前回は「アルツハイマー型認知症とは?」ということで
その病状と進行、日本における患者数についてご説明しました。
ざっと前回の復習をすると、
・認知症の1種で、老人斑と神経原線維変化の影響で神経細胞が、効率よく機能しなくなる病気である事
・日本における認知症の6,7割を占めている事
が特徴的でした。
今回はアルツハイマー型認知症の原因と診断方法についてご紹介します。
『アルツハイマー型認知症の基礎知識と訪問看護』の目次
第2回:アルツハイマー型認知症の原因と診断方法
アルツハイマー型認知症の原因
前回も少し触れましたが、アルツハイマー型認知症の原因はまだ完全には解明されていません。
しかし、長い期間をかけて脳の中で生じる、複雑な一連の事象によって発症することが次第に明らかになってきました。
原因としては、遺伝・環境および生活習慣などの複数の因子が絡み合っていると考えられます。
遺伝子構成や生活習慣は人によって様々なため、それぞれの因子が、アルツハイマー型認知症発症の危険性を上下させる上で、どの程度重要な役割を果たすかは人によって異なります。
遺伝子
画像出典:ahchealthenews.com
アルツハイマー型認知症についての研究が進むほど、研究者は、遺伝子がこの病気の発症に重要な役割を果たしているという認識を深めています。
若年性アルツハイマー型認知症は、この病気のまれな型です。
30歳から60歳の人に発症し、アルツハイマー型認知症の人全体に占める割合は5%未満です。
若年性アルツハイマー型認知症のほとんどの症例は家族性であります。
老年性のアルツハイマー型認知症についても遺伝子が因子になっていると考えられています。
多くの研究者がアポリポ蛋白E(APOE)遺伝子と老年性アルツハイマー型認知症の関係に着目しています。
この遺伝子にはいくつかの型があるのですが、そのうちの一つであるAPOE ε4は、アルツハイマー型認知症発症リスクを上昇させると考えられています。
しかしAPOE ε4型を保有していることが、必ずしもアルツハイマー型認知症を発症することを意味するものではなく、
また、APOE ε4を保有しない人でも発症する可能性があります。
多くの専門家は、その他の遺伝子も老年性アルツハイマー型認知症の発症に影響を及ぼす可能性があると考えています。
世界中の科学者がこうした遺伝子を調査しており、APOE ε4の他に、老年性アルツハイマー型認知症のリスクを上昇させる可能性がある多くの一般的な遺伝子が特定されてきている段階にあります。
環境/生活習慣
研究では、基礎的な遺伝子以外にも、多くの因子がアルツハイマー病の発症と進行に影響している可能性も示唆されています。
・炭水化物の過剰摂取
アルツハイマー病は、脳の中に老廃物である「アミロイド班」という物質が溜まることで、脳が萎縮して起こる病気でした。
そのため、原因物質となるアミロイド班を溜めないようにすることで、アルツハイマー病を予防することが可能ではないかという見解が注目されています
アルツハイマー病の原因となるアミロイド班を分解するのはインスリン分解酵素というものです。
この酵素が正常に働けば体内にアミロイド班が溜まることはありません。
しかし、血液中のインスリンが増えすぎるとインスリン分解酵素の働きが低下してアミロイド班が溜まり始めます。
インスリンが増える大きな原因は炭水化物にあります。
炭水化物の重ね食いや、高脂肪な食生活は改めましょう。
また、和食がいい洋食がいいというわけではなく、あくまでも炭水化物が問題ですので、白米とうどんといった炭水化物の組み合わせは良くありません。
・過剰ストレス
画像出典:huffingtonpost.com
ダブリン大学(アイルランド)のチームが2015年に発表した研究報告によると、ストレスがアルツハイマー型認知症発症に大きく関係しているとの事です。
研究者たちによると、人は、プレッシャーやストレスの下にあるとき、副腎皮質と呼ばれるホルモンが放出されます。
このホルモンが、アミロイド班の断片の産生の引き金になるというのです。
実験によりマウスをストレスに晒したところ、脳内にアミロイド班の凝縮を確認し、
それを人間に置き換えて考えると、「過剰ストレスがアルツハイマー型認知症発症の原因に成り得ると考えられる」ということなのです。
アルツハイマー型認知症の診断方法
アルツハイマー型認知症の確定診断は、亡くなった後に、臨床的な症状と脳組織の検査を結びつける剖検によってのみ可能です。
しかし様々な手法や検査によって、記憶障害の患者に対して
「アルツハイマー型認知症の可能性がある(症状が別の原因による可能性もある)」、
あるいは「アルツハイマー型認知症であることがほぼ確実である(症状を出すような他の原因が認められない)」
と、かなり正確に判定することができます。
以下が具体的な判定方法及び項目です
- ・健康状態全般、過去の健康問題、日常活動を行う能力、ならびに行動および人格の変化についての質問 記憶能力、問題解決能力、注意力、計算力および言語能力についての検査
- ・問題を引き起こしている可能性のある他の原因を特定するため:血液や尿の検査など標準的な医学的検査
- ・アルツハイマー型認知症と、可能性のある他の原因とを識別するため:コンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)などの脳スキャン
アルツハイマー型認知症の症状
では、どのような症状からアルツハイマー型認知症と判断するのでしょうか?
アルツハイマー型認知症の経過はすべての人で同じではありませんが、症状は共通の段階を経て現れると考えられています。
ほとんどのアルツハイマー病の人では、最初に症状が現れるのは60歳以降です。
今日では科学者は、症状が認められない早期あるいは発症前の段階、軽度認知障害(MCI)という段階、そしてアルツハイマー型による認知症という3つの病期で進行すると認識しています。
現時点では、MCIの人がアルツハイマー型認知症を発症するかしないかを、医師が確信を持って予測することはできません。
ではアルツハイマー型認知症の経過と症状について詳しく見てみましょう。
軽度
症状には以下のようなものが挙げられます。
- ・迷子になる
- ・お金の取扱いや請求書の支払いに問題が生じる
- ・質問を繰り返す
- ・普通の日常作業をこなすのに時間がかかるようになる
- ・判断力の低下 物をなくしたり、おかしな場所に置き忘れたりする
- ・感情および人格の変化
・多くの場合、この段階でアルツハイマー型認知症と診断されます。
中度
この段階では、言語や論理的思考、感覚処理および意識的な思考を制御する脳の領域に障害が起こります。
よく見られる症状は以下の通りです。
- ・コミュニケーション能力の喪失
- ・体重減少
- ・痙攣発作
- ・皮膚感染症
- ・嚥下困難
- ・うめき声をあげる
- ・睡眠時間の増加
- ・排便・排尿障害
高度
高度のアルツハイマー型認知症の人はコミュニケーションをとることができなくなり、自身の世話を他人に完全に依存するようになります。
最終的には、身体機能の低下に伴い、ほとんどをベッド上で過ごすか寝たきりになる場合があります。
よく見られる症状は以下の通りです。
- ・コミュニケーション能力の喪失
- ・体重減少
- ・痙攣発作
- ・皮膚感染症
- ・嚥下困難
- ・うめき声をあげる
- ・睡眠時間の増加
- ・排便・排尿障害
まとめ
いかがでしたか?
今回はアルツハイマー型認知症の原因と診断方法についてご紹介しました。
- ・現在、原因はまだ完全には解明されていないが、遺伝と環境/生活習慣の因子である可能性があること
- ・現在、生前に確定診断する方法は無いが、(症状に対し)いくつかの手法により他の病気ではないと判断した上での診断を行っている事
が特徴的でした。
さて、次回は最終回。
アルツハイマー型認知症の治療法と訪問看護についてご紹介します。
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