【がん看護専門看護師・坂元敦子さんインタビュー第3回】「時に忘れられる存在になりたい」

 

第1回第2回のインタビューを通して、坂元さんから次のようなお話を伺えました。

 

  • ・患者さんが意思決定するための「下ごしらえ」を関係者全員が出来るようにすることが大事
  • ・(がん)看護を「やめなければ」と思ったことはあれ、「やめたい」と思ったことはない
  • ・大学院に進むという決断を通して、「何かを始めるのに遅いということはない」と気付けた

 

インタビュワーとして特に印象に残ったのは、第2回で「辞めたいと思ったことは?」とお聞きしたときのご回答です。

失礼ながらその質問を投げかけたときに、すぐさま「ないです」というお言葉を力強く返されたときには、謙虚で物腰柔らかな坂元さんの人柄とのギャップに一瞬ドキッとしてしまいました。

 

そんな、謙虚な心を持ちながらも自分の「芯」をお持ちの坂元さんは、これからどのようなご活動をなされるのでしょうか。

最後に「がん看護専門看護師」として経験したエピソードを通して、その魅力についても語って頂きましたので、是非ご参考にしてください!

 

坂元さん インタビュー がん看護

 

今後のご活動について

 

――今後はどのようなことに注力していきたいですか?

 

今は、専門看護師として下ごしらえをしながら架け橋をしていくことについて、「こういうことなんだなぁ」というのがやっと見えてきた段階ですので、まずはその点をしっかり実践していきたいです。

 

あとは、自分のように「下ごしらえ」を重要視している看護師が存在しているということを、後輩の看護師などに伝えていきたいなとも思います。

同じ看護職でも色んな役割があって、自分の個性、関心ごとや興味を含めて色んなやり方があると思うので。

「出戻りの大学生」という滅多にいない変わり者がここにいますので、「へぇ~そうなんですか」と言われながら、伝えていきたいですね。

 

「在宅」との関わり方について

 

――在宅業界との絡みで、病院にいる看護師として取り組みたいことはありますか?

 

最近は、地域のケアマネジャーさんや訪問看護師さんと連絡することが増えてきています

ですので、接点を持った場合には、お互いの業務内容を理解したうえで、どのような連携が出来るのかについて一歩ずつ具体的に進めていきたいです。

(ケアマネジャーさんや訪問看護師さんは、)専門看護師がどのような業務を行っているのか、相談支援センターがどういうところなのか、といったことについてはご存じない方もまだまだいると思います。

なので、まずは何ができるのかという点について積極的に情報発信もしていく必要があると思います。

 

がん看護専門看護師として伝えたいこと

 

――最後に、坂元さんにとってのがん看護専門看護師(相談員)の魅力についてお教え頂けますか?

 

病院にいるとどうしても「患者さんは弱っている人」という認識になりがちです。

しかし今は、「がん患者さんであれ病気でない人であれ、自分の脚でちゃんと歩いて行ける人たちだ」という認識を絶えず保っておくことが出来る位置にいられるので、そこは魅力の一つではないかと思います。

「自分はそうした人たちにちょっと手を添えているだけ。患者さんが自分で立ち、歩くことが出来るよう手助けをしている。」という点は、私が非常に大事にしている点です。

 

自分のやり様によって、その時々だけではなく、長期間で患者さんと付き合うことが出来る点は、非常に魅力的ですね。

 

――なにかエピソードがあれば、是非聞かせて頂きたいです!

 

ある患者さんとの出会いから、がん看護専門看護師としての私のありようを、あらためて考えることになったエピソードがあります。

 

 

その患者さんは、治療の時期にすごく悩んで心配ごとが多かった方でした。

私はその方と一年以上定期的に会っていたんですけれども、その患者さんの周りの色んなことが片付いたくらいの頃合で、面談をすることになりました。

もう大丈夫という話を聞いていた頃の面談、しかもその方からご指定下さったものだったので、「あれ?もう大丈夫なはずなのに。。。また何かあったのかな・・・。」と思っていました。

その患者さんは、面談の場所に来てくださり、こう仰ってくださいました。

 

「坂元さん、今までありがとう。今まであなたがしてくれたことに私は感謝しています。」

 

でもね、ごめんなさい。

 

私は「え?」と思うわけですね。

するとこう続けられました。

 

私はきっとあなたを忘れると思うの。これから仕事や子育てをする日常に戻っていって。私はここを卒業するとあなたを忘れてしまいます。だから、ごめんなさい。

 

私はこれを聞いて、すごくうれしく思いました。

そして、続けて仰って下さったことも、なお嬉しいお言葉でした。

 

でもね。私はがん患者なので、これからの人生でまた何か起こるかもしれない。その時には、きっとあなたを思い出すと思うの。その時は、あなたはまた私に会ってくれますか?

 

もちろん、私はイエスです。

私がやってきたことが役に立って、自分の脚でちゃんと歩いて行けるということは当然うれしい事ですけれど、「忘れてしまいます」という言葉も嬉しく感じられました。

さらに、その方はこうも続けて下さいました。

 

私みたいに思っている人ってきっとたくさんいると思う。仕事が忙しいかもしれないけど、廊下を歩いていてください。『あぁ、坂元さんは今日もいるんだ』と分かってホッとする人もいると思いますよ。」

 

 

忘れてしまいます、ごめんなさい。

また何かあったときは私に会ってくれますか?

坂元さんは今日もいるんだ。

 

この3つのメッセージがすごく嬉しかったのは、非常に印象に残っています。

 

時に頼りにされ、時に忘れられる

 

そんな仕事を私はしていきたいと思っています。

 

 

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