしてあります。

それはそれで別の悩みを生む場合もありますが(笑)、そこはすごく「人と仕事をしているんだ」という実感が持てる部分です。

 

――すごく分かりやすいご説明です。

 

たとえば、利用者さんからの緊急のお電話や困りごとに関する電話も、「どうされましたか?」「転んでしまったのですね。」と状況をお聞きして、「それでしたら明日まで様子を見て大丈夫ですよ」「わかりました。今から様子を見に伺いますね。」など最初の安心を提供することができます。

業務としては、夜間対応が続くと確かに大変ですが。(笑)

そこは上手くスタッフでローテしながらやっていけば良いのかなと思います。

また、事前にリスクヘッジを行い、できるだけ安全・安楽に生活できるようアセスメントを行い、福祉用具の導入のて提案等、可能な限り先手で行動するようにしています。

 

これらに加え、在宅ではルールが柔軟で、クリエイティブな仕事が可能である点も、在宅の良い面として是非お伝えしたいです。

もちろん看護師としての業務はありますが、私のように必要時リハビリをやってもよし、必要があればケアマネさんと連携し福祉用具の方に依頼し、その分野の仕事にも介入することができます。

さらに、自分が火種になって、チームを動かす役割を持つといった考え方もあったりします。

 

――主体的に動きたい、もしくは、主体的に動ける人にとっては特に面白いでしょうね!

 

その通りです。

逆に、指示がないと動けない、動きたくない方にとっては面白さは感じにくいかもしれません。

 

もちろん責任は伴いますが、自分で考えたり殻を破ったりするきっかけになるので、そういう意味では常に新鮮さを味わえる職業だと思います。

 

――お話を伺って、改めて訪問看護をより広めていく、魅力に思うための仕掛けが色々できるのではないかと思いました。

 

そうですね!

これまで私は主に「仕事のやりがい」に関する話をしてきましたが、純粋に業務面で見ても、例えば実質的に夜間は休めたり、ある程度の休みは確定していたりと「在宅の良さ」はたくさん挙げられます

 

また、病院は決まった場所、閉鎖的な空間で仕事しますが、在宅だと家から家へ移動するたびに外に出るので、それだけで気分転換が出来ます

弊社の場合ですと、目の前に川があってすごく和ませてもらっていますし、お腹空いたからコンビニでも行こうみたいなことも可能だったりします。

しっかり予定の時間に到着さえすれば、そこは結構自由に出来るかと思いますので、リラックスしながら楽しく働きやすいように思います。

 

――目の前の佐藤さんの表情を見ていても、本当に楽しくされていることが伝わってきます。

 

ホント、楽しいですよ。

さまざまな業務を自分なりに行うことが出来ますからね。

 

たしか、ビーナースさんは以前に秋山さんの取材(※)をされてますよね?

訪問看護師は「隣のおばちゃんのようにありなさい」ということを秋山さんは仰っているのですが、私もいち訪問看護師として非常に共感しています。

大ベテランの方がいて下さるから、ルーキーである自分もそうなれるように頑張ろうと思えています。

実際に、これから在宅に飛び込んでくる人が活き活きと仕事が出来るよう、私なりに精一杯サポートしていきたいです。

 

(※)秋山さんのインタビュー記事はこちら!

【暮らしの保健室 秋山正子さんインタビュー第1回】「患者さんにとって本当に必要なことか?」という問い

 

――ありがとうございます。佐藤さんとお話することで、本当にこちらも元気をいただけました。

 

こちらこそありがとうございました!

(第2回インタビュー:完)

 

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