第1回、第2回のインタビューを通して、坂元さんから次のようなお話を伺えました。
- ・患者さんが意思決定するための「下ごしらえ」を関係者全員が出来るようにすることが大事
- ・(がん)看護を「やめなければ」と思ったことはあれ、「やめたい」と思ったことはない
- ・大学院に進むという決断を通して、「何かを始めるのに遅いということはない」と気付けた
インタビュワーとして特に印象に残ったのは、第2回で「辞めたいと思ったことは?」とお聞きしたときのご回答です。
失礼ながらその質問を投げかけたときに、すぐさま「ないです」というお言葉を力強く返されたときには、謙虚で物腰柔らかな坂元さんの人柄とのギャップに一瞬ドキッとしてしまいました。
そんな、謙虚な心を持ちながらも自分の「芯」をお持ちの坂元さんは、これからどのようなご活動をなされるのでしょうか。
最後に「がん看護専門看護師」として経験したエピソードを通して、その魅力についても語って頂きましたので、是非ご参考にしてください!
本記事の目次
今後のご活動について
――今後はどのようなことに注力していきたいですか?
今は、専門看護師として下ごしらえをしながら架け橋をしていくことについて、「こういうことなんだなぁ」というのがやっと見えてきた段階ですので、まずはその点をしっかり実践していきたいです。
あとは、自分のように「下ごしらえ」を重要視している看護師が存在しているということを、後輩の看護師などに伝えていきたいなとも思います。
同じ看護職でも色んな役割があって、自分の個性、関心ごとや興味を含めて色んなやり方があると思うので。
「出戻りの大学生」という滅多にいない変わり者がここにいますので、「へぇ~そうなんですか」と言われながら、伝えていきたいですね。
「在宅」との関わり方について
――在宅業界との絡みで、病院にいる看護師として取り組みたいことはありますか?
最近は、地域のケアマネジャーさんや訪問看護師さんと連絡することが増えてきています。
ですので、接点を持った場合には、お互いの業務内容を理解したうえで、どのような連携が出来るのかについて一歩ずつ具体的に進めていきたいです。
(ケアマネジャーさんや訪問看護師さんは、)専門看護師がどのような業務を行っているのか、相談支援センターがどういうところなのか、といったことについてはご存じない方もまだまだいると思います。
なので、まずは何ができるのかという点について積極的に情報発信もしていく必要があると思います。
がん看護専門看護師として伝えたいこと
――最後に、坂元さんにとってのがん看護専門看護師(相談員)の魅力についてお教え頂けますか?
病院にいるとどうしても「患者さんは弱っている人」という認識になりがちです。
しかし今は、「がん患者さんであれ病気でない人であれ、自分の脚でちゃんと歩いて行ける人たちだ」という認識を絶えず保っておくことが出来る位置にいられるので、そこは魅力の一つではないかと思います。
「自分はそうした人たちにちょっと手を添えているだけ。患者さんが自分で立ち、歩くことが出来るよう手助けをしている。」という点は、私が非常に大事にしている点です。
自分のやり様によって、その時々だけではなく、長期間で患者さんと付き合うことが出来る点は、非常に魅力的ですね。
――なにかエピソードがあれば、是非聞かせて頂きたいです!
ある患者さんとの出会いから、がん看護専門看護師としての私のありようを、あらためて考えることになったエピソードがあります。
その患者さんは、治療の時期にすごく悩んで心配ごとが多かった方でした。
私はその方と一年以上定期的に会っていたんですけれども、その患者さんの周りの色んなことが片付いたくらいの頃合で、面談をすることになりました。
もう大丈夫という話を聞いていた頃の面談、しかもその方からご指定下さったものだったので、「あれ?もう大丈夫なはずなのに。。。また何かあったのかな・・・。」と思っていました。
その患者さんは、面談の場所に来てくださり、こう仰ってくださいました。
「坂元さん、今までありがとう。今まであなたがしてくれたことに私は感謝しています。」
「でもね、ごめんなさい。」
私は「え?」と思うわけですね。
するとこう続けられました。
「私はきっとあなたを忘れると思うの。これから仕事や子育てをする日常に戻っていって。私はここを卒業すると、あなたを忘れてしまいます。だから、ごめんなさい。」
私はこれを聞いて、すごくうれしく思いました。
そして、続けて仰って下さったことも、なお嬉しいお言葉でした。
「でもね。私はがん患者なので、これからの人生でまた何か起こるかもしれない。その時には、きっとあなたを思い出すと思うの。その時は、あなたはまた私に会ってくれますか?」
もちろん、私はイエスです。
私がやってきたことが役に立って、自分の脚でちゃんと歩いて行けるということは当然うれしい事ですけれど、「忘れてしまいます」という言葉も嬉しく感じられました。
さらに、その方はこうも続けて下さいました。
「私みたいに思っている人ってきっとたくさんいると思う。仕事が忙しいかもしれないけど、廊下を歩いていてください。『あぁ、坂元さんは今日もいるんだ』と分かってホッとする人もいると思いますよ。」
忘れてしまいます、ごめんなさい。
また何かあったときは私に会ってくれますか?
坂元さんは今日もいるんだ。
この3つのメッセージがすごく嬉しかったのは、非常に印象に残っています。
時に頼りにされ、時に忘れられる。
そんな仕事を私はしていきたいと思っています。
この記事はいかがでしたか? ・週一回なら、まぁ見てもいいかな♪ といった方は是非ご登録をお願いします!!
下記リンクからの無料会員登録で、 メルマガ受け取り@毎週土曜日 診療報酬改定まとめ資料受け取り などが可能になります!! (もちろん、わずらわしい情報は一切お送りしませんよ♪)
|
☆関連お役立ち情報☆ |
・【暮らしの保健室 秋山正子さんインタビュー第1回】「患者さんにとって本当に必要なことか?」という問い |
☆おすすめのまとめ記事☆ |
★ここまでで分からない用語はありませんでしたか? そんな方は・・・
関連する記事
【がん看護専門看護師・坂元敦子さんインタビュー第2回】がん看護との出会いと軌跡
そもそも坂元さんはなぜがん看護専門看護師ないしはがん専門相談員になられたのでしょうか。今回は、坂元さんの「これまで」の部分についてお聞きしていきます。
【がん看護専門看護師・坂元敦子さんインタビュー第1回】意思決定の「下ごしらえ」の重要性
がん看護専門看護師であり、現在杏林大学医学部付属病院のがん相談支援センターにて相談員としてご活躍されている坂元敦子さんにお話を伺うことが出来ました。現場で奮闘しておられる看護師の皆さまにとって非常に有意義なインタビュー内容だと思います!
【田村恵子京大教授インタビュー1】ホスピス先駆者のイマ語り ~京大教授と対話とヒトデ~
日本を代表するホスピスナース、京都大学大学院の田村恵子教授のインタビュー記事第1回です。約30年に渡る臨床経験を持ち、がん看護専門看護師の草分けとしてもご活躍された田村先生に、約3時間みっちりとお話を伺えました。まずは、現在のご活動内容からスタートです!!
【田村恵子京大教授インタビュー2】なぜ京大教授に? ~教授公募の裏側、田村恵子と現象学~
田村恵子先生のインタビュー第2回です。今回は、下記のような内容を収録しております。なぜ京大教授に就任されたのか?/なぜ「現象学」にご興味を持たれたのか?/田村先生の人生を変えた、全身が震えたある言葉とは? 実践者であり研究者でもある田村先生の含蓄溢れるお言葉の数々。 是非ご覧下さい!
【田村恵子京大教授インタビュー3】「看護」に対する表裏2つの疑問
今回は田村恵子先生の「過去」の部分を徐々に掘り下げていきます。ご自身が引っかかったことに対してつい正直に疑問を抱え、行動に移してしまう田村さんの「なんでグセ」は、「看護」を遠ざけるものであったとともに、「看護」に魅せられるきっかけでもあったのです。その全貌は、本稿で明らかになることでしょう。