訪問看護師として働く中で、看取りは避けられないこと。
しかも、その方法に絶対的な答えなどありません。
そこで、訪問看護師の私が悩んだときに「どう最期を迎えるのか」、「どうすれば最高の最期を迎えられるのか」について示唆深い言葉をくれた先生方を5人ご紹介します。
画像出典:iapam8.com
本記事の目次
【訪問看護師がフォローすべき先生1】 柏木 哲夫先生
柏木先生のプロフィール
- ・1939年5月29日生
- ・内科医、精神科医博士
- ・専門はターミナルケアで、現在、淀川キリスト教病院理事長、大阪大学名誉教授、ホスピス財団理事長をされています。
柏木先生の略歴
- ・兵庫県出身
- ・1965年大阪大学医学部卒業 精神科に3年勤務
- ・1969年ワシントン大学留学
- ・1972年帰国 淀川キリスト教病院に精神科を開設
- ・ターミナルケア実践のため、チームを結成
- ・1984年ホスピス開設
柏木先生の心に響く言葉
「人は死を背負って生きている」と述べられています。
つまり、生と死の関係というのは、ちょうど1枚の紙の表に生があり、裏側に死が裏打ちされているようなもので(しばしば、人は生と死を別々に考えがちだが)、本当は常にひとつで、ちょっと風が吹けば紙は裏返り、死があるような関係だということ。
死に直面してから突然あわてて死について考えるのではなく、普段から自分の死についてよく考えておくとよいし、せめて最低限、1年に1度自分の誕生日には、自分の死についてよく考えたり、心の準備をしておくことを人々に勧めておられます。
柏木先生を選んだ理由:「人は生きてきたように死んでいく。生きざまは死にざまに反映する」
柏木先生のお言葉の中の「人は生きてきたように死んでいく。生きざまは死にざま」という言葉に共感することが訪問看護師で勤務する中でたびたびありました。
子供さん達が忙しくされていると葬儀告別式が仕事の支障のない日になるように亡くなったり、身寄りのない方がこのまま動けなくなったりして、誰かに迷惑をかけるのだろうかと心配されていても、寝込むことなくあっけなく亡くなったりと、死にざまがその人の人柄を表すかのような最期を迎えられるのです。
柏木先生はクリスチャンですので、死を恐れることなく向き合っている面に対しても勉強になります。
【訪問看護師がフォローすべき先生2】 鎌田 實先生
鎌田先生のプロフィール
- ・1948年6月28日生
- ・内科医
- ・現在、諏訪中央病院名誉院長、東京医科歯科大学臨床教授、日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)理事長、日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)代表をされています。
鎌田先生の経歴
- ・杉並区出身
- ・1974年東京医科歯科大学医学部卒業
- ・長野県・諏訪中央病院にて、地域医療に携わる。「住民とともにつくる医療」を提案、実践する。
- ・1988年諏訪中央病院 院長 就任。
- ・1991年日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)設立。チェルノブイリ原発事故の被災地
- ・ベラルーシ共和国へ医療支援を開始。
- ・2000年著書「がんばらない」(集英社)がベストセラーとなる。
- ・2001年「がんばらない」が西田敏行氏出演でTBSドラマ化される。
- ・2004年イラクへの医療支援を開始(JIM-NETとしての活動)
- ・2005年諏訪中央病院 名誉院長に就任。
- ・2006年「がんばらない」レーベルを立ち上げ、CDアルバム「ひまわり」をプロデュース。イラクの難民キャンプで診察を実施。
- ・2009年ベスト・ファーザー イエローリボン賞(学術・文化部門)受賞。
- ・2011年日本放送協会放送文化賞受賞。
鎌田先生の心に響く言葉
「自分の中の、そして相手の中のヘンテコを大事にして、人間らしくヘンテコに生きる。そこに、幸運の鍵があるのではないだろうか。」
「人が死ぬということは、歩けなくなり、ご飯が食べられなくなり、お水が飲めなくなること。当たり前のことが一つずつできなくなることなの。あなたたちはそれが全部できるでしょう。今のうちにやりたいことをせいいっぱいやって、悔いのない人生を歩んでください。」
鎌田先生を選んだ理由
私が鎌田先生と出会ったのは、1冊の本でした。
何気なく書店で見つけた「言葉で治療する」という本です。
この本を読んでいるうちに急に涙が出てきたりして電車の中では恥ずかしくて読めないくらいでした。
それから鎌田先生の本を全部読みつくしました。どの本にも納得のできる言葉でいっぱいです。
「1%だけ誰かのため、他人のために生きてみる。一生懸命、他人のために生きようとすると、どこかで無理が生じて、結局、長続きしない。」という言葉があります。
そのとおりですよね。
1%だったら、こんな私でも何かできるのではないかと思い、気持ちが前向きになります。先生の言葉は自分を元気にしてくれます。
【訪問看護師がフォローすべき先生3】 石飛 幸三先生
石飛先生のプロフィール
- ・1935年生まれ
- ・現在、特別養護老人ホーム「芦花ホーム」で勤務中
石飛先生の経歴
- ・広島県出身
- ・1961年慶応大学医学部卒業
- ・消化器外科専門
- ・ドイツの病院で血管外科医として約2年勤務。
- ・30年間にわたって、脳梗塞の予防を目的とする頸動脈内膜摘除術、野球ピッチャーの
- ・血管損傷の手術法の発展に寄与。
- ・東京都済生会中央病院副院長を経て
- ・2005年12月 特別養護老人ホーム芦花ホーム常勤医
石飛先生の心に響く言葉
一回しかない自分の人生です。
自分の一生のことは自分で律していく。そして最期に「あぁ、これでよかったんだ」とお天道様にも顔向けができる。
そう思って、最期、締めくくりたいもんだなと
石飛先生を選んだ理由:「平穏死のすすめ」との出会い
石飛先生を知ったのも、1冊の本でした。
「平穏死のすすめ」という本です。
この中には医療従事者にとっては衝撃的な内容も書かれていました。
医療従事者は命を救うことに全力をそそぎますが、現代の医療では救えない命もあります。
それは終末期のがんもそうですが、高齢ということも救えない命の一つです。
人は誰も年を重ね、死を迎えるのですから。
この自然の摂理を全うすることが一番幸せな死の迎え方ではないかということ。
そして、それを現在、施設の中で実践されているのが、石飛先生です。
安らかな死を迎えるには、自分らしく生き切ってもらうにはということについて考えさせられました。
【訪問看護師がフォローすべき先生4】 長尾 和宏先生
長尾先生のプロフィール
- ・内科医
- ・現在、長尾クリニック 院長
長尾先生の経歴
- ・1958年香川県生まれ
- ・1984年東京医科大学卒業
- ・大阪大学第二内科入局
- ・1984年聖徒病院勤務
- ・1986年大阪大学第二内科勤務
- ・1991年市立芦屋病院 内科勤務
- ・1995年長尾クリニック開業
長尾先生の心に響く言葉
「平穏に最期を迎える平穏死」
「病気の9割は歩くだけで治る」
「歩くことで運命が変わる」
長尾先生を選んだ理由
長尾先生も平穏死について考えておられ、実行されています。
ご自分でクリニックを経営され、24時間365日在宅での看取りを支えておられます。
在宅生活を支える側の私たち訪問看護師は、利用者さんがどう生きたいのか、どう最期を迎えたいのかを考えていかなければならないと思います。
答えは1つではなく、十人十色です。
そのそれぞれに対応するためにいろいろと教えてくださる先生だと思います。
ブログもされていて、いろいろと勉強になります。
【訪問看護師がフォローすべき先生5】 平野 国美先生
平野先生のプロフィール
- ・ホームオン・クリニックつくば院長
平野先生の経歴
- ・1964年茨城県生まれ
- ・1992年筑波大学医学専門学群卒業
- ・2002年筑波大学医学専門学群博士
- ・訪問診療専門クリニック「ホームクリニックつくば」開設
- ・2003年医療法人社団「彩黎会」設立
- ・2005年「ホームオン・クリニックつくば」として再スタート
平野先生の心に響く言葉
「常に自分の死を想う者は、他者の死を想う。他者の死から学ぶものは、自分の死についても学ぶ」
「在宅医療と在宅死の理想は、家族という共同体の中で、“自然”な死のプロセスをたどることである。親族の介護と看取りが子供たちに与える影響と教育効果はおそらく何物にも代えがたいものであろう。それは死にゆく人にとっても安心感と誇りを持って他界へ旅立つ最期の花道である。」
平野先生を選んだ理由
平野先生は訪問診療を専門とされています。
人として最もふさわしい場所を家族ぐるみで考え、両者が満足できる最期を迎えるためにサポートされています。
「看取りの医者」はドラマ化もされました。
日本人は死を言う言葉を遠ざけて人生を送っています。
しかし、誰にでも必ず死は訪れます。
今まで生活してきた場所で同じ景色を見ながら、安らかに迎えることができれば、どんなに幸せな一生でしょう。
そんな素晴らしい最期を迎えてもらうために先生から学ぶことが多いでしょう。
訪問看護師がフォローすべき先生(看取りのエキスパート) まとめ
以上、訪問看護師の私が感銘を受けた先生方5名をご紹介しました。
下記、再掲致します。
- ・柏木 哲夫先生:淀川キリスト教病院理事長 ホスピスを開設
- ・鎌田 實先生:諏訪中央病院名誉院長 イラク支援等国際的にも活躍
- ・石飛 幸三先生:特別養護老人ホーム 芦花クリニック勤務。平穏死を考え実施
- ・長尾 和宏先生:長尾クリニック院長 平穏死を支える医療。
- ・平野 国美先生:ホームオン・クリニックつくば院長 訪問診療専門。看取りの医師。
みなさまが尊敬している先生は、一体どなたでしょうか?
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