本記事の目次
超重症児の現状と、在宅での医療的ケア担当者の現状
超重症児の現状は、日本重症児福祉協会によれば次のようにされています。(2010年6月時点)(一部改訂)
超重症児の現状
- 現在、194ケ所で、約1万9,000ベッドを用意できるに至っておりますが、入 所率は97%と、ほぼ満杯状態です。
入所待機者は約5,000人に及びます。
待機者のほとんどは、新生児集中治療室NICUや小児病棟などに長期間滞留する「呼吸管理」などが欠かせない「超重症児」「準超重症児」と、一方では長年在宅で世話を続けてきたが、両親の病気や高齢化あるいは死亡に伴ない、在宅介護が不可能になった人達で占められています。
重症児施設は、 これら入所の方々だけでなく、在宅支援の拠点としての役割も、積極的に果たしております。
つまり、現段階においては施設の不足が深刻であること、在宅介護に限界を感じている方が相当数いるという現状があげられます。
画像出典:mhlw.go.jp
在宅での医療的ケアの担当者、支援者の現状
次に、在宅での医療的ケアの担当者、支援者の現状について見ていきましょう。
在宅での医療的ケアの担当者、支援者の現状は、日本小児科学会倫理委員会によれば次のようにされています。(2010年6月時点)
定期的診察の大半が外来診療であるが、在宅での呼吸器管理含め呼吸器をつけての通院が厳しい場合が多い。
いま施策で推進しよ うとしている訪問診療は小児や障害児者についてはきわめて限られたもので、地域も千葉、大阪、兵庫の大都市部を中心にわずかに行われているだけである。
訪問看護ステーションの利用率は滋賀県がトップの 29%で、ついで神奈川 26%、兵庫 22%、大阪と千葉が同じく 17%であり、残りの 3 県は 10%以下であった。
しかし、平均が 18%であり全体的に少数である。
これは高齢者の 介護保険利用を主とした運営と異なり、医療保険での対価の低さと居住地域が広範囲になることでの訪問効率の悪さも関係して、事業そのものが成立しにくいことが関係していると思われる。
以上が医療の範囲になるが、介護の立場からみると、家族支援が 97%を占めている。
そしてそのほとんどが母親による介護である。
このことから在宅で医療的ケアの子どもたちが生活するには家族支援が現状では必須条件になっていることが伺える。
家族以外の介護の主な支援としての ヘルパーは全体でも 12%しかない。この支援も地域差があり、多い順に奈良の 26%、兵庫 19%、 大阪 14%となる。
訪問看護とヘルパー介護の利用地域差もみられた。
つまり、家族支援だけでは限界を感じている家庭が多いにも拘わらず、訪問看護ステーションの利用率とヘルパー介護の利用率が低いままであると言えます。
しかし、過去に比べれば小児の訪問看護の利用者数は上がっているということは次の画像を見て頂ければ分かるでしょう。
画像出典:mhlw.go.jp
確かに、過去に比べれば小児の訪問看護利用者数は増えています。
しかし、これでも現状においてはまだまだ利用者が少ないということですね。
超重症児の課題
次に、超重症児に関わる課題について医療・福祉上の課題、在宅部門における課題という二面から見ていきましょう。
医療・福祉上における超重症児の課題
医療・福祉上における超重症児の課題について、日本重症児福祉協会によれば次のようにされています。
- ①医師・看護師等の確保の困難
- ②定義どおりの「重症心身障害児・者」なかでも「超重症児」「準超重症児」の増加が顕著
- ③常時ほぼ満床状態
- ④入所待機者は全施設共通の課題。とくに「超・準超重症児」の受け入れ困難の改善(NICU 等での滞留状態の改善と在宅児のショート受け入れのため)
在宅部門における超重症児の課題
在宅部門における超重症児の課題について、日本重症児福祉協会によれば次のようにされています。
- ①「重症心身障害通園事業」の維持・改善 A 型(15 名定員)での「準・超重症児加算」の新設
- ②「障害者自立支援法」下での「療養介護型」の重症児通園事業の設定(「生 活介護」でなく)・「短期入所」での「準・超重症児加算」の新設
画像出典:mhlw.go.jp
つまり、超重症児が増えている現状に対して施設の新設をすることは必要不可欠であるといえるでしょう。
「超重症児」の登場。重症心身障碍児との違い、そして超重症児の現状と課題とは? まとめ
これまで、超重症児の定義に始まり、超重症児が登場した背景、そして超重症児の現状と課題と見てきました。
最後に、日本小児科学会倫理委員会による超重症児の課題に対する提言を引用させて頂きます。(一部改訂)
- ・小児在宅医療拡大への施策
- ・小児訪問看護ステーション事業が展開できる条件の拡大
- ・ヘルパーによる医療的ケア支援を可能にする条件整備
まだ、小児在宅医療の制度自体などが未発達と言えるでしょう。
今後、小児在宅医療拡大への施策が整い、小児訪問看護ステーション事業が発展することで重症児の方とその親御さんにとっても、より良い生活を送ることができるようになる時が来ることを願うばかりです。
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