プライマリ・ケアが抱える3種の課題 ~実践・浸透・充実を図るには?~

 

現在の日本は超高齢化であり、また医師不足の中、どのようにして地域の医療資源の最適化を図ればよいのでしょうか?

いつでもどこでも誰もが質の高い医療が受けられるように、そしてそこから得られる安心を享受するために、プライマリ・ケアは重要な役割を担っています。

では、プライマリ・ケアを実践・浸透・充実させていくためにはどんな課題があるのでしょうか?

以下に見ていきましょう!

 

プライマリ・ケアの課題

画像出典:southlandsprimarycare.org

 

プライマリ・ケアとは(復習)

 

まず最初に、プライマリ・ケアをご存知ない方に、簡単にご説明しておきます。

プライマリ・ケアとは、「国民のあらゆる健康上の問題、疾病に対し、総合的・継続的、そして全人的に対応する地域の保健医療福祉機能」のことです。

やや広範な意味で使われることが多いこの言葉。

曖昧な方は、「プライマリ・ケアとは? ~5つの理念を個別に整理!~」という記事にてご確認いただければと思います。

 

プライマリ・ケアの実践面での課題

 

広範な連携が必要

 

プライマリ・ケアの医師は、まず患者さんを診察し、より専門的医療を受ける必要があれば適切な病院に紹介します。

退院後は病院や自宅、または介護施設などと協力しながら、患者さんを長期間にわたってフォロー。

そのためには、医療機関だけでなく、介護施設などの施設や、さまざまな職種の方々をつなぐ必要があります。

さらには、患者さんのご家族は、ヘルスケアのソリューションを提供する会社ともつながっていなければなりません。

それでようやく、地域に存在する医療資源を最大限に活用することができるのです。

 

上記から課題を考えてみると、「利害関係者間の連携の必要性」があげられるでしょう。

 

訪問看護師である筆者の経験:情報共有が不十分なケースは多い

 

私の経験上、なかなか情報の共有ができていない場面が多くあります。

例えば、専門機関に受診する際に持参した紹介状の内容について、具体的には患者さんや家族は知ることができません。

書かれた紹介状の内容を患者さんや家族が確認できないからです。

 

最初に診療にあたった医師に、治療に対する患者さんの希望や生活環境上の問題や家族の都合など、専門的治療が必要と理解していても、それぞれの都合があります。

入院期間をできるだけ短くしたい、通院することに支障がある、高齢であり積極的な治療を望まないなど、それぞれ希望、都合があります。

その意向が伝わっていないことが多いのです。

 

関連画像

画像出典:images.alobacsi.vn

 

意に沿わない治療になることも・・・?

 

上述した理由からも専門の医療機関を受診すると、患者さんや家族の意向に沿わない治療内容を受け入れなければならないことがあります。

専門の医療機関では、患者さんは専門的な治療を受ける目的のために受診されていると理解するでしょう。

また、患者さんや家族は当初診ていただいている医師にきちんと話しているので、専門機関の医師も自分達の現状を理解してもらっていると思っている。

そんなところに慌ただしく行われる診察や説明。

気が付いたら、医師の言われるままにということがあるのです。

 

また、超高齢化社会になり、高齢者が増える中、患者さんが90歳近くになった場合、患者さんの家族も70歳以上と高齢者の場合があります。

例えば、認知症があり、入院生活が順応できない場合、病院から家族に付き添いを依頼されても、対応ができないことがあるのです。

命に見切りをつけているわけではないのですが、医師と患者さんや家族に少し死生観についての温度差を感じることは、あります。

 

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