胃ろうとは、ビーナースの「胃ろう(PEG)とは何か? ~胃ろうの手術についても解説!~」の記事にもある通り、内視鏡を使って胃に空けた小さな穴のことを言います。
認知症や嚥下障害で経口摂取が難しい方や誤嚥性肺炎を起こしやすい人が、その小さな穴から水分や栄養を摂り、全身状態を安定させるための経管栄養法のひとつです。
胃ろうの手術は比較的患者に負担の少ない手術ではありますが、様々な合併症があります。
そこで今回は胃ろう増設手術の合併症や術後の観察・管理のポイントについてまとめていきたいと思います。
画像出典:fissuresurgerymd.com
胃ろう増設術の合併症とは?
胃ろう増設術の際に起きてしまう合併症には以下の4つの場合があります。
*注:カテーテルとは「医療用に用いられる中空の柔らかい管」を指します。
- ①増設手技自体が原因となる場合:カテーテルによる胃壁裂創や腸管・肝臓などの他臓器損傷、創感染・腹膜炎・敗血症。
- ②留置した胃ろうカテーテルが原因となる場合:局所圧迫壊死、創感染、カテーテル逸脱、胃排出機能低下・イレウス、胃潰瘍、幽門狭窄
- ③経管栄養剤投与に関連したもの:胃食道逆流症、下痢、食欲不振
- ④胃ろうカテーテル交換トラブル:出血、バンパー脱落・摘出不能
上記のように、さまざまな合併症のリスクが存在することが分かりますね。
胃ろうの術後すぐは綿密な観察で異常の早期発見が求められる
胃ろうの穴が完成する2週間以内に起こる合併症を早期合併症といい、それ以降に起こる合併症を晩期合併症といいます。
術後早期は穴がまだ不安定でありカテーテルの早期抜去は腹膜炎の原因にもなり、大変危険なため、綿密な観察が必要になります。
胃ろう手術後、早期合併症を発見する観察ポイント3つ
観察ポイントその1.:全身状態の観察
- ・バイタルサイン
- ・意識レベル
- ・貧血兆候
鎮静剤を使用しているため、呼吸や血圧などのバイタルサインに注意します。
また、術後や鎮静剤使用によるせん妄の可能性もあります。
その際は自己抜去のリスクも考える必要があるでしょう。
観察ポイントその2.:創部の観察
- ・出血、発赤、腫脹、浸出液の有無と性状
- ・腹痛
- ・創部周囲のかぶれ、ストッパーによる皮膚圧迫
- ・カテーテルがスムーズに上下に動くか
創部周囲を観察し、感染の兆候、後出血、腹膜炎の兆候である腹痛の有無を確認します。
ガーゼへの出血が少量でも胃の内部に出血している可能性もあるため、意識レベルや血圧の変化も併せてアセスメントします。
また、胃ろうカテーテルが外力によって逸脱する可能性もあるため、カテーテルがスムーズに上下に動くかどうかも確認します。
観察ポイントその3.:誤嚥の兆候
- ・発熱、肺雑音の有無
内視鏡の操作中の誤嚥や唾液等の誤嚥、胃ろうからの注入物の逆流による誤嚥が考えられます。
肺炎の兆候の有無を確認するとともに、術前からの口腔ケアで肺炎を予防をすることが必要となります。
画像出典:i0.wp.com
▶ 次ページへ:胃ろう手術後の、胃ろうカテーテル管理のポイントは??
関連する記事
造設費用だけじゃなくて維持費も?! 胃ろうにかかる費用とは
胃ろうとは、何らかの理由で経口摂取が難しくなった方が胃に穴を開けてチューブを通して直接胃に食事や薬を投与する処置です。胃ろうを造設すると手術の費用だけでなく、その後も管理が必要となり栄養剤にも費用がかかります。今回は胃ろうに関わる費用とは、をテーマに胃ろうにかかる費用の実際についてまとめていきます。
胃ろうのメリット・デメリットとは?胃ろうの手術を行う前に知っておきたい!
胃ろうとはペグとも言われ、胃に穴を開け、カテーテルを通し直接栄養を送りこむものです。今回の記事では、胃ろうの適応やメリット・デメリットについてまとめていきたいと思います。
胃ろうの在宅看護の現状って?
手術によって胃に穴をあけ、直接胃に栄養を送り込む胃ろう。在宅でも胃ろうが普及している現状はご存じでしょうか。人工的に栄養を補給する方法は胃ろう以外にも経鼻栄養・腸ろう・経静脈栄養が挙げられます。今回は在宅医療における胃ろうについて詳しく解説します。
胃ろう(PEG)とは何か? ~胃ろうの手術についても解説!~
近年、延命を目的とした高齢者の胃ろうの造設の是非への関心が高まっています。今後も高齢化に伴い、胃ろうのニーズは変わらずあることが考えられます。そこで今回は、胃ろうの手術についてまとめていきたいと思います。
精神科の看護師の業務において必要な3つのスキルとは?
精神科は楽な仕事ではありません。時代が変わり、転職先に精神科を希望する看護師が増えています。一般科に比べると楽だからという理由だけで精神科を選択肢に入れてしまうと、後々後悔することにもなってしまいます。本記事では、精神科看護師の業務で必要とされることについて、経験者の立場から触れていきます。