【緩和ケアに係る診療報酬改定2016】がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実(用語説明付)

 

平成28年度(2016年)の診療報酬改定では、
在宅領域(在宅医療・訪問看護・(ホスピス)緩和ケア・看取り)に関わる制度改定が多数行われました。

これは、在宅領域が医療・看護・介護業界に関わる”すべて”の方々に大きな影響があることを意味します。

しかし、webサイトでは、政府資料のペーストがされているのみで、情報が整理されているとは言い難いのが実情。
そこで、ビーナースが他サイトに先駆け、「在宅」にかかわる診療報酬改定項目を順次見やすい形に整理していきます。

今回は、中でも「ホスピス)緩和ケア」に関わる改定項目(「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」)を、用語解説を含めてご説明します!

 ※公式資料はこちら(本記事に関連するのはp201)

 

ホスピス緩和ケア、診療報酬改定、がん治療

画像出典:centralamericasurgery.com

 

「緩和ケア」について

 

本記事で取り上げる「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」においては、

緩和ケア」の概念が非常に重要となります。

そのため、ビーナースを日常的にご覧の皆さまには「釈迦に説法」になりますが、

本記事ではまず「緩和ケア」について簡単にご説明します。

※参考記事(ビーナース):「ホスピスとは?

 

緩和ケアとは?

 

厚生労働省のHPでは、緩和ケアは下記のような説明がなされています。

 

がん患者とその家族が、可能な限り質の高い治療・療養生活を送れるように、身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助が、終末期だけでなく、がんと診断された時からがん治療と同時に行われること

 

がん患者は、さまざまな苦痛と向き合わねばなりません。

そうした「さまざまな苦痛」は「Total Pain」と呼ばれ、「Total Pain」と向き合うのが、緩和ケアになります。

緩和ケアについてわかりやすく図示したものが下図になります。

 

緩和ケアとは?

画像出典:厚生労働省資料(平成23年10月26日、中医協)

 

日本の緩和ケアの提供体制

 

では、実際に日本ではどういった緩和ケアの提供体制が整備されているのでしょうか。

ここでは、海外との比較がなされた資料をご紹介します。

 

日本の緩和ケアの提供体制

画像出典:厚生労働省資料(平成23年10月26日、中医協)

 

このように、海外と比べた時、緩和ケアが日本に根付いていないことがよくわかります。

もちろん、海外と比較して遅れているからといって、それが悪いこととは限りませんが、参考にはすべきでしょう。

 

「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」とは?

 

以上、「緩和ケアの意味」と、「日本に緩和ケアが根付いていないこと」をご説明しました。

では、日本には緩和ケアのニーズがあるのでしょうか

また、その国内の制度・体制は整いつつあるのでしょうか

これが、今回の改定項目である「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」に関わってきます。

 

「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」の背景1:国民の気持ち

 

「自宅で療養したい」という国民の感情・願いは、「精神的苦痛の緩和」と密接に関係あります。

やや古いですが、平成23年の厚生労働省の資料によれば、「60%以上」の国民が、自宅で療養したいと考えています。

 

在宅医療に対する国民のニーズ

画像出典:厚生労働省資料(平成23年10月26日、中医協)

 

「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」の背景2:「看取り」段階での病院の必要性

 

上記と同様、平成23年の厚生労働省の資料(下図)によれば、

(国民が)希望する看取りの場」は、「47%」が「緩和ケア病棟」です。

つまり、「療養段階で希望する場所」と「看取り段階で希望する場所」は異なるということです。

※「看取り」の定義や背景等については、「2030年の「看取り難民」問題、その本質とは?(1)」を参照してください

 

国民が希望する療養場所、看取り

画像出典:厚生労働省資料(平成23年10月26日、中医協)

 

「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」の背景3:拠点病院の体制不備

 

「背景2」では、「看取り段階で希望する場所」として「緩和ケア病棟」が多いことが分かりました。

この点、緩和ケア病棟(拠点病院)の受け入れ体制は、日本では確立しているのでしょうか。

その「体制不備」を示すのが、下図になります。

 

緩和ケア病棟入院までの平均待機時間

画像出典:厚生労働省資料(平成23年10月26日、中医協)

 

「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携」の意義

 

ここまでで、下記3つの事実が認められました。

 

  • ①多くの国民が「在宅での療養」を望んでいる
  • ②ただし、「看取り」段階では、半数近くが緩和ケア病棟を必要としている
  • ③しかし、日本ではその受け入れ体制が整っていない

 

 

すなわち、これら3つの事実への「対処法」として重要なことは、下記の3つになります。

 

  • a. 在宅療養の整備
  • b. 拠点病院の確保
  • c. 病院と在宅の連携

 

つまり、本記事で扱う「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」は、

この中で言えば、「c」に関わる改定項目ということがわかります。

※ちなみに、すでにビーナースで取り上げた「地域がん診療病院・小児がん拠点病院の評価」は、
 「b」に関わる改定ということも理解できます。

 

「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」の概要

 

それでは、「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」の改定項目の内容に触れていきましょう。

 

・本改定の趣旨

 

緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価について

 

・本改定の基本的な考え方

 

外来で治療を受けるがん患者が、適切な時期に在宅医療への紹介を受けることで、

終末期により質の高い在宅でのケアを受けることができるよう、

終末期に近いがん患者について、外来から在宅への連携を評価する。

 

・改定項目概要

 

進行がん患者の緩和ケアに係る外来から在宅への切れ目のない移行を図り、

在宅において質の高い緩和ケアを提供する体制を実現するため、

進行がん患者に対して外来で化学療法又は緩和ケアを行う保険医療機関が、

当該患者を在宅で緩和ケアを実施する別の保険医療機関に適切な時期に紹介することの評価を新設する。

 

 

「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」の具体的内容

 

下記の項目が新設されました。

 

(新) 外来がん患者在宅連携指導料 500 点(1人につき1回に限る。)

[算定要件]
外来で化学療法又は緩和ケアを実施している進行がんの患者であって、
在宅での緩和ケアに移行が見込まれるものについて、
患者と診療の方針等について十分に話し合い、患者の同意を得た上で、
在宅で緩和ケアを実施する別の保険医療機関に対して文書で紹介を行った場合に、
1 人につき 1 回に限り所定点数を算定する。

 

 

「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」 まとめ

 

以上が、「(ホスピス)緩和ケア」に関わる改定項目(「がん治療中の外来患者の在宅医療への連携の充実」)の整理になります。

まだまだ改定から間もないため、独自の解釈は控えております。

今後、業務等で改定にかかわる疑問が出てきたときには、ビーナースでざっと把握していただければ幸いです。

 


☆本記事に関連する診療報酬改定記事はこちら

 

訪問看護に係る診療報酬改定2016まとめ

緩和ケア係る診療報酬改定2016まとめ

在宅医療における看取り実績に関する評価の充実

在宅自己注射指導管理料の見直し

機能強化型訪問看護ステーションの要件見直し

病院・診療所からの訪問看護の評価

地域がん診療病院・小児がん拠点病院の評価

 

☆「緩和ケア」に関するおすすめ記事はこちら

 

緩和ケアに関して優れた知見をお持ちの梅田先生のインタビュー記事

訪問看護ステーション現場スタッフのリアルな声(5分弱の動画あり)

 


 

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