訪問看護が注目を浴びている背景事情とは?
訪問看護は、利用者が安心して豊かな療養生活を送れるための様々な「支援」(ないしは関連各所との調整)をする職種ですが、
そんな訪問看護師という職業、なぜ注目を浴びるに至ったのでしょうか?
この点を以下見ていきます。
画像出典:akicomp.com
①患者さんの意志やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の尊重
1つ目の背景事情は、「社会的な要請・要望」にかかわるものです。
現代における価値観の多様化や「インフォームドコンセント」(患者さんへの正しい情報開示と合意)の広がりによって、治療方法の選択に患者さんが積極的に関わるケースが増えてきました。
「自分らしい生活をしたい」という患者さんのQOLに関する希望をできるだけ実現しようとする医療従事者の意識も以前より高まっています。
その結果、「自分らしい生活をしたい」と自宅での療養を希望する患者さんが安心して在宅療養を選択できるようなサービス(の充実)が求められるようになった、
すなわち、訪問看護領域の重要性が増すことになったのです。
②医療施策による、入院治療後の速やかな退院の促進
2つ目の背景事情は、「行政」にかかわるものです。
行政の医療政策として、「長期入院にかかる医療費の抑制」や「効率的な病床の活用」を目的に、病院から在宅への療養環境の移行を後押しする動きがあります。
患者が必要な入院治療後にスムーズに退院できるよう支援する機能・体制を備えた病院に、報酬面で高評価をあたえる制度(診療報酬改定)を設けるなどしています。
このように、高齢化社会との関連性を含めた行政的な側面もあることは押さえておきましょう。
③在宅療養支援診療所・訪問看護ステーションの増加
3つ目の背景事情は、実際の「社会的な受け入れ体制」の側面です。
在宅療養支援診療所とは、「24時間体制で連絡可能」「連携する保健機関や訪問看護ステーションと適切に情報共有している」など、積極的に在宅医療に取り組む体制を備えた診療所・クリニックのことですが、2006年に制度化された在宅療養支援診療所は、当初全国で約9400件でした。
しかし、上記2つの背景事情もあり、2012年には約1.4倍の約13800件に増えました。
このような社会的な受け入れ体制が整ってきた(※)こともあって、ますます訪問看護領域への期待が高まったのです。
(※)なお、「訪問看護ステーション」の数を見ても、平成12年から23年の11年間は全国約4700‐5500件の間で推移していましたが、平成24年は約6600件、平成25年は約6800件、平成26年は約7500件と増加傾向です。
在宅療養支援診療所の増加と合わせて、在宅医療・在宅看護の受け皿が広がっているといえます。
「看護と訪問看護の目的」まとめ ~太陽と月~
看護の目的は「治療」/訪問看護の目的は「支援」
このように一行でまとめると、当たり前のこととして見逃してしまいがちですが、しっかり考察すると、この2つの違いは非常に大きいかと思います。
たとえるならば、看護師は「太陽」で、訪問看護師は「月」のような存在だといえるでしょう。
看護の光で照らすことが出来ない領域を、訪問看護の優しい光で包み込む。
人間が昼と夜で生活のリズムを作っているのと同じように、社会にも看護と訪問看護で健康的なリズムを作っていかねばなりません。
→次回の第5回は、そんな看護師と訪問看護師がどのように働いているのかについて述べていきます!
【主要参考文献】
・全国訪問看護事業協会
・JVNF
・訪問看護ナビ
・転職maquia
・訪問看護ステーション
・厚生労働省『在宅医療(その4)』
・一般社団法人全国訪問看護事業会『平成26年訪問看護ステーション数調査結果』
【推薦図書(訪問看護の意義についてもっと知りたい方はこちらをどうぞ)】
・だから訪問看護はやめられない: 訪問看護の魅力、ぜんぶ教えちゃいます!
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