2030年の「看取り難民」問題、その本質とは?(2)


 

前回は、「看取りの定義」と、一般的に流布している「看取り難民問題」の概要と対策についてお話しました。

しかし、「看取り」の定義があいまいなまま対策を打ったところで、現実性や具体性に欠けた議論が進んでいるのではないかという結論に至りました。

そこで今回は、「無益な延命治療をせずに、自然の過程で死にゆく高齢者を見守るケアをすること」という看取りの定義に基づき、看取りに関連する具体的課題とをご紹介し、まとめに入りたいと思います。

 

3. 「看取り」に関連する具体的課題

 

第一回でご紹介しましたが、箕岡氏によれば、「看取り」という言葉は「ソフト」に使われていますが、実のところは「医学的・倫理的・法的問題が内在」する可能性があります。

そうした課題を考えるうえで重要になるのはやはり「看取り」の定義。

もう一度お示ししておきます。

 

無益な延命治療をせずに、自然の過程で死にゆく高齢者を見守るケアをすること

 

こちらの定義に基づいて、解決すべき課題を考えていきましょう!
※以下、既述の箕岡氏の論考を参考・引用しています。

 

<「看取り」に関わる行政的課題>

 

  • ①告知の有無、告知の方法
  • ②医療者・看護師・介護の関係性
  • ③ 「人工的水分栄養補給」の捉え方

 

「無益な延命治療」かどうかは、医学的な判断はさることながら、法的な問題も関わってきます。

また、医学的な判断を支える行為として、「予想される今後の病気の経過・予後の共通の理解、治療法の選択肢とそれぞれのメリット・デメリット、さらには、治療の無益性などについてのコミュニケーション」を取ることが必要になってきます。
これらに関し、制度的に整備する必要が出てくるでしょう。*

なお、③は、「経管栄養は医療なのか、食事なのか」という問題のことです。
こちらに関しては、「日本においては、認知症終末期における経管栄養に関する客観的な医学的エビデンスが不十分である」ということが指摘されているため、データを十分に収集したうえで、研究を進めていくことが肝要でしょう。

 

看取り、経管栄養

画像出典:kevinmd.com

 

* 現在病院勤務の方々が、在宅での看取りを考えている患者さんやそのご家族の方と行う情報交換は、コミュニケーションや人間関係づくりの上で、非常に重要かと思います。
その点、「どのクリニックであれば、在宅の看取りが可能か」を探すことができる参考サイトをお教えするのは有益ではないでしょうか。
例えば、「看取りコム」というサイトは、在宅での看取りまできちんと支援されている在宅療養支援クリニックを探せるよう、全国2600軒を超えるクリニックの在宅看取り数や緊急往診数が確認できる日本で唯一のサイトです。

 

<「看取り」に関わる社会的課題>

 

  • ①「死」の概念の捉え方
  • ②治療 の無益性

 

①:「延命治療」をしないことを「自然の過程」ととらえられるかどうかは、ひとえにご本人の主観によります。
従って、「死」ということをどのように捉えるのか、という社会的な背景を考えることが重要になります。

②:認知症などを含めた、高齢者の慢性疾患における緩和ケアは大変重要であるにも関わらず、ガンの緩和ケアとは違って、その重要性の認識はまだ十分ではないという課題があります。
この点箕岡氏は、“Cure sometimes, comfort always.”というスローガンは大変重要であると述べています。
これは、「無益な延命治療をやめても、必要な治療や快適ケア(comfortcare)は実施されるべきことを意味」していますが、まさに「高齢者を見守るケア」に結びつく考え方と言えるでしょう。

 

<「看取り」に関わる本人に関する課題>

 

  • ①インフォームド・コンセント
  • ②死を受け入れる心の準備
  • ③感情的な不安定性
  • ④家族に迷惑をかけたくないという配慮
  • ⑤「事前指示」が普及していない

 

インフォームド・コンセントが不十分であれば、本人は自分が人生の最期にいて、残された時間が限られているということを知らされていないことになり、「無益な延命治療」かどうかの判断が歪んでしまいます。

また、本人の精神的な問題で「死」への過剰な忌避感を持ってしまうと、治療目標の変更ができず、「無益な延命治療」を望むという事態に繋がります。
そうした場合、不安・焦燥があるため、感情的に安定しなくなり、その結果「平穏な終末期」を過ごすことができなくなります。

 

看取り、インフォームド・コンセント

画像出典:medpagetoday.com

 

また、「事前指示」が普及していないという点ですが、こちらは少しご説明を加えます。

「事前指示」とは、単に死の過程を長引かせるだけの延命治療をやめて自然の死を迎えたいと考えている方」の願いを予め書面に残しておき、いざというとき(自分で意思表明ができない時など)自分の意志として尊重してもらうための書面のことです。

欧米ではかなり一般に使用され始めており「四つのお願い」からなります。*

 

  • 1番目は、「あなたに代わって、あなたの医療やケアに関する判断・決定をしてほしい人」
  • 2番目は、「あなたが望む医療処置・望まない医療処置について」
  • 3番目は、「あなたの残された人生を快適に過ごし、充実したものにするためには、どのようにしてほしいか」
  • 4番目は、「あなたの大切な人々に伝えたいこと」

 

こちらの事前指示(書)が普及していないことが、最期の生き方を自分で決めること、すなわち「自然の過程での死」を阻害する原因の一つと考えることができるでしょう。

 

* 健康豆知識

 

看取り、事前指示

画像出典:メドピア株式会社プレスリリース

 

 

<「看取り」に関わる家族に関する課題>

 

  • ①インフォームド・コンセント
  • ②家族の心理的な揺れ動き
  • ③家庭における療養環境の不備
  • ④家族の介護力不足
  • ⑤本人と家族の意見の不一致
  • ⑥「代理判断」の問題

 

③:日本における問題は、狭い家が多く、個別の病室を作ることができないといった点にあります。
そのため、患者は家族の迷惑になるのではないかと遠慮に結びつきます。

④:いわゆる「老老介護」の問題が指摘されているとともに、「家族の介護力に依存し過ぎている」点も喫緊の課題といえます。
この点は、訪問看護師やケアマネジャーの供給面を引き上げ、地域コミュニティの中で看護や介護の知識レベルを引き上げていくことが重要になることかと思います。

⑥:誰が最も適切な代理判断者なのか、どのようにして事前指示や本人の価値観を尊重するかという問題です。
「家族」とはどこまでの範囲なのかが、日本においてははっきりしておらず、慣習として法的根拠なく決定することになっていると指摘されています。
本人の判断を最大限に尊重するカタチを、あらかじめ考えておくことが非常に重要になります。*

 

 

以上が、適切な看取りを阻害する要因です。

 

* こちらは実際にお看取りをされた家族のインタビュー記事です。ぜひご参考にしてください!

「自然に行き着く先としての在宅看取り」(看取りコム)
「父親の脳梗塞をきっかけに、介護を経て両親のお看取りへ」(看取りコム)

 

 

4.まとめ

 

以上、「看取り」に関連する課題を、箕岡氏の定義に基づいて考察してきました。

そこで、記事タイトルにある、看取りに関する課題の「本質」についての本記事なりの結論を出すとすれば、

月並みではありますが、「自分や周りの人の『死』と向き合えていない」ということではないかと思います。

 

つまり、「よりよい看取り」を拡充していくには、まずは「(自分や家族が死を迎えるときに)どういうカタチがいいんだろう」ということを考えたり、「穏やかな死を迎えたい/迎えてほしい」と思うことが必要です。

その結果として、最期を迎えたい場所が「病院」であれ「在宅」であれ、医療従事者だけではなく本人や家族間での真摯な連携が図れるものと思います。

 

しかし、「向き合えていない」からこそ、「看取り」の定義があいまいなまま、ある種「机上の空論」が展開されているのではないでしょうか。

現状としては、「医療費抑制」が「鶴の一声」の如く叫ばれ、「なんだかよく分からないけど・・・」といった状態で制度作りが先行している状態なのかもしれません。

 

ただし!

近年ではこうした「意識的」な課題に関し、徐々にですが、考える兆しも見えてきているようです。

その一例が、「終活」という言葉で、たとえば「エンディングノート」(死に備えて自身の希望を書き留めておくノート)をつける人も増えてきているよう。
また、そうした「最期」を迎えるにあたってどういう情報を得ればよいかという情報発信をしているメディアも増えてきているようです。

たとえば、「セラヴィ」というwebサイトは、本記事で取り上げた「看取り」のほか、

お葬式など「終活」に関する情報提供をすることで、自分の最期の時をどう過ごすか/どう準備するかについて考えるきっかけ作りを行っています。

 

そうした意味で、ビーナースも(主に看護師さん向けではありますが)、「よりよいケア」を行っていくためのきっかけ作りに励んでいきます。

 

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