ビーナースでは、2016年度(平成28年度)の診療報酬改定項目、
特に「在宅医療・看護領域」に関わる項目を順に解説・整理しております!
今回は、中でも「緩和ケア」に係る診療報酬改定項目をまとめてご案内いたします!
※公式の政府資料は<こちら>
画像出典:aptusbilling.com
本記事の目次
緩和ケアに関する診療報酬改定:全部で「5項目」!
1. 地域がん診療病院・小児がん拠点病院の評価
2. がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実
3. 緩和ケア病棟における在宅療養支援の充実
4. がん性疼痛緩和指導管理料の見直し
5. 外来化学療法加算の評価の見直し
これらの改定項目は、すべて
「緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価について 」
という趣旨で行われています。
「緩和ケア」について
本記事ではまず「緩和ケア」について簡単にご説明します。
※参考記事(ビーナース):「ホスピスとは?」
緩和ケアとは?
厚生労働省のHPでは、緩和ケアは下記のような説明がなされています。
がん患者とその家族が、可能な限り質の高い治療・療養生活を送れるように、身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助が、終末期だけでなく、がんと診断された時からがん治療と同時に行われること
がん患者は、さまざまな苦痛と向き合わねばなりません。
そうした「さまざまな苦痛」は「Total Pain」と呼ばれ、「Total Pain」と向き合うのが、緩和ケアになります。
緩和ケアについてわかりやすく図示したものが下図になります。
日本の緩和ケアの提供体制
では、実際に日本ではどういった緩和ケアの提供体制が整備されているのでしょうか。
ここでは、海外との比較がなされた資料をご紹介します。
このように、海外と比べた時、緩和ケアが日本に根付いていないことがよくわかります。
もちろん、海外と比較して遅れているからといって、それが悪いこととは限りませんが、参考にはすべきでしょう。
それでは、以下緩和ケアに係る診療報酬改定5項目を見ていきましょう!
緩和ケアに関する診療報酬改定1:「地域がん診療病院・小児がん拠点病院の評価」とは?
「地域がん診療病院」について
「地域がん診療病院」とは、「拠点病院のない2次医療圏で、基本的がん診療を行う病院」のことです。
なお、地域がん診療病院は、平成26年度から推進されている「新たながん診療提供体制」に基づく「がん診療連携拠点病院等」に含まれるものです。
「がん診療連携拠点病院等」とは、下記の定義に依ります。
全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、全国にがん診療連携拠点病院を399箇所、地域がん診療病院を28箇所、指定しています(平成28年4月1日現在) ※厚生労働省のサイトより引用
なお、拠点病院については「原則として二次医療圏に1か所程度」を目安に整備が進められているようです。(参照・引用元)
「小児がん拠点病院」について
「小児がん拠点病院」とは、
・「造血器腫瘍年間10例程度以上、固形腫瘍年間10例程度以上(うち脳・脊髄腫瘍が2例程度以上)」という診療実績や、
・「小児がん拠点病院の整備について」(平成 24 年 9 月 7 日健発 0907 第 2 号)の拠点病院の指定要件
などを満たす病院のことです。(参考文献)
小児がんの症例を集積し、効果的な研究・治療を行うため、現在全国に15の「小児がん拠点病院」が整備されています。
(詳細は下図)
「地域がん診療病院・小児がん拠点病院の評価」の概要
現在、がん診療連携拠点病院について評価している項目において、地域がん診療病院及び小児がん拠点病院についても評価する。
<「地域がん診療病院・小児がん拠点病院の評価」の詳細はこちら>
緩和ケアに関する診療報酬改定2:「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」とは?
以下、「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」を図る背景事情をご説明し、改定の「意義」をご説明します。
そのうえで、「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」の概要をお伝えしまう。
「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」の背景1:国民の気持ち
「自宅で療養したい」という国民の感情・願いは、「精神的苦痛の緩和」と密接に関係あります。
やや古いですが、平成23年の厚生労働省の資料によれば、「60%以上」の国民が、自宅で療養したいと考えています。
「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」の背景2:「看取り」段階での病院の必要性
上記と同様、平成23年の厚生労働省の資料(下図)によれば、
「(国民が)希望する看取りの場」は、「47%」が「緩和ケア病棟」です。
つまり、「療養段階で希望する場所」と「看取り段階で希望する場所」は異なるということです。
※「看取り」の定義や背景等については、「2030年の「看取り難民」問題、その本質とは?(1)」を参照してください
「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」の背景3:拠点病院の体制不備
「背景2」では、「看取り段階で希望する場所」として「緩和ケア病棟」が多いことが分かりました。
この点、緩和ケア病棟(拠点病院)の受け入れ体制は、日本では確立しているのでしょうか。
その「体制不備」を示すのが、下図になります。
「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」の意義
ここまでで、下記3つの事実が認められました。
- ①多くの国民が「在宅での療養」を望んでいる
- ②ただし、「看取り」段階では、半数近くが緩和ケア病棟を必要としている
- ③しかし、日本ではその受け入れ体制が整っていない
すなわち、これら3つの事実への「対処法」として重要なことは、下記の3つになります。
- a. 在宅療養の整備
- b. 拠点病院の確保
- c. 病院と在宅の連携
つまり、本記事で扱う「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」は、
この中で言えば、「c」に関わる改定項目ということがわかります。
※ちなみに、すでにビーナースで取り上げた「地域がん診療病院・小児がん拠点病院の評価」は、
「b」に関わる改定ということも理解できます。
「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」の概要
進行がん患者の緩和ケアに係る外来から在宅への切れ目のない移行を図り、
在宅において質の高い緩和ケアを提供する体制を実現するため、
進行がん患者に対して外来で化学療法又は緩和ケアを行う保険医療機関が、
当該患者を在宅で緩和ケアを実施する別の保険医療機関に適切な時期に紹介することの評価を新設する。
<「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」の詳細はこちら>
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