『在宅医療・ホスピスのイロハ』 ~第2回:在宅医療とは?(1)~

『在宅医療・ホスピスのイロハ』の目次

 

第1回 『在宅医療・ホスピスのイロハ』について

第2回 在宅医療とは?(1)

第3回 在宅医療とは?(2)

第4回 ホスピスとは?

第5回 在宅医療・ホスピスに関する近年の行政の動き(1)

第6回 在宅医療・ホスピスに関する近年の行政の動き(2)

第7回 今後の在宅医療・ホスピス業界の課題

第8回 シリーズまとめ ~在宅医療・ホスピス業界に必要なこと~

 

在宅医療とは?

 

「在宅医療」とは、「計画的な医学管理のもとに定期的に往診すること」です。

もう少し具体化すると、月に2回程度の決められた日に(患者さん宅に)診療に伺うことで、患者さんが住み慣れた家で家族とのつながりを大切にしながら過ごす事を可能とするものです。
(参考:医療法人 かむらクリニック

おおよそこのあたりまでは、一般的な知識として知られていることかと思いますが、その内実についてはそれほど知られていないことかと思います。

そこでこの第2回・第3回では、「在宅医療とは何か」・「在宅医療の歴史」について、在宅医療の全体像を把握することを目的としてご説明します。

※なお、「訪問看護」については、Be Nurseでの別シリーズ『訪問看護師と看護師のイロハ』にて詳細に述べておりますので、そちらをご覧ください。

 

在宅医療イメージ図

図1.在宅医療の全体観

画像出典:www.tsukuba-med.jp

 

現在広く行われている在宅医療は、「訪問診療(定期的な医師訪問)」「24時間対応」で構成されます。

ここでは以下、それぞれについて見ていったのち、在宅医療の関係者についても触れておきたいと思います。

 

「訪問診療」

 

「訪問診療」とは、在宅医が患者に診療期日を予告し、定期的に患者宅の訪問を行う医師のサービスのことです。

具体的には月に2回程度、決められた日に診療を行います。

診療内容はクリニックによって違うようですが、基本的には血圧測定、内科的診察はもちろん、採血、心電図、エコー、褥創(じょくそう)処置などを行うことが出来ます。

また、在宅酸素療法や胃瘻・胃チューブからの経管栄養の方などに対応出来るクリニックもあります。

 

<訪問診療の業務内容典型例>

  • ・痛みなどの苦痛の緩和 薬の処方
  • ・血液検査
  • ・注射や点滴
  • ・酸素療法
  • ・留置カテーテルの交換
  • ・各種診断書など

参考:ホームケアクリニック札幌

 

ちなみに、この「訪問診療」は「往診」とは位置づけが異なります。

以前より行われていた急病に対する「往診」は、定期的に訪問するのではなく、患者の具合が悪いときにその要請にこたえて訪問する医師の行為のことをいうためです。

※なお、「訪問看護の業務」とも異なります。

 

「24時間対応」

 

次に、「24時間対応」についてですが、文字通り、「24時間体制で患者・家族からの連絡を受け、必要な場合は往診や訪問看護を提供する」ことを指します。

「24時間・365日対応」が求められる在宅療養支援診療所(以下、在支診)には、多大なコストを強いることになります。

実際に、2012年の調査では、体制確保が出来ていないことが明らかになりました。

そのような状況から、2012年度の診療報酬改定で「機能強化型在支診」が創設され、複数の医師(医療機関)が協力して”24時間・365日対応”をとることがすすめられるようになりました。

つまり、医療機関1カ所あたりの負担を軽減し、より多くの医療機関の在宅医療への参画を促すことで、看取りや24時間・365日対応の充実を図ろうとされているのです。

[ 参考 ] MEDIVA

 

画像出典:yoko-hama-web.com

 

「在宅医療」の概念の捉え方に関する議論

 

上記2つが在宅医療の柱となるわけですが、ここで、「在宅医療そのもの」に関する大きな議論をご紹介しておきます。

すなわち、在宅医療を積極的に行う医師のなかでも、在宅医療の概念に対する考え方が大きく次の2つに分かれるというものです。

 

  • ①医療従事者の訪問や 24 時間対応などの「医療従事者の行為」を在宅医療の中核部分としてとらえる考え方
  • ②より広く「患者自身が行うセルフケア」までを重視する考え方

 

これらのうち②に関して補足しておくと、例えば医師に相談しながら自分で薬物を使用することや、予防医学的な患者自身の努力や、会員制などのセルフケアグループを主体的に構成することまでが在宅医療の範疇に入ります。

この点、近年は予防医療の推進が行われていることや、医療のデジタル化(遠隔での健康管理)も進展していることに鑑みれば、
後者の考え方(=医療従事者の行為だけではなくセルフケアまでを重視)が主流となっていくでしょう。

 

在宅医療の関係者とは?

 

在宅医療に携わる医療従事者は、医師のみではありません。

国立長寿医療センターの「在宅医療推進会議」では、医師・看護師・歯科医師・薬剤師の連携の中で在宅医療を推進しようという動きがあります。

また、将来的には、臨床放射線技師、理学療法士・作業療法士などが進出する可能性もあるようです。

ゆえに、今後の在宅医療は、多職種連携を核とした「チーム医療システム」として提供されると考えられます。

 

第3回:在宅医療とは?(2)に続く

 

 

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