死への過程(Dying Process)の理解と症状緩和
ホスピスナースが他のナースと違う所は、エンドオブライフ・ケアにおいて、身体的症状から見た「死への過程(Dying Process)」のエキスパートだという点です。
多職種からなるチームとして患者さんと家族に関わるホスピスケアの中で、ナースとしての役割の最も重要な部分がそこなのです。
ご家族への説明 ~アメリカのホスピスの場合~
ほとんどのホスピスは、サービス開始時に渡すフォルダーの中に、優しい言葉で書かれた“旅立ちへの過程”を説明する小冊子を入れています。
私たちナースは初回訪問時に、その小冊子に目を通すよう家族に薦めますが、患者さんの状態によっては“まだ、そんな事考えたくない”と、目を背けてしまう人たちもいます。
もちろんそれは仕方のないことで、ナースはタイミングを見ながら、何度もこの過程について説明をし、それに対して何ができるのかを指導していきます。
また、アメリカの在宅ホスピスではComfort Pack(コンフォートパック)と言われる「緊急時用の頓用薬セット」をサービス開始時に支給します。
小さな箱の中に、舌下用液体モルヒネ(疼痛、呼吸困難)、ロラゼパム錠(不安、嘔気など)、液体ハロペリドール(不穏、嘔気など)、ヒヨスチアミン舌下錠(過剰な口腔・喉頭内分泌物)、プロクロルペラジン錠(嘔気、嘔吐)、アセトアミノフェン座薬(発熱、疼痛)、ビサコジル座薬(便秘)などが2-3日分ずつ入っており、いざという時のためにそれを冷蔵庫にしまっておくのです。
受け持ちナースはそれらの薬を家族に説明しますが、全部覚える必要はないことを強調します。
そして、急変時にはホスピスに電話をすれば、「ナースがどの薬をどれだけ、どのようにあげたらよいのかについて電話で指導してくれるので、その通りにすればよいですよ」とお話します。
そうすることで、家族が必要以上に責任を感じたり、緊張したり、不安になったりしなくてすむようにするのです。

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ホスピスナースは、ご家族のサポートあるのみ
患者さんを看取るのは、在宅ホスピスの場合、主に家族です。
ホスピスナースは、家族が安心して患者さんを看取る事ができるよう、その準備ができるようにお手伝いをするだけです。
在宅で患者さんを看取る家族にとって、一番怖いのは、“死”そのものよりもその過程であり、患者さんが苦しむ事が、何よりも恐ろしいのです。
例えば、エンドオブライフ・ケアにおいて、まず直面するのが食欲の低下。
これは、患者さんにとっても家族にとっても、“生きる”事から離れ始める象徴的な現象です。
しかし、この過程を「食べなきゃ死んじゃう!」ではなく、患者さんの身体が必要としている自然なこと、身体に負担をかけず、より楽にしようとする自然の摂理だと言う風に理解できると、患者さんも家族も楽になれるのです。
そうすると、不思議な事に「食べなきゃいけない」と言うプレッシャーがなくなり、好きなものを好きなだけ味わう楽しみを持てたりすることもあります。
お酒だって、OKです。
また、臨終前によくみられる呼吸困難や、ゼロゼロと言う咽喉の奥の音も、病院のように吸引機や酸素マスクが必要なのではないかと思いがちです。
しかし、それらはモルヒネやヒヨスチアミン、アトロピンなどで充分コントロールできるという事を知っていれば、最後の最後で救急車を呼んでしまうこともないのです。
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