昨今、日本は、少子高齢化という大きな壁に直面しています。
それに伴い医療は2つの大きな課題を抱えています。
1つ目は、 成人医療の領域で、超高齢社会への突入によってもたらされるさまざまな課題です。
2つ目は、小児科医が直面し ている医療の進歩による医療依存度の高い重症・病弱児の急増という課題です。
成人医療領域が取り沙汰される昨今、「小児在宅医療」という言葉は余り聞き慣れないかもしれません。
本記事を通して、小児在宅医療の背景・現状・課題、そして今後の展望について学びませんか?
画像出典:phunuvietnam.vn
小児在宅医療とは?
では、「小児在宅医療」とはそもそも何なのでしょうか。
ここでは、小児在宅医療の意義と目的、について説明したいと思います。
小児在宅医療の意義
鹿児島純心女子短期大学の研究によれば、次のように定義されています。(一部改訂)
子どもの長期入院が及ぼす影響は、患児自身やその家族に様々な悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。長期入院の患児は、親と生活をともにしないことにより、親の愛情不足が指摘されている一方、患児のみならず、親やきょうだいを含めた家族関係にも大きな影響を与えることが知られている。長期間の母子分離、父子分離により、親子の愛情形成に障害が起きる 可能性があることや患児のきょうだいにも心理的影響があることが指摘されている。こうした 面からも小児の在宅医療の必要性は大きい。また、在宅療養は入院児付き添いの疲労やストレスから解消されることにもなる。
つまり、小児在宅医療の意義とは、患児とその家族の心理的・身体的負担を減らすことにあります。
画像出典:abilities.com
小児在宅医療の目的
厚生労働省の文献によれば、次のように定義されています。
・全ての子ども、どんな重い障害や病気をもった子どもも、一人の「人」として大切にされ、家族の絆、 地域のつながりの下で、それぞれがもって生まれた「いのち」の可能性をできる限り発揮して、生き切ることができる社会を実現する。
・在宅医療という形で、地域基盤の多職種連携による包括的ケアを行い、患者と家族中心のケアを実現する。
つまり、小児在宅医療の目的とは、患児と家族中心のケアを提供することです。
関連する記事
『在宅医療・ホスピスのイロハ』 ~第1回:概要~
シリーズの手引きとして、日本の医療関連の議論の問題点および本シリーズの意義を解説しています。
『在宅医療・ホスピスのイロハ』 ~第2回:在宅医療とは?(1)~
「在宅医療とは何か」についてストレートに答えているため、概要をつかむには最適の記事です。
「在宅」という選択肢を広げるにはどうしたらいいですか? 【インタビュー:緩和ケア認定看護師・落合実さん(3)】
ウィル訪問看護ステーションにてご活躍されている落合実さんインタビュー最終回です。第1回、第2回では、それぞれ「看護師にとって/利用者にとっての在宅の良さ」を伺いました。そこで今回は、落合さんの今後に触れながら、「どうすれば在宅という『選択肢』を広めることができるのか?」という点について伺いました!
【K-WORKER 山上所長インタビュー第1回】全員車いすで仕事!?被介護者の〇〇に着目するワケ
「在宅×介護・福祉」の分野でご活躍されている山上智史さんのインタビュー第1回。山上さんは、株式会社K-WORKERの福祉用具貸与事業所長。山上さんの職場では、なんと「従業員全員が車いすを用いて業務をこなす」という取り組みを行っています!その真意や如何に・・・?
【K-WORKER 山上所長インタビュー第3回】「病院と在宅の橋渡し」へ向けて
これまで、「まずは自分たちで使ってみて、理解する」/「デメリットを探してでもお伝えする」/「考えて即行動」といった、山上さんのいわば「仕事(人生)哲学」のようなものを紐解いてきました。最終回である今回は、そんな山上さんの「今後の展望」について伺います。