『在宅医療・ホスピスのイロハ』 ~第4回:ホスピスとは?~

ホスピスの制度的発展

 

ここまで、ホスピスの起源、種類、そして各種の特徴について述べてきました。これにより、「ホスピス」の概要についてはお分かり頂けたかと思います。

そこで本章では、ホスピスの「制度面」について、「日本ホスピス緩和ケア協会」および「政府(厚生労働省)資料」を参照しつつ、これまでどういう発展をしてきたのかという点に触れておくことで、より一層現在のホスピスの在り方に関する理解を深められればと思います。

 

これまでのホスピスの制度的発展

 

<ホスピスの制度的発展に関する年表>

 

1973年 淀川キリスト教病院でOCDP(末期がん患者の多職種カンファレンス)始まる
1981年 聖隷三方原病院に我が国最初のホスピス施設開設
1990年 「緩和ケア病棟入院料」が健康保険に診療報酬として認められる
1991年 「全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会(現在、日本ホスピス緩和ケア協会)」設立
1997年 ホスピスケア、がん疼痛看護師などの認定看護師の認定開始
2002年 「緩和ケア診療加算」が病院内緩和ケアチームを対象に認められる
2004年 緩和ケアチームが健康保険で認められる
2006年 「在宅療養支援診療所」が診療報酬で認められる
2006年 介護保険制度改正において、地域包括支援センターや地域密着型サービス創設
2007年 「がん対策基本法」が施行される
2013年 地域包括ケアシステムの明文化

 

これらの中でも、「がん対策基本法」がホスピス緩和ケアと非常に密接な関係を持っているため、以下そちらをご説明します。

 

「がん対策基本法」および「がん対策推進基本計画」について

 

がん対策基本法」は、2006年に制定され、2007年に施行されました。

「がん対策推進基本計画」(以下、「基本計画」という)は、このがん対策基本法に基づいて政府が策定するものです。

 

<がん対策基本法成立までの流れ>

 

基本計画(2012年)では、下記のように述べられています。

 

がんは、日本で昭和56(1981)年より死因の第1位であり、平成22(2010)年には年間約35万人が亡くなり、生涯のうちに約2人に1人ががんにかかると推計されている。

こうしたことから、依然としてがんは国民の生命と健康にとって重大な問題である。

 

つまり、「がん」は、日本の医療制度にとって「目の上のたんこぶ」ともいえる存在で、主に下記のような対策が行われてきました。

 

  • 1984年 「対がん10カ年総合戦略」
  • 1994年 「がん克服新10か年戦略」
  • 2004年 「第3次対がん10か年総合戦略」

 

こうしたがん対策の取り組みをさらに促進するために、2006年にがん対策基本法が成立し、平成2007年4月に施行、その後基本法に基づき、がん対策を総合的かつ計画的に推進するための「がん対策推進基本計画」が2007年6月に策定された、という流れになります。

 

<基本計画の概要>

 

基本計画(の概要)では、緩和ケアとの関わりでいえば、下記の通り「緩和ケア」を推進することを謳っています。

 

2. がんと診断された時からの緩和ケアの推進
がん医療に携わる医療従事者への研修や緩和ケアチームなどの機能強化等により、がんと診断された時から患者とその家族が、
精神心理的苦痛に対する心のケアを含めた全人的な緩和ケアを受けられるよう、緩和ケアの提供体制をより充実させる。

 

この文言にはどういう意義があるかといえば、ひとえに「医療従事者に対する基本的な緩和ケアの知識の普及」が推進されることにあると考えます。

つまり、人材の育成や、研究の推進(たとえば、OPTIM プロジェクトなど)が盛んになるということが極めて重要なのです。

何事も、ヒトがいないと始まりません。

がん対策基本法はその端緒となる出来事であり、歴史的に非常に意義深い出来事であるといえます。

※もっと詳しく知りたい方は、下記の参考資料をご覧ください!

 

【 参考 】
・「がん対策推進基本計画
・「がん対策推進基本計画の概要
加藤雅志「がん対策基本法後にホスピス緩和ケアはどう変わったか─成果と残された課題─」

 

まとめ ~「ホスピス」とは「新しい医療のカタチ」を実現するための制度~

 

今回は、「ホスピス緩和ケア」についてご説明しました。

ここまでご覧下さった皆様に、改めて本記事の冒頭に載せた「ホスピスの概念」の説明文の一部をお示しします。

 

これまでの医療は、治癒させることに専念するあまり、治癒できない場合の対応がほとんど考えられていませんでした。
治癒できなければ延命策を講ずるという図式が連綿と続けられていました。『検査・診断・治療・延命』という4つの働きが近代病院の目的と考えられてきたからです。

 

この文章を改めて見たときに、「あぁ、なるほど」と思って頂けたなら幸いです。

まさにこの文章が表す通り、「検査・診断・治療・延命」ではなく、「援助」を目的とするのがホスピスなのです。

今後、この「新しい医療のカタチ」は間違いなく今以上に広まっていくはずです。

まだ全然知らなかったという方は特に、今のうちから最低限の知識だけは備えておきましょう。

 

→次回は、「在宅医療・ホスピスにかかわる近年の行政の動き」を扱います。

日本政府は、高齢化という難敵に対し、どのような施策を講じようとしているのか?という点を整理してお伝えします。

 

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