「虹」の色は何色だと思いますか? 認識論と看護の関係【名古屋大学大学院・山内豊明教授インタビュー2】


 

アイちゃんにおける言葉の定義の工夫

 

山内豊明、言葉の定義

 

――「アイちゃん」の開発では言葉の定義・標準化においてはどのような工夫を行いましたか?

 

言葉を「標準化」するという作業には、どうしても人の感性が入ってしまいますので、その機微に触れる部分には工夫が必要でした。

 

それこそ「看護」におけるケアは、すべてを文字化できるわけではありません。

分かりやすく言うと、たとえば「普段より元気がない」と伝えたい時はどのように記述するでしょうか。

そもそも「元気ってどのように測りますか?」や「何をしている時は元気ですか?」など、定義できないことの方が多いんです。

 

しかし、経験豊富な看護師のなかには、患者さんが「いつもよりなんとなく元気がない」という事象を、感覚的に気づく方もいらっしゃいます。

そしてそれは実際に間違っていないことが多いです。

そうなると、「元気とはこういうものです」という明確な定義が出来なくても、最終的に「体調が良くない」という結論に至り、問題ないという話になります。

たしかに、結果にずれがなければOKと判断してもいいのでしょうが、「元気がない」という言葉や表現方法で問題がないとした場合に各人で違う結論に至るとすれば、それは問題です。

例えば、「元気がない」という言葉で100人中100人がバラバラの解釈になるのであれば、その言葉は「標準化」に使えない言葉です。

逆に、100人中90人〜95人くらいが「元気がない」あるいは「体調が優れなそう」などの結果で一致するのであれば、おおよそその言葉で表現してもよいということになります。

 

コンピュータの場合は、たとえ一つでも曖昧なものがあるとバグが起きてしまいますので、一つでも言語化できないものがあれば動かなくなってしまいます。

しかし、実際にケアを行なうのは人間です。

ある程度の「幅」のようなもの、例えば「ここからこの意味の枠内に入っていれば『同じ』ということにする」といったことを許容しなければなりません。

そうしなければ、定義するのがかなり膨大かつ煩雑になってしまいます。

 

したがって、幅を持たせつつも、「結果(※ケアやアセスメントの内容)」を変えないようにする作業は、本当に試行錯誤をして議論を尽くしました。

「活気がある」と言ったときに、「『活気』って何?」と議論していくわけです。

 

――今後、その「幅」の部分にフォーカスできるようになれば、より進歩が進むのではないかと思いました。

 

そうでしょうね。

だから誰がみても同じことに頭を抱える必要はなく、「この部分はこうすれば安定して見られるようになります」という勘所が(誰にでも)見えるようになると思います。

服を作る場合でも、ある部分の作り方は統一しても問題になることは少ない。しかし、「この部分はどうするの?」といった時の「この部分」に焦点を当てる時間が増えることになっていくのだと思います。

 

――いわゆる「職人芸」とされるような、より研ぎ澄まされた良い製品やサービスが提供できるようになるということでしょうか?

 

そうだと思います。

 

例えば、職人でなければできないことがあれば、機械でもできることもありますよね?

しかし、機械でもできることを職人にさせたら職人がもったいなくて、「その人にしかできないこと」に力を注いでもらうことが大切です。

機械でもできることは機械に任せたり、機械的に作業を遂行できれば、経験のある人でなければできない仕事に対してより多くの時間を割くことが出来ると思います。

そうして「その人にしかできないこと」に関する感性を高めることが出来れば、全体の仕事の精度が上がると考えています。

 

――すごくわかりやすいです。

 

もちろんですが、「看護のアイちゃん」を使えば、何にも知らない中高生が明日から「訪問看護師になれる!」という訳ではありません。

訪問看護業務をこなすためには、ある程度の経験が必要です。

 

だからといって、「訪問看護を50年経験した人と同じ経験をしなければ同じケアができないか」というと、そういう訳ではありません。

それだと、先程の「人類は何世代経っても進化しない」という話と同じです。(※)

 

一見誰でもできそうな仕事にもプロでなければ行えない部分はありますし、かといって、経験者にしかできない仕事のように見えても「経験の見える化」を利用すればこなせる仕事はたくさんあります。

 

つまり、「看護のアイちゃん」はプロの人にとっては業務の「見える化」に繋がりますし、そうでない人にとってはプロが「見える化」したノウハウを利用できるという、両者にとって有効なソフトです。

(※)山内先生のインタビュー記事第1回(言葉で伝えることは重要である」の本当の理由)を参照

 

ベテラン訪問看護師と新人訪問看護師が、それぞれ「アイちゃん」によって得られることとは

 

――強いて言うなら、「看護のアイちゃん」をどんな方に使ってほしいとお考えですか?

 

強いて言うなら、、、難しいですね。(笑)

経験がある訪問看護師にとっては自分の経験値の確認になります。

一方、新人訪問看護師にとっては、自分があやふやなところを確認したり、自分が今後機械的な部分の仕事ではなく「プロとして行なわなければいけない仕事」を見出すために非常に有用です。

 

ただ、学ぶの語源が「真似ぶ」というように、学びは「真似る」ことから始まりますよね?

そういう意味では「仕事を始めてから日が浅い人」の方がご利益を感じやすいと思います。

新人が何もない状態でいきなり訪問看護に行くことは難しくて、サポートが必要になります。

それに、新人の方が成長する伸びしろを感じやすいかと思います。

 

例えば、テストにおいて90点を取るためのツールにおいては、現時点で80点取っている人には10点しか上乗せがないですが、30点しか取れていない人は60点も上乗せできます。

「上乗せが大きいかどうか」で評価したいのか、それとも「いかに高得点を出すか」で評価したいのかによってツール自体の評価が変わると思っています。

「アイちゃん」でいえば、「これ以下のケアは提供しません」というラインを引くためのツールですので、明確に効果を感じやすいのは基礎点が低い新人の方だと思います。

一方で、対利用者さんで言えば、「看護のアイちゃん」は「何点以下のケアはしません」という最低限のケアを約束をするためのツールですので、何点伸びたかという伸びしろを気にする必要はないということになります。あくまで「90点未満がいないこと」がその評価基準となります。

 

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