「じつは、がんの死亡数が増え続けているのは、先進国では日本だけなのです」
東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一氏は、このような衝撃的事実を打ち明けた上で、次のように続けます。
「欧米では、だいたい毎年5%ずつがん死亡数が減っています。それに比べ、日本では増加が止まりません。1995年の時点では、日本も米国も同程度でしたが、それ以降、差はどんどん開いていっています」
ではなぜ、日本だけ癌の増加がみられるのでしょうか?
「他の先進国と比較して、日本では高齢化のスピードがものすごく速い。それが、がん死が増えている一番大きな要因だと言えるでしょう。日本のがん死亡者数は、団塊の世代が80代後半になる2030~2035年くらいまでは、増加し続けると思います」(出典はこちら)
このような現況や将来予測がある以上、癌を手放しで放っておくわけにはいきません。
また、ホスピスと癌が密接な関係を持つという点は、『在宅医療とホスピスのイロハ』という本サイトのシリーズ記事を見た方にはご承知のことかと思います。
そこで今回、『ホスピスと癌(ガン)の基礎知識』というシリーズを企画しました。
本シリーズでは、癌に関する知識をつけたうえで、ホスピス(緩和ケア)が一体どのように癌と戦おうとしているのかについて明らかにしようと思います。
画像出典:pacifichospice.org
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癌は日本人の死因1位
がんは昭和56年(1981)より日本人の死因の第1位で、その割合は年々増加しています。
また、発見が遅れるほど治る確率は低くなり、早めに治療をしても再発する可能性もある、というやっかいな病気です。
その死因割合はなんと、全体の「30%」にも上ります!!(下図を参照)
画像出典:『平成19年人口動態統計確定数』
なぜ先進国の中で日本だけ癌が増加?
ではなぜ、日本だけに「がん」による死亡の増加がみられるのでしょうか?
理由は様々な説がありますが、中でも最も有力な説としては「高齢化」が挙げられます。
「他の先進国と比較して、日本では高齢化のスピードがものすごく速い。それが、がん死が増えている一番大きな要因だと言えるでしょう。日本のがん死亡者数は、団塊の世代が80代後半になる2030~2035年くらいまでは、増加し続けると思います」(大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座教授・祖父江友孝氏)
「がんは遺伝子の異常が積み重なることで発症します。その異常の多くは、生活習慣に由来する炎症や化学薬剤、放射線など外的要因によるもの。あるいは、新陳代謝で細胞が分裂する際に、ある一定の確率で遺伝子に異常が起こります。つまり、長生きすればするほど遺伝子に異常が起きる可能性が増えるので、がんになる確率も高くなるというわけです」(北海道大学大学院医学研究科探索病理学講座特任准教授・西原広史氏)
このように、高齢化が進む日本では、どうしても癌による死亡の率が高くなることは避けられないのです。
※高齢化に加え、食生活の変化が原因の一つとする説もあります。
画像出典:厚生労働省政策レポート
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