2016年6月17日(金)、18日(土)に国立京都国際会館で行われる、『第21回日本緩和医療学会学術大会』についてお知らせいたします。
「学会」は、各地から頭脳が集まり、研究成果を発表あるいは聴講し、侃侃諤諤(かんかんがくがく)と議論を交わす場です。
もちろん、研究の一つの集大成としての場ではありますが、関係者の交流の場でもあるかと思います。つまり、立ち話にて同業の仲間と意見交換をすることも、学会の役割の一つなのです。
そこで、目前に迫った学会を有意義に過ごすための情報をご提供します。
※イメージ画像です
画像出典:veristor.com
本記事の目次
日本緩和医療学会の趣旨
まずは、学会の趣旨について確認しておきます。
ここでは、日本緩和医療学会のHPにある「理事長挨拶」を一部抜粋し、「設立趣意書」を転載します。
理事長挨拶(一部抜粋)
“がんと診断された時からの緩和ケア”の普及の要となる“緩和ケア”という“用語”の一般的説明文を、日本緩和医療学会会員と緩和ケア普及啓発事業関連団体協議会の協力を得て作りました。
「緩和ケアとは、重い病を抱える患者やその家族一人一人の身体や心などの様々なつらさをやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア」がそれです。
またメディカルスタッフという言葉の普及も進んでいます。
心配なのは、一部の施設では高度な緩和ケアを目指し、かつ実践されている中で、がん診療連携拠点病院であるにもかかわらず、名ばかりの緩和ケアチームがあり、まだまだないがしろにされたままのがん患者さんとその家族が多くいることです。
ボトムアップと切れ目のない均てん化された「がんと診断された時からの緩和ケア」を目標に日本緩和医療学会員の益々の奮励努力を期待しています。
設立趣意書
20世紀後半の生物学的医学の発展は、現代の医療・福祉の分野に多大な貢献をもたらした。
特にがん医療においては、基礎医学から臨床医学までの進歩はがん患者の治療成績を向上させた。
しかし、これらの成果を得ても、依然多くの患者は全人的苦悩(total suffering)から解放されていない現実がある。
このような状況において、患者のクオリティ・オブ・ライフ(Quality of life: QOL)の向上を目指す緩和医療(Palliative Medicine)が海外で確立されつつある。
しかし、わが国での緩和医療の取り組みは十分とは言えない。
そこで我々は医療・福祉の各専門分野を包括した緩和医療を確立するため、1996年に日本緩和医療学会を創設した。
本学会は、がんやその他の治癒困難な病気の全過程において、人々のQOL の向上を目指し、緩和医療を発展させるための学際的かつ学術的研究を促進し、その実践と教育を通して社会に貢献することを目的とする。
そして、特定非営利活動促進法に基づく法人格を取得することにより、現在の活動を更に拡充し、国内外の関連学会や研究会、諸団体との連携協力を行い、緩和医療の進歩普及を図り、医療・福祉の発展に寄与することを目指す。
第21回 日本緩和医療学会学術大会について
テーマ
「“あなた”らしさに寄り添って~愛と思いやり・・・そしてユーモア・・・~」
学会スケジュール
・6/17(金):8:30~19:00
(※懇親会:19:15~21:15)
・6/18(土):9:00~17:00
代表的な人物のプロフィール等
以下、大会長および特別講演の演者5名のプロフィールや業績になります。
大会長:細川 豊史(京都府立医科大学 疼痛・緩和医療学講座 教授)
・略歴
1981年京都府立医科大学医学部医学科卒業。
1991年京都府立医科大学医学部助教授。
1991年ドイツ連邦共和国デュッセルドルフ大学留学(文部省在外研究員)。
2005年京都府立医科大学附属病院疼痛緩和医療部・部長。
2006年京都府立医科大学附属病院疼痛緩和医療部・病院教授。
2010年京都府立医科大学疼痛緩和医療学講座・教授。
日本ペインクリニック学会理事。
第44回日本ペインクリニック学会・会長。
厚生労働省緩和ケア推進検討会構成員。
文部科学省がんプロ推進協議会 緩和ケア部会 議長。
2012年より日本緩和医療学会理事長。
当日の演題:「日本人の死生観と宗教観~Shall the next world be present?~」
Dr. Fan Bifa(国家衛生部(衛計委)中日友好病院 全国疼痛診療研究センター)
・Title
Professor, Supervisor of doctoral students, The committee member of the fifth committee of the Pain Medicine Branch of Chinese Medical Association;
Associate editor of Chinese Journal of Pain Medicine
・Speciality
Good at minimally invasive interventional neuroradiology analgesia, Spinal Cord Stimulation, central target controlled infusion analgesia and comprehensive treatment in special areas;
Development of a series of skills which takes lead at home and aboard in treatment of pains
当日の演題:「中国緩和医学の発展と進歩」
藤田 直久(京都府立医科大学感染制御・検査医学)
・タイトル
京都府立医科大学准教授(病院教授)
・専攻
感染制御
臨床微生物学
検査血液学
心臓超音波
当日の演題:「緩和ケアにおける感染対策の重要性」
松村 淳子(京都府健康福祉部 健康福祉部長)
・業績参考資料
京都府健康福祉部の運営目標
当日の演題:「京都府のがん対策(主は緩和医療分野)」
北川 靖(京都府医師会 副会長)
・略歴
1984年、京都第二赤十字病院内科研修医
1990年、北山内科医院勤務
2001年、京都府師会理事
2010年、同副会長
・参考コラム
「在宅医療・地域包括ケアサポートセンターニュース」
当日の演題:「がん診療、緩和ケア向上への『開かれた』取り組み」
創立年度と学会会員数
・創立年度
1996 年
・学会会員数
12,000人
会場詳細:国立京都国際会館/グランドプリンスホテル京都
目当ての講演には間に合いますか?
念のため、もう一度場所をチェックしておきましょう!
・国立京都国際会館
〒606-0001 京都府京都市左京区宝ヶ池
・グランドプリンスホテル京都
〒606-8505 京都府京都市左京区宝ヶ池
場所の詳細(Google map)
国立京都国際会館へのアクセス(各種方法別)
・駅からのアクセス
市営地下鉄烏丸線「国際会館駅」(出入口4-2)から徒歩5分
京都市バス・京都バス「国際会館駅」から徒歩5分
・鉄道でのアクセス
・空港からのアクセス
画像出典:icckyoto.or.jp
Tips ~会場近辺のお食事処~
会場周辺のおすすめランチ
・『コーヒーレストラン ドルフ』
京都らしい老舗のカフェ!
アップルパイのあとのコーヒーは格別らしいです。
・『De PLUS CAFE』
すべてのメニューを低カロリーに抑えた美容、健康カフェ。
特に健康に気を使っている方にとって、非常にうれしいお店です♪
・『日本料理 宝ヶ池』
「移動が面倒/値段はやや高めでOK」という方にはこちらをおすすめします!
こちらは、の1Fにあります。ただし、混雑にはご注意下さい。
会場周辺のおすすめディナー
・『宝ヶ池 ゆば泉』
ヘルシーな自家製湯葉と京料理をフレンチスタイルで!
「通の方から初めてゆばを召し上がる方まで、こだわりぬいた本物のゆばの味をご賞味いただけ」るそう。
せっかくの機会ですから、おしゃれに湯葉を楽しむのもアリなのでは?
・『無法松』
創業40年、洛北の老舗居酒屋です。
京名物の湯葉料理や鯖寿司、お造り、鍋、天ぷら、うどん等々が味わえますよ♪
・『三田屋本店 宝ヶ池店』
最高格付け『A5ランク』の黒毛和牛ステーキを頬張れるお店です!
学会はかなり疲れると思いますので、たまにはステーキなんてどうですか?
費用(当日参加費)
会員
14,000円
非会員
・学生:3,000円
・抄録集:2,000円
・懇親会:4,000円
※詳細はこちら!
参考 ~「緩和ケア」の復習~
緩和ケアとは?
厚生労働省のHPでは、緩和ケアは下記のような説明がなされています。
がん患者とその家族が、可能な限り質の高い治療・療養生活を送れるように、身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助が、終末期だけでなく、がんと診断された時からがん治療と同時に行われること
がん患者は、さまざまな苦痛と向き合わねばなりません。
そうした「さまざまな苦痛」は「Total Pain」と呼ばれ、「Total Pain」と向き合うのが、緩和ケアになります。
緩和ケアについてわかりやすく図示したものが下図になります。
日本の緩和ケアの提供体制
では、実際に日本ではどういった緩和ケアの提供体制が整備されているのでしょうか。
ここでは、海外との比較がなされた資料をご紹介します。
このように、海外と比べた時、緩和ケアが日本に根付いていないことがよくわかります。
もちろん、海外と比較して遅れているからといって、それが悪いこととは限りませんが、参考にはすべきでしょう。
※参考記事
緩和ケア病棟とは?
上記のように、緩和ケアとは「がん患者とその家族が、可能な限り質の高い治療・療養生活を送れるように、身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助が、終末期だけでなく、がんと診断された時からがん治療と同時に行われること」を指します。
したがって、「緩和ケア病棟」とは、上記の意味での「緩和ケア」を専門的に扱う病棟というのが、直接的な定義となります。
ただし、これでは味気がないので、少々補足を加えるならば、下記のような特徴があります。
・生命を尊重し、「死への過程」に敬意を払う
・死を早めることも、引き延ばすことも行わない
・痛みなどの苦痛を緩和する
・患者の心理的・社会的側面に対するサポートを行う
・死が訪れるまで、患者が人生を積極的に生きてゆけるようにサポートを行う
・家族が患者の病気や死別後の生活に適応できるようにサポートを行う。
※kokoMedより引用
では、このような緩和ケア病棟はいつから始まったのでしょうか。
また、近年の動向はどのようになっているのでしょか。
そのあたりを後述していきます。
緩和ケア病棟をめぐる社会的動向
日本におけるホスピスの始まりは、1970年代頃から、がんの終末期の患者さんを対象にした、緩和ケアを提供する専門の病床や病棟が登場してきたことにあります。
1990年になると、医療保険制度の診療報酬に「緩和ケア病棟入院料」が設けられ、ホスピスでの緩和ケアが健康保険で受けられるようになったのです。
緩和ケア病棟は、1990年にはわずか5施設で、病床数も117床に過ぎませんでした。
しかし、その後は着実に増え続け、2012年11月時点では、257施設、5101床に増えています。
(参考・引用元)
緩和ケア病棟の施設基準について
では、緩和ケア病棟にはどのような公的基準が設けられているのでしょうか。
こちらは、診療報酬の算定基準に照らして考えるのが妥当でしょう。
施設基準については、日本ホスピス緩和ケア協会が、
「緩和ケア病棟入院料の施設基準」と「緩和ケア診療加算に関する施設基準」の2種類について
詳述してくれていますので、ご参照ください。
緩和ケアの参考記事・参考図書
緩和ケアに関する参考記事
・看護師さんに読んでほしい「がん患者との接し方」とは? 「自分事」という処方箋。
・『ホスピス・緩和ケアと癌(ガン)の基礎知識』 第1回:日本人にとっての癌
緩和ケアに関する参考図書
・高橋 美賀子 (編集), 熊谷 靖代 (編集), 梅田 恵 (編集)『ナースによるナースのためのがん患者のペインマネジメント』(2014/2)
・井部 俊子『専門看護師の思考と実践』(2015/6/15)
・一般社団法人日本がん看護学会 (監修), 近藤まゆみ (編集), 梅田 恵 (編集)『がん看護の日常にある倫理―看護師が見逃さなかった13事例 (がん看護実践ガイド) 』(2016/2/18)
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