平成28年度(2016年)の診療報酬改定では、
在宅医療・訪問看護・(ホスピス)緩和ケア・看取りに関する制度改定が多数行われました。
これは、「在宅」領域が医療・看護・介護業界に関わる方々”すべて”に少なくない影響を与えるものと思われます。
しかし、webサイトでは、政府資料のペーストがされているのみで、情報が整理されているとは言い難いのが実情。
そこで、ビーナースが他サイトに先駆け、「在宅」にかかわる診療報酬改定項目を順次見やすい形に整理していきます。
今回は、中でも「訪問看護」に関わる改定項目(「病院・診療所からの訪問看護の評価」)を、用語解説を含めてご説明します。
※公式資料はこちら(本記事に関連するのはp136-139)
本記事の目次
「病院・診療所からの訪問看護」とは? ~3つの前提事実~
ここではまず、「病院・診療所からの訪問看護とはなにか(:どういう意味を持っているか)」という点をご説明します。
なお、地域包括ケアシステムの推進に伴い、「在宅医療」や「訪問看護」が非常に重要になるというのは大前提として、以下3つのポイントをお示しします。
前提事実その1:2014年12月末時点で訪問看護ステーションに就業している看護師は、わずか2%
画像出典:medwatch.jp
前提事実その2:入院から在宅、介護を継ぎ目なく提供する「シームレスケア」の実現には程遠い
訪問看護を実施する医療機関は少数派(病院では19.3%、診療所では2.5%)にとどまっています。
そのため、入院から在宅、介護を継ぎ目なく提供する「シームレスケア」を、現状でないしは近い将来のうちに実現するには、かなり厳しい状態です。
「シームレスケア」実現のためには、病院や診療所の看護師が積極的に訪問看護を行い、そこで得た知見や経験を基に「在宅を見据えた退院支援の実施」や「訪問看護ステーションの開設」などを進めることが必要だからです。*
* 実際の訪問看護事業所における訪問看護師の活動(一日の流れ)はこのようなイメージです
画像出典:medwatch.jp
前提事項その3:病院・診療所と訪問看護ステーションの報酬の差異が、病院の訪問看護活動抑制の原因となっている可能性
下図は2014年の診療報酬改定を図示したものですが、この問題は2016年でも続いています。
なお、2015年度の「介護報酬改定」でも、病院や診療所による訪問看護への報酬を増額しました。(参照)
画像出典:medwatch.jp
「病院・診療所からの訪問看護の評価」の概要
では、「病院・診療所からの訪問看護」の意味・意義について確認したところで、改定項目の内容に触れていきましょう。
・本改定の趣旨
「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」
・本改定の基本的な考え方
「在宅医療のニーズの増大に対応した訪問看護の提供体制を確保する。 」
・改定項目概要
病院・診療所からの訪問看護をより評価するために、在宅患者訪問看護・指導料等を充実する。*
* 「在宅患者訪問看護・指導料等」について、参考はこちら
「機能強化型訪問看護ステーションの要件見直し」の具体的内容
本改定に関するポイントは、下記の文章の繋がりにあります。
病院・診療所からの訪問看護をより評価するために、在宅患者訪問看護・指導料等を充実する。
すなわち、下記のような論理構造があります。
- ①これから訪れる2025年問題や2030年問題に立ち向かうには、「シームレスケア」など病院の訪問看護への積極的取組が必要
- ②しかし、病院・診療所の訪問看護の取り組みが芳しくない
- ③それは、「前提事実3」で述べたとおり、「病院・診療所からの訪問看護の評価」が十分でない」ためである疑義がある
- ④したがって、「より評価する」一つの手段として、「在宅患者訪問看護・指導料等を充実」する
具体的には、下の表のような改定が行われました。
現 行 | 改定案 |
【在宅患者訪問看護・指導料】】
1 保健師、助産師又は看護師 2 准看護師による場合 3 悪性腫瘍の患者に対する緩和ケア又は |
【在宅患者訪問看護・指導料】
1 保健師、助産師又は看護師 2 准看護師による場合 3 悪性腫瘍の患者に対する緩和ケア又は |
【同一建物居住者訪問看護・指導料】
1 保健師、助産師又は看護師(3の場合を除く。)による場合 2 准看護師による場合 |
【同一建物居住者訪問看護・指導料】
1 保健師、助産師又は看護師(3の場合を除く。)による場合 2 准看護師による場合 |
【精神科訪問看護・指導料】
1 精神科訪問看護・指導料(Ⅰ) 2 精神科訪問看護・指導料(Ⅱ) 3 精神科訪問看護・指導料(Ⅲ) ロ 准看護師による場合 |
【精神科訪問看護・指導料】
1 精神科訪問看護・指導料(Ⅰ) 2 精神科訪問看護・指導料(Ⅱ) 3 精神科訪問看護・指導料(Ⅲ) ロ 准看護師による場合 |
【退院前訪問指導料】 退院前訪問指導料 555点 |
【退院前訪問指導料】 退院前訪問指導料 580点 |
まとめ
以上が、「訪問看護」に関わる改定項目(「病院・診療所からの訪問看護の評価」)の整理になります。
まだまだ改定から間もないため、独自の解釈は控えております。
今後、業務等で改定にかかわる疑問が出てきたときには、ビーナースでざっと把握していただければ幸いです。
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