「人を育てる」という仕事

宮澤 悠維 Yui Miyazawa
宮澤悠維教育研究所 代表

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1984年、長野県松本市生まれ。京都教育大学大学院修了。修了論文のテーマは「学級崩壊の予防・回復に関する一考察」。京都市で6年間、長野県で4年間、計10年間小学校教師として教壇に立つ(10年間不登校児童0名、学級崩壊立て直し多数あり、学校評価アンケートでは学級満足度が毎年9割ごえ)。2020年3月退職。同年4月宮澤悠維教育研究所開業。現在は学級経営コンサルティング、オンライン家庭教師、フリーランスティーチャー等幅広く活動中。学級経営のノウハウを発信しているyoutubeチャンネルは開設から10か月で登録者が3000人超え。より良い教育の研究・普及に日夜明け暮れている。

 

「人を育てる」という仕事

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◆ 人材育成
人材育成について頭を悩ませている人が大勢います。
「もっと主体的に動いてくれよ!」
「もっと相手目線をもってくれよ!」
なんて、ついつい思ってしまいますよね。
この人材育成における悩みの最たる例は、「学級崩壊」ではないかと私は考えています。

担任と子ども関係性が破綻している
子ども同士の関係性が破綻している
「人を育てる」という機能が失われてい

 

この学級崩壊から子どもたちが立ち直っていく姿にこそ、私は人材育成のなんたるかが隠れている気がしてならないのです。

この記事では、
 これまであまり世に出ることのなかった学級崩壊様子
✓ 子どもたちが次第に自信を取り戻していく様子
 一つのチームになろうとする様子
の、ほんの一端をお伝したいと思います(本当に少しです)。

皆さんの「人材育成」に関する悩みの解決へのヒントになれば幸いです。

 

 

◆ 空・雨・傘

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私が学級再生のために使った(正確に言えば使わざるを得なかった)ものが
「空・雨・傘」の思考法です。
これはビジネスフレームワーク(発想、分析を行うための思考法)の一つです。

 

皆さんは出かける時、無意識に空を見上げています。
晴れていればそのまま出かけ、黒い雲が見えれば傘を持っていくはずです。
空という「事実」を確認し、
雨が降るかもしれないと「解釈」し、
傘を持つという【判断】を下している
のですね。

この「事実・解釈・判断」のうち、どれか一つでも抜けてしまうとおかしなことになってしまいます。

しかし、このビジネスの思考法と学級崩壊に一体何の関係があるのでしょうか。
早速その説明をさせていただきたいのですが、その前に、少しだけ、私の昔話にお付き合いください。

 

 

◆ 学級崩壊
5名ほどの小学生がサッカーに熱中している。
「ヘイ!」
「パス!」
「ナイスシュート!」

…汗だくの顔からは自然と笑みがこぼれ、元気な声が校舎に響いている。
子ども達が嬉々としてサッカーをするこの場所にはサッカーボールは無い。
サッカーゴールも無い。
あるのはぐしゃぐしゃに丸められ、ボールに見立てられた「テスト」。
そして、サッカーゴールに見立てられた「黒板」である。

 

ちなみに今は算数の授業中。内容は単元のまとめの「テスト」である。
サッカー(と呼んでいいのか不明だが)に汗を流す子どもたちをよそに、黙々とテストを続ける子どもたちが20名ほどいる。
担任はサッカー(?)を楽しむ子どもたちの周りをおろおろと歩き回り、申し訳程度に声をかけ、そして、自分の所定の椅子に腰かけ、やがて宿題の丸付けをはじめた。

 

数か月後、この学級の担任は職場を去った。
そしてこの翌年、私はこの学級の担任になることを命じられた。

 

 

◆ 「黄金の三日間」が通じない
小学校には【黄金の三日間】という言葉がある。
「新年度の最初の三日間は極めて重要であり、ここで基本的なルール等を子ども達と共有することで一年間の学級経営を円滑に行えるようになる」という意味を込めて、教師の間ではそのように呼ばれている。
事実、私も「黄金の三日間」を大切にしてきた教師の一人だった。

この年もまずは「相手の話をきちんと聞くこと」の重要性を教えようとした。これができない学級は不安定になる。逆に、これさえできれば大崩れはしない。経験上、私はそれを知っていた。
学級開き初日。
私は黒板の前に立ち、元気はつらつに「宮澤悠維(みやざわゆうい)です!よろしくお願いします!」と言い、深くお辞儀をした。
顔を上げて子どもの反応を見た。
しかし子どもの誰とも目が合わなかった。
手遊びをしている子、前の壁だけを見つめている子、頬杖をついて窓の外を眺めている子…。
皆表情がなく、どれも同じ能面のような顔に見えた。
背筋がゾクッとするのを感じた。

 

 

◆ 空に雲がないのに、傘を持っていた
「毎年同じような学級開きをしているのに、どうして誰も目を合わせてくれなかったのだろう。」
私はそう思うと同時に、ハッとしました。

「毎年同じような学級開きをしているのに…」
全ての答えはこの言葉に隠れていました。

子どもは毎年変わるものです。
それなのに、私は毎年同じような手法で学級をまとめあげようとしていました。

これは事実を見つめることなく、対応策を講じようとする愚かな指導方法でした。
まさに「空に雲があるかないかを確かめず、傘を持ち歩いている」のと同じことでした。

 

 

◆ 「見る」のではなく「診る」

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私は当初思い描いていた「崩壊学級立て直し計画」を大幅に修正することにしました。

新しいルールを作り、学級を意のままに変えていくのではなく、まずは子どもたちの様子を徹底的に見ていくことにしました。

それは医者が初診の患者を丁寧に診るのと似ているかもしれません。視界にいれるだけではなく、どこが良くてどこが悪いのか、きちんと見極めるのです。

 

つまり、「見る」のではなく、「診る」ことにしたのです。

 

ひと月が経った頃、子どもたちの様子に変化が表れ始めました。
誰一人目が合わなかったあの子どもたちと、楽しく会話ができるようになりました。
友だち同士の会話も少しずつ増えてきました。
テスト中にサッカーをする子もいなくなりました。

その上で、この学級をより安心して学習ができる場に高めていく必要性も強く感じていました。
患者を診て終わりの医者はいません。悪いところを見つけたら治療を行います。
担任も同様です。

 

いよいよ「崩壊学級立て直し計画」が本格的に動きはじめるわけですが…、随分たくさん文章を書いてしまいましたので、本日はこのぐらいにしておきましょう。

 

 

◆ まとめ
人材育成とはこちらの望む通りに、一方的に対象の技能を向上させ、量産することではない。
まずは相手が何に喜び、怒り、悲しみを感じているのかを理解することが大前提である。
相手への理解の放棄は、「空に浮かぶ雲を見ずに、雨が降るかどうかも考えずに、傘を持ち歩くこと」と同義である。

 

 

◆ 宣伝を少し…
私は現在youtubeで「より良い学級の作り方」についての動画を毎日配信しています。学校関係者以外の方も、人材育成について幅広く転用できる内容になっています。ご興味が湧いた方は、よければチャンネルに遊びにいらしてください。お待ちしております。

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