「人生100年時代、しあわせに生き抜くには⁉️」

佐塚 玲子 Reiko Satsuka

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特定非営利活動法人よこはま地域福祉研究センター センター長  1960年生 60歳

慶応義塾大学卒 神奈川県立福祉保健大学大学院修了 

神奈川県社会福祉審議会委員、神奈川県地域福祉支援計画評価・推進等委員

神奈川県立福祉保健大学実践教育センター講師、相模女子大学社会マネジメント学科・YMCA学院専門学校講師

 

 

福祉とは「しあわせ」

私が所属する、特定非営利活動法人よこはま地域福祉研究センターは、法人名が長くて、設立から10年経っても電話口で相変わらず、自分の社名を噛む職員もいるのですが、ビジョンも、ちょっと長い。

 

「しあわせ(福祉)の実現のために、誰もが可能性を追求してやまない、柔らかな心と勇気に溢れる社会」

 

設立から2年ほど経って、理事・職員に諮り決定しました。

こだわりは、「福祉」の意味を「しあわせ」と捉え、かつ、「しあわせ」を、完成された何らかのカタチではなく、変化し続け、様々な課題に溢れている社会においても、「しあわせ」を追求しようとする、主体的で前向きな人や組織が生き生きと暮らしを営む、状態を生み出すことにしたことです。

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◆ 「しあわせ」って何?幸せ感をもって生きるためには?

今年は年の初めから世界中で新型コロナ感染症が拡大し、経済活動の停滞、医療崩壊、教育の一層の格差など、あっという間に、私たちの日常に不安と困難が押し寄せました。

 

普段、考えることがなかった、社会のこと、人生のこと、「幸せ」ってなんだろう、「幸せに生きる」ってどうしたらいいの?など想いを馳せることはありませんか?

 

ご存知のように、コロナ発生以前から、私たちの国は超高齢少子化、格差社会等々、次世代にまでも影響する重い課題を抱えており、これからの社会を、皆が幸せに生きることのできる社会にするには、どうしたら良いのか、社会全体で考えなければならなくなっていました。

 

そのためには、私たちが置かれている社会の今を、世界の今を正しく認識することに努め、そのうえで今に押しつぶされることなく、未来に希望と可能性を持って、私たちひとり一人が、「しあわせ」とは何かを、問い直す必要があるでしょう。

 

しかし、そうは言っても、そもそも「幸せ」とは、どんな状態をいうのでしょう。

「幸せ」は、心身の健康という医学的な観点と、気持ちよく、前向きな気持ちという感情的な観点がありますが、気持ちよく、前向きな状態であるには、生きがいを持っているとか社会に貢献しているなどの有無も影響します。幸福度を調べる調査では、社会的地位が高いとか、大金を持っているなどの状態より、人との共感的な関係を持つとか、目標を持って努力しているなどの状態の方が、持続的な幸せにつながるという分析結果があるようです。こうして観ると、人はついつい、他者との比較によって物を考えがちで、お金や地域、能力などが気になるし、これらを求める気持ちは誰にもあるものですが、真の「しあわせ」とは、比較できるものではなく、自分自身の考え方・行動の積み重ねの中で、体感するものでありそうなことがわかってきます。

 

とするならば、この困難な時代、真の「しあわせ」を見出すために、私たちが、どう考え、行動するかによって「しあわせ」を掴むことができるか否かがかかってきます。

 

 

◆ 高齢期の本番は75歳から!後期高齢者の不安・心配ごと5K1S

かつて、私は、高齢者施設で仕事をしていました。当時を想いおこすと、介護職や相談員だった頃、出会う高齢者の方々は、「不安や困難」を取り除きたいという想いが強くて、「しあわせ」を願う余裕がある人は少なかったなあと思います。

 

多くの高齢要援助の方々が有する6つの心配ごとを「5K1S」として、その有無や支援の方法を考えました。5K1Sとは、「健康」「経済」「介護」「家族」「孤立」1Sは「住まい」。

 

中でも最も願い、失いそうな時、取り戻したいと願うのは「健康」。日本では、65歳以上の方を高齢者と呼んでいますが、65歳~74歳の前期高齢者は、世界で最も元気と言っていいくらい健康で活発な生活をしています。しかしながら、問題は、75歳以上の後期高齢者になってから。人生100年時代、私たちは、75歳からの心身の健康が重要課題なのです。

 

そして、不安要素として、「健康」を抜く勢いで高まる心配は「経済(お金)」のこと。退職金と年金で悠々自適・・などと言われたのは過去の話?暮らしの家計を年金のみに頼る人の高齢人口は全体の6割。生活が苦しいと感じる高齢世帯も5割を超えています。100歳まで長生きすることが珍しくない時代、健康・経済、等の老後リスクが一層高まっていると思います。

 

「介護」については、介護が必要になって大慌てのご本人・家族が多かった。元気な時にあれこれ考えても気が滅入るし、考えたくないって感じだったのでしょう。しかし、「介護」は、される方にとってもする方にとっても簡単ではありません。高齢者一人暮らし、高齢夫婦のみ世帯は激増し、老老介護や認知症の家族が認知症の家族を介護する認認介護も増えつつあります。また、かつては、家族介護者は、妻や嫁、長女など、ほとんどが女性でしたが、近年は、夫、息子など男性介護者も増えています。更に、晩婚・晩産化が進み、介護と育児の両方を行うダブルケアラーや、離婚の増加等と共に、一人親世帯での子どもの介護者、ヤングケアラーの出現など、新たな課題も増加しています。いつ突然やってくるかもしれない介護について備えが必要になっていると思います。

 

更に「家族」に関しても年々、不安が高まっていると感じます。高齢者になれば、子世代の見守りを支えにと思いたいところですが、現代は子世代にも様々な課題が生じています。経済が低迷する中、世帯所得は減少傾向で、子育て世帯のほとんどが共働きです。また、不登校やひきこもりなど、成人となっても自立できない子世代がいます。また、生涯未婚率も男性は30%、女性も20%に及び、離婚率も3割の時代です。頼りにしたい子世代を頼れず、高齢になっても子を心配する親世代の高齢者。このことは、介護や経済、健康にもつながる不安になっていきます。

 

更に、「孤立」について。高齢期の本番は75歳から。それまで、アクテイブにくらしていた方も、徐々に活動が鈍ってくる。また、配偶者に先立たれたり、親しかった同世代の親戚や友人が亡くなったり、いつの間にか、自分のことを知ってくれている気のおけない馴染みの場所が無くなったなど、急に孤立感を持つようになり、何日も誰かと話をしていない・・などのことが起こりやすくなってきます。

 

そして「住まい」。子育て期に住み始めた家は、住みよい家でしょうか。買い物や通院に便利で、家事をしたり入浴やトイレなど多少の体の衰えや不自由があっても暮らしの継続ができる家でしょうか。自立した生活ができる家は、安心や自信を保つだけでなく、お金や気兼ねのいるサービスを使うことを少し減らすことができる家計にも優しい住まいです。誰と、どんな家で、どんな暮らしを続ける。そういう備えが必要だと思います。

 

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 世界の先端をいく人生100年時代の「しあわせ考」

日本では、65歳以上を高齢者としていますが、前に紹介したように、日本の前期高齢者である65歳~74歳の高齢者は、世界でも非常に元気な高齢者です。健康教育、保健・医療が発達する私たちの国では、この年代の方々はとてもアクテイブで要介護認定を受ける方も非常に少ないのです。ところが、前項でしめしたように後期高齢者になると事情は変わってくるのが、私たちの国の高齢者介護事情です。

 

しかし、このままでは、人生最終段階の後期高齢時代、夢や希望は持てませんよね。

平成30年の高齢社会白書をご存知ですか?

 

人生100年時代を捉えた、高齢期の生き方が表されています。一億総活躍社会や働き方改革の中に高齢者も存在します。エイジレスに働くことや資産形成の支援もこれからの高齢者に必要とされています。

 

1)就業・所得 2)健康福祉 3)学習・社会参加 4)生活環境 5)研究開発・国際社会への貢献 6)すべての世代の活躍推進等 あらゆる面で、これからの高齢者が社会とつながりを持って生きるための要素が表されています。

 

私たちは、ついつい、高齢者になってまで、エイジレスに働くの?などと、考えてしまうこともあるかもしれません。でも、働くことは、何も収入を得るために雇用されて働くだけではありません。

 

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自分を成長させるために、情報を得たり、学びを得るために働くこともあるかもしれません。誰かの役に立てるよう働くこともあるでしょう。いずれにしろ、地域社会との接点を持っていることが大切です。超高齢化社会に、高齢者も社会とつながり、人とつながり、生きがいがあって、社会に貢献する、「しあわせ」を掴めるかもしれません。

 

身心が衰えて、介護が必要になったときに、慌てて、行政や福祉事業所に駆け込むのではなく、少なくとも前期高齢者のうちに、人生最後の時代をできるだけ不安や心配を少なくし「しあわせ」のために、様々な情報を得て、自分らしい豊かな老後を見つけましょう。

 

     高齢者の「しあわせ」のカギは!

      5K1Sへの備え

      人とのつながり・地域社会とのつながり

      自分ならではの生きがいの追求

 

 

◆ 新しい時代の生き方を探る

今回は、人生100年時代の高齢者の幸せをテーマに書かせて頂きました。

 

よこはま地域福祉研究センターは、高齢者だけではなく、子どもや障害のある人、誰の幸せも考え、実現にむけて取り組んでいます。その中で、改めて、現代は、より良い生き方を示唆するロールモデルなど無い時代なんだなあと改めて思います。かつての社会が、下図のように3つのステージで構成された人生だとすれば、確かに、違いますよね。学校を卒業したら、生涯、同じ会社に勤め続ける人は少なくなっているし、IT化など時代の変化と共になくなる職業もあり、まったく違う分野に転職する人も少なくないはずです。そうなると、高齢者ばかりではなく、若い人たちも、複数のステージを転々とする「マルチステージ」を生きることにもなっています。

 

   ロールモデルなき人生100年の人生戦略!

  これまでの「仕事ステージ」が「マルチステージ」への変化が求められる

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  マルチステージ=複数のステージを転々とする

職業の新陳代謝 ・ AIの台頭 ・ 終身雇用の崩壊 ・ 年金減少の中で

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  マルチステージを生きるには、「無形の資産」が必要!

   ■  生産性資産(能力)

    スキルや知識・仲間や周囲からの評判など仕事の成功に役立つ要素

   ■ 活力資産(健康)

    バランスの取れた生活・家族との関係など、身体的・精神的な健康

   ■ 変身資産(ネットワーク)

    人生の家庭で変化を促す、多様性に富んだ人的ネットワーク

参考文献:「LIFE SHIFT  100年時代の人生戦略」リンダ・グラットン

 

マルチステージを生き抜くためには、「無形の資産」が必要とも言われています。生産性資産(能力)・活力資産(健康)・変身資産(ネットワーク)です。

 

どうでしょう。幸せとは何か?を考えたときの考えたときの要素と似ていますね。なかなか大変ですが、仕事の中で、これを極自然体でされている方に出会うことが度々あります。

 

 

Aさん(74歳)は、公民の施設が多く植木屋さんの需要が多い地域で代々植木屋さんをしている家に生まれましたが、そうした施設が縮小されたことをきっかけに30代で転職して公務員になり定年まで勤めました。60歳から、生まれた時から住み続ける町の町内会長を務めることになりました。まちのひとからは「〇〇ちゃん」と呼ばれ親しまれる人柄です。Aさんが子どもの頃は、同業者も多く職住が同じ地域にあったから自然に皆が助け合ったけど、今は様々な人が暮らしています。高齢化が進み、困りごとのある人も増えていますが、なんとか町の人が助け合って暮らし続ける町であるようにと、地域の福祉施設とも一緒に取り組みます。Aさんは言います。専門家じゃない僕ができるのは、町の人の顔を知っていて、会ったら声をかけあえる関係のある町にすること。世代が違う人もみんなで集まれるような行事が大切だし、そこに来られない人を尋ねて声をかけることも大事。おたがいさまってみんなが思える地域になるといいと思っている。自分もいつ、お世話になるかもわからないからね。Aさんは笑顔で話されます。

 

 

Bさん(81歳)は、30年以上エンジニアとして会社勤めして、定年退職後、NPO法人のシステム管理のボランティアを行っています。経営の厳しいNPO法人にとってBさんの存在は本当にありがたく、頼りにされています。そんなBさん、5年ほど前から、2人で暮らしている奥様が、要介護になってしまいました。Bさんに介護情報を伝えたのは、ボランティアをしているNPOの職員です。Bさんや奥様のニーズをよく聴き、安心なサービスが提供されています。Bさんは話します。こんな風に助け合えることがあるなんて思っていなかった。本当にありがたいと。要介護にはなりましたが、奥さんとBさんの穏やかな生活が続いています。

 

如何でしょう?

ここまで読んでくださってありがとうございます。

 

みんなで創る、新しい時代の高齢者の生き方。

不安や困難を気にするだけではなく、私たち、ひとり一人なりの「しあわせ」を探していきましょう

 

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「人を育てる」という仕事

10年間不登校児童0名、数々の学級崩壊を立て直しされた元学校教師で、YouTuberの 宮澤 悠維 先生に「人材育成」をテーマに、シリーズでコラムを執筆いただくことになりました。 子どもの教育と社会人の教育は相通じるところがあり、宮澤先生の教育理論は、組織マネジメントにも活かせます。