看護・訪問看護業界のこれからの課題
「マンパワーをいかに補うか」 ~看護師編~
看護師不足は深刻で、2013年は需要に対し42000人の看護師が不足するとのデータが、厚生労働省から出ています。
その原因の一つが、「離職」にあります。
たとえば厚労省が2009年に公表している資料によれば、離職原因としては、
- ・“看護ケア業務以外の雑務が多い”が57.8%
- ・“医療事故を起こすのではないかと不安を感じる”が61.6%
- ・“ナース一人の業務量が多い”が57.9%
であり、このうちの約60%の人が育児をしながら夜勤をこなしています。
また、高齢者の増加や2006年から導入された7対1の入院基本料制度(=入院している患者さん7人に対して看護職員が1人が勤務している状態)により、
看護師は不足しているにも関わらず、需要はますます高まるばかりです。
このように看護師不足が進むと、現場で働く看護師に負担がかかって離職率が高くなり、さらに看護師が不足していくという悪循環に陥ることになります。
※なお、医療者と患者の数のバランスが最も悪くなる年が2040年であることから、
「2040年問題」という言葉が用いられることがあるので、覚えておきましょう。
こうした課題に対し、行政は教育制度の充実や離職者へのアフターフォローなどを継続的に実施しています。
このように長年にわたって続く深刻な問題に対しては、社会全体で問題意識をより深いレベルで共有していかねばならないでしょう。
「マンパワーをいかに補うか」 ~訪問看護師編~
訪問看護業界の課題もまた、看護師と同じく「マンパワーの不足」の一言につきます。
画像出典:kango-roo.com
今後は、24時間体制の訪問看護ステーションの増加(需要増)が見込まれます。
そうした中で、第6回で見たように、
訪問看護師に非常勤の割合が多く、かつ、それを希望する現役訪問看護師の方が多い状況は、近い将来必ずマンパワーという課題にぶつかるはずです。
では、どのように対処すればよいのでしょうか?
ヒントとなるのは、「訪問看護の人材確保・定着に関する調査」です。
当資料では、現在の訪問看護師の職員定着のために必要なことが、現場の意見として記述されています。
すなわち、ステーション常勤では「給与・賃金」が 66.2%と最も多く、次いで「人材育成支援」が 48.3%、「OJT(職場内研修)」が 35.7%となっています。
これ以外に、訪問看護という制度自体の認知度がまだまだ不十分であるとも考えられます。
たとえば上記調査によれば、訪問看護を現在継続している理由として、常勤の 68.1%、非常勤の 63.3%の方が「訪問看護に魅力があるから」と述べています。
つまり、訪問看護の魅力を多くの人に知ってもらうことが、訪問看護全体の人材獲得にもつながるということを意味しているのです。
終わりに ~訪問看護師と看護師は「車の両輪」~
病院が「社会全体」の存立にとって必要なことはいうまでもありません(特に国民皆保険と言われる日本の場合は)。
しかし、その病院に対しては、医療費抑制のため在院日数を短縮化する方向に動き出しています。
そうすると、問題を抱えながら退院を余儀なくされる患者さまが出てしまうのは当たり前のことです。
また、核家族化のために自宅で介護する人材が不足しているケースも今以上に多くなってくるでしょう。
そんなとき、在宅で医療を支える訪問看護という仕事がなければどうなってしまうでしょうか?
このような想像を巡らせると、訪問介護には大きな社会的意義があることは歴然です。
これからの時代は、「病院」だけの「一輪車」で走っていくことは出来ません。
看護と訪問看護、二輪があわさって初めて私たちは健全に前へ進んでいくことが出来るのではないでしょうか?
画像出典:nurselink.jp
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