在宅におけるエンゼルケアの特徴~在宅でエンゼルケアを行った患者さん~
最期は自宅で迎えたいMさん
私が経験した在宅でのエンゼルケアの中で、こんな患者さんがおられました。
男性Mさんは、末期の胆嚢がんで入退院を繰り返しておられましたが、最期は自宅で迎えたいという希望が強く、往診可能な医師への依頼や訪問看護サービスとの連携を依頼し、最期に向けての準備をしていました。
Mさんは元自衛官で、棺に入るときは自衛官時代の制服で入りたいと、自分自身で制服を用意されていました。
入院中からも自分自身の病状が難しいということは理解しておられ、生前より家族にも自分自身の最期について相談をされていたそうです。
家族主体の在宅におけるエンゼルケア
家族にとってもMさんの死というものへの悲しみや悲嘆はありましたが、Mさん自身が自分の死について受け入れ、いろいろな準備をしていきました。
その中で家族も少しでもMさんが希望する形で最期を迎えさせてあげたいと、色々と協力をしてくださりました。
私達看護師にも「最期は制服を着せてもらうように準備しているんだ」と言っていたのを覚えています。
病院から自宅へ退院される前日にMさんはご家族に頼んで、自衛官時代の制服を病院に持ってきてもらい、私たち看護師に制服姿を披露してくださいました。
病気により痩せてしまったからズボンは「緩いわ」と言いながら、気丈に振る舞うMさんの態度に強く心を打たれました。
これから死と戦うための制服であるかのようにも見えました。
退院後2週間程の時間が経ち、Mさんがお亡くなりになられたことを担当されていた訪問看護師さんから聞きました。
家族に見守られながら、自衛官時代の制服を枕元に準備し、最期は非常に穏やかな表情で逝かれたとのことでした。
そして最期に立ち会った家族全員で、Mさんの意向、家族の意向に沿った家族主体の、最高の「エンゼルケア」をしたということも報告してもらいました。
涙の中にも時に思い出話しで笑顔がみられるなど、Mさんにとって最高の最期だったのではないでしょうか。
画像出典:vnaohio.org
エンゼルケアとグリーフケア
死に対しての悲しみや悲嘆を乗り越え、日常生活に復帰、適応されるケアとしてグリーフケアが最近注目されていますが、グリーフケアとは突然の死を除き、患者さんが亡くなった時から始まるのではないでしょうか。
Mさんの家族も、Mさんの死に対しての悲しみや悲嘆はあったはずです。
しかし生前よりMさん自身が自分の死と向き合い、準備をしていく中で、家族も一緒に死と向き合い、悲しみを少しでも乗り越えることができるきっかけになったのではないでしょうか。
グリーフケアと同時にエンゼルケアも同じくらい大事なものだと私は思います。
いずれ訪れる死に対してどのように向き合うことが大切なのか、色々と考える機会をいただいた経験でした。
在宅におけるエンゼルケアの方法と体験談 まとめ
在宅でのエンゼルケアは、家族や遺族に対してのグリーフケアにつながるといわれています。
様々な死の形、また患者さんや家族の意向がある中で、私達看護師は、どのように最期の形を整えることが良いのか、しっかりと意向を確認し、その意向を尊重することが大切です。
最近では葬祭業者のサービスの拡大などに伴い、葬祭業者によるエンゼルケアも素晴らしく変化してきています。
家族の意向により、葬祭業者によるエンゼルケアを選ぶ方も増えてきています。
看護師にとってのエンゼルケアは患者さんに対しての最後の看護であるといえますが、時代が変化するにつれて、その役割も変化しているかもしれません。
しかし、どのように時代が変わっても、患者さんの最後にふさわしい状態に整えるというエンゼルケアの目的や意味は変わりません。
在宅にて最期を迎えたいという患者さんの希望を叶えることができるのであれば、在宅で行われるエンゼルケアは、患者さんにとっても、家族にとっても素晴らしいものになるのではないでしょうか。
この記事はいかがでしたか? ・週一回なら、まぁ見てもいいかな♪ といった方は是非ご登録をお願いします!!
下記リンクからの無料会員登録で、 メルマガ受け取り@毎週土曜日 診療報酬改定まとめ資料受け取り などが可能になります!! (もちろん、わずらわしい情報は一切お送りしませんよ♪)
|
☆関連お役立ち情報☆ |
・知っておくべき(最近の)エンゼルケアのポイント〜エバーミングという新たな考えが広まってきています〜 |
☆おすすめのまとめ記事☆ |
・【看護師スキルアップ術まとめ20選】3種の看護スキルでQOLを最大化! |
★ここまでで分からない用語はありませんでしたか? そんな方は・・・
関連する記事
家族のコミュニケーションを支える言語聴覚士(ST)が在宅で果たすべき役割とは?
総合病院で『言語聴覚士(ST)』と働いた経験がある人もいるかもしれませんが、在宅の現場では、まだまだ会う機会が少ない職種なのかもしれません。いったい訪問リハビリテーションで働く「言語聴覚士(ST)」は、どのような仕事をしているのでしょうか。今回はそんな言語聴覚士の仕事内容と在宅での役割を見ていきます。
「何でも屋」とも呼ばれる作業療法士(OT)が在宅で果たすべき役割とは?
需要の多い作業療法士ですが、どんな仕事をしている人たちなのかイメージできますか?作業療法士(OT)自体は、病院や施設の多くに在籍している職種の1つのです。訪問リハビリテーションの現場でも理学療法士(PT)と同様に採用募集がかけられています。今回はこの作業療法士が現場でどのような役割を担っているのか見ていきます。
理学療法士(PT)が在宅で果たすべき役割とは?
理学療法士は、病院やスポーツの世界で活躍しているに関わらず、なかなか何をしているのかわかりにくく、「リハビリの先生」とまとめてしまってはいませんか?在宅では看護師と密接に連携することもある理学療法士。今回は理学療法士がどのような役割を担っているのか確認してみましょう。
訪問リハビリと通所リハビリの違いとは〜個人で行う訪問リハビリVS集団で行う通所リハビリ〜
入院し治療などを経由した後、在宅生活への環境が整えば在宅に戻ることになりますが、適切なリハビリサービスを導入することで再入院リスクを最小限に抑えることも必要な視点となります。ここでは在宅サービスの中でも、訪問リハビリと通所リハビリの役割をそれぞれ確認していこうと思います。
介護保険の対象者、受けることができる具体的なサービスについてまとめました♪
介護保険という保険制度を聞いたことはあるけど、その内容を詳しく知らないという人は多いかと思います。前半は介護保険とその対象者について解説し、後半には介護保険で受けられる具体的なサービス内容についてお伝えしたいと思います。