感染管理とは、病院内での感染症の流行を防ぐための取り組み、活動のことをいいます。
「感染対策活動」「感染予防管理活動」「感染制御活動」とも呼ばれており、感染制御チームを中心に施設内の多くの職種が共同して取り組む活動として病院の基本的な医療安全管理体制の一つです。
感染管理は大きく、「予防活動」「流行対策」の2つに分けられます。
そもそも「感染」とは?
前橋赤十字病院HPによれば、感染は「市中感染」と「院内感染」の2種に大別されます。
うち院内感染については、3つの種類に分別されるようです。
詳細は以下の通りです。
1.市中感染(症):一般社会で生活していて感染、又は感染症を発症した場合
2.院内感染(症):病院や施設の中で新たに感染、又は感染症を発症した場合世界的には在宅ケアでの感染を含めて「医療関連感染 Healthcare-Associated Infection; HAI」と言われるようになっています。
2-1患者様が発症する医療関連感染症:医療器具(カテーテル、チューブ、ドレンなど)を使用している方に起こるカテーテル関連の敗血症、尿路感染症、肺炎や、手術部位感染症など
2-2医療従事者が発症する医療関連感染症:注射針を誤って刺してしまうことで発症する肝炎など
2-3患者様・医療従事者共に発症する感染症(アウトブレイクと呼ばれます)
医療機関における感染管理(予防活動)の例
それでは、院内感染に対する感染管理(予防活動)にはどのようなものが挙げられるのでしょうか?
以下、その例をご紹介します。
※市中感染については書籍をご紹介しますので、ご興味があればご参照いただければ幸いです。
→IDATENセミナーテキスト編集委員会『市中感染症診療の考え方と進め方』 (2009年、IDATEN感染症セミナー)
①発生状況の監視
日常的に感染症の発症状況を把握します。
感染監視活動と予防活動を重点的に行うことによって、院内感染の発症率を約32%減少させることにつながっています。(出典:wikipedia)
②感染拡大の予防
院内感染の伝播を防ぎ、医療従事者自身を感染から守るために、各病原微生物の感染経路に応じた対策をたて、手順を周知する必要があります。
③手洗いを中心とした標準予防
既知の感染の有無にかかわらず患者さんの血液・体液・分泌物・損傷皮膚・粘膜に触れる前後に手洗いと手袋の着用を推奨しています。
手技に応じてマスク・ガウン・ゴーグル・フェイスシールドも使用することが望ましいでしょう。
注射針、メス、その他の鋭利な器具による刺傷・切傷を防止するためのリキャップの禁止、使用直後の安全な廃棄のための医療廃棄物容器の適切な配置、さらに安全装置付き注射針の呼びかけ。床・壁など環境表面への汚染時には手袋を着用し、ペーパータオルと消毒薬により清拭消毒。
汚染されたリネンは洗浄まで周囲へ汚染を防ぐために適切に保管することが必要です。
血液で身辺を汚染する可能性のある患者さんは個室に収容します。
④隔離予防策
原因となる病原体がわかっている場合は、それぞれに特有な感染経路に応じては適切な予防策をとります。
⑤清掃・消毒・滅菌
患者さんの手が触れる病室や共有エリアの接触表面は日常的な清拭により清掃が必要です。
手が触れない壁や床は1日1回の清掃が必要です。
⑥個人用保護具の着用
「個人用保護具」とは、医療従事者が危険から身を守るために身につける衣類や器具のことをいいます。
医療用手袋・医療用ガウン・帽子・靴カバー・顔面シールド・マスク・ゴーグル・外科用マスクなどの種類があり、これらを着用することで予防を行います。
たいていは使い捨てになっています。
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