当たり前にあると思っていたヒト・モノが急になくなったり、
「自分はそんなことはないだろう」と思っていたモノ・コトが急に降りかかってくる。
これは往々にしてあることで、たとえば親や知人の突然の逝去の際に「もっとこうしておけばよかった」、「なぜあの時・・・」など、自分への「憤り」がフツフツと湧いてくる経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。
しかし、残念ながら人間には「忘れる」というとてつもなく恐ろしい機能が備わっています。
そのため、多くの出来事に対する「自分事」感が失われてしまい、不幸に見舞われたヒトへの「接し方」もなおざりになってしまいます。
もしかしたら、今あなたは”忘れていた大切な何か“をパッと思い起こしたのではありませんか?
さて、本記事では「がん患者との接し方」を取り上げます。
がん患者との接し方においても、この「自分事」という考え方は非常に重要かと思います。
特に看護師さんの場合には、がん患者さんと接する機会も多いはず。
本記事を通して、「がん」という不幸の一例に思いを馳せ、「自分事として人に接する」一助となれば幸いです。
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がん患者が告示時に受ける衝撃
がん患者さんのがんとの戦いは、通常「告示時」から始まります。
がん告知をうけた最初の反応は衝撃で,患者は混乱のあまり医師の説明をほとんど理解できていないこともある.
その後,「もう死んでしまうのだ,もう終わりだ」といった絶望感や「どうして何も悪いことをしていないのに,自分が」といった怒り,悲しみが生じる.
がんの種類や年齢などによって程度の差はあるものの,それでも多くの人が適応するまでの間に,睡眠障害や食欲不振,抑うつ,焦燥といった症状が認められ,日常生活に支障を来す場合もある.
患者はがんの診断により,大きな心理的ショックを受けると同時にがんに関する情報を手にするようになる.*
* 大谷 恭平、内富 庸介「がん患者の心理と心のケア」『日本耳鼻咽喉科学会会報113巻』(2010年)より引用
画像出典:ganjoho.jp
がん患者さんの悩みや苦しみ(接し方の前提知識)
下記、がん患者さんの苦痛について「がん性疼痛(肉体的苦痛)」と「抑うつ・適応障害(精神的苦痛)」に分けてお伝えします。
こうした基礎的な知識について知っておく・定期的に復習しておくことは、きっとあなたの看病や看護に役立つことかと思います。
がん患者さんの肉体的苦痛:がん性疼痛
「がん性疼痛」とは?
まず、辞書的な説明をしておくと、「疼痛」とは、「ずきずきとうずくように痛むこと」です。
すなわち、「がんに起因する、ずきずきとうずくような痛み」のことを総称して、「がん性疼痛」といいます。
大阪医療センターのホームページでは、「がん性疼痛」について平易な説明がされていますので、そちらを引用しておきます。
がん患者さんには、「痛み」の他に、息苦しさ、咳、不眠、吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘、下痢などの苦しい症状がみられます。
その原因はがんの進行から起こるものや、「抗がん剤」を使っているため、あるいは手術を行ったためなどいくつかあります。
この苦しい症状のなかで訴えの一番多いものが「痛み」です。
がんの全患者さんの約50%で、末期がんになると約70%の患者さんで体験されます。
がんの強い「痛み」がいつまでも続くと夜ねむれなくなり、食欲も落ちていきます。
患者さんによっては精神的にも不安定になったりします。
がんの「痛み」は辛抱する価値のない「痛み」ですので、「痛み止めのくすり」で「痛み」をおさえることが重要になります。
画像出典:med.osaka-u.ac.jp
「がん性疼痛」の特徴
がん性疼痛の特徴は、以下の4つに分類されます。
1.がん自体が原因となる痛み
がんの痛みの約70%は、がん自体が周囲の組織に広がって起こる痛みです。
骨に転移した場合、骨膜への刺激や骨折などによって痛みが起こります。
また、胃や腸など内蔵にがんが広がると、消化管の動きが悪くなり、腹痛が起こります。
さらに、がんの広がりによって神経が圧迫されると、激しい、しびれたような痛みが起こります。
2.がんに関連した痛み
がんが間接的な原因となる痛みです。
がんで寝たきりの時間が長くなると、筋肉がやせたり、関節が硬くなり、動かすと痛みが生じます。
また、がんの痛みのために同じ姿勢で寝ていると床ずれ(褥創)が起こります。
さらに、がんによって起こる便秘も痛みの原因になります。
3.がん治療に関連した痛み
がんの治療によって痛みが出現することがあります。
手術によってできた瘢痕(はんこん:傷跡)や、神経の損傷によって痛みを感じることがあります。
抗がん剤治療で起こる口内炎も痛みの原因になり得ます。
また、放射線治療では、口内炎や腸炎、皮膚のやけどなどで痛みが起こることがあります。
4.がんに関係のない痛み
もともと持っている頭痛・関節痛など、がんとは関係ない痛みが、がんに併発して起こった痛みのことです。
また、がんになると自己免疫機能が低下するため、感染症にかかりやすくなります。
なお、帯状疱疹(たいじょうほうしん)は神経を侵すので、強い痛みが出現することがあります。
※上記「がん性疼痛の特徴」は、「がん情報サービス」から多くを引用しています。
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