気管カニューレの交換は医療行為に当たるので、原則訪問看護師が行なうことはありませんが、家族などに対し説明や指導を行なうという面でもしっかりと知っておかなければなりません。
家族にしっかりと指導しながら、訪問時にもきっちりと管理ができるように種類、特徴、指導のポイントなどをご紹介させていただきます。
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本記事の目次
気管カニューレとは
自身で呼吸しづらい方に気管切開という処置を行なうことがあります。
気管カニューレは、気管切開を行った後に気道を確保するために使用するものです。
なお、気管切開の目的についてですが、st-mediaによれば、一般的に下記の3つに分けられるようです。
- ①上気道狭窄・閉塞に対する気道確保
- ②下気道分泌物・貯留物の排除
- ③呼吸不全の呼吸管理
気管カニューレの種類とは
気管カニューレは主に下記の2種類に大別されます。
- ①単管(一重管)
- ②複管(二重管)
その中でも「カフ」と呼ばれる気管壁とチューブの隙間を埋め、エアリーク(空気漏れ)を防ぐ為のものがついている物、ついていない物で分類されます。
単管(一重管)
管が1つだけの物です。
複管(二重管)
管が内管と外管の2本になっています。
カフ付きの気管カニューレの特徴
管の先の外側にカフがついています。カフに空気を注入して固定します。
エアリークを防ぎ、換気をスムーズにする役割があります。
膨らんだカフの上部にたまった分泌物などが下気道に流れ込むのを防ぎますが、実際は完全に防ぐころはできません。
また、位置のズレや自然抜管、自然抜管による気管壁の損傷防止ができます。
声を出すことはできません。
カフなしの気管カニューレの特徴
カフ圧の調節がないので、カフ付きよりも危険性は少ないため、自発呼吸を行なうことができる人に使用します。
空気が声帯を通るため、声を出すことができます。
またカフなしの気管カニューレの代表的な物をご紹介させていただきます。
●スピーチカニューレ
側孔(空気孔)があり、声を出すことができます。
嚥下運動に対しての負担が少ないのが特徴です。
●レティナカニューレ
スピーチカニューレよりも短いため、気管壁への刺激が少なく穴をボタンなどで、閉鎖することで声を出すことができます。
長期間、切開部位を開口し保持しておく時に適しています。
痰の少ない方や自力で痰を喀出できる方には便利です。
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気管カニューレの選択方法とは
上記で挙げた気管カニューレの種類に基づいて選択方法を列挙すると、下記のようになります。
- カフありの気管カニューレ:痰が多い、嚥下困難、誤嚥、人工呼吸器装着されている方に使用されます。
- カフなしの気管カニューレ:嚥下機能に障害がなく、誤嚥のリスクが低い場合に使用されます。小児に使用されるケースが多いです。
- 単管(一重管):痰の量が少なく、閉塞のリスクが低い方に使用されます。
- 複管(二重管):痰の量が多く、頻繁に閉塞する場合などに使用されます。
- スピーチカニューレ:嚥下障害がない方に使用されます。発声ができるので、コミュニケーションに支障がありません。
- レティナカニューレ:切開孔の開存を維持する必要がある場合に使用され、使用できる条件としては、病状が安定していること、自力で呼吸ができること、自力で痰が喀出できること、嚥下障害がない、誤嚥がないことです。呼吸訓練、発声訓練及び発声ができます。
気管カニューレの材質とは
非金属製(シリコン製など)と金属製のカニューレがあり、非金属製の気管カニューレが主流です。
金属の気管カニューレは長期間使用する時に使用されるケースが多いです。
非金属製(シリコン製など)のカニューレ
感染のリスクよりもより低いなどの利点があります。
使い捨てが基本ですが、在宅では再利用することもあります。
金属製のカニューレ
劣化しにくい、繰り返し利用することができます。
長期間必要な場合は、経済的な面では利点です。
欠点としては、非金属製のものより硬いため、切開口や気管粘膜への刺激が大きく、消毒薬が限られることとカニューレの種類が少ないことです。
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