平成28年度(2016年)の診療報酬改定では、在宅医療・訪問看護・(ホスピス)緩和ケア・看取りに関する制度改定が多数行われました。
これは、「在宅」領域が医療・看護・介護業界に関わる方々”すべて”に少なくない影響を与えるものかと思われます。
しかし、web上のサイトでは、政府資料のペーストがされているのみで、まだまだ情報が整理されているとは言い難いのが実情です。
そこで、ビーナースが他サイトに先駆け、「在宅」にかかわる診療報酬改定項目を順次見やすい形に整理して参ります。
今回は、中でも「訪問看護」に関わる改定項目(「在宅指導管理料等の適正な評価」)を、用語解説を含めてご説明します。
※公式資料はこちら(本記事に関連するのはp129-131)
画像出典:shutterstock.com
本記事の目次
「在宅指導管理料」とは?
まず、「在宅(療養)指導管理料とはなにか」という点をご説明します。
「在宅療養指導管理料」とは、、、
「当該指導管理が必要かつ適切であると医師が判断した患者について、患者又は患者の看護に当たる者に対して、当該医師が療養上必要な事項について適正な注意及び指導を行った上で、当該患者の医学管理を十分に行い、かつ、各在宅療養の方法、注意点、緊急時の措置に関する指導等を行い、併せて必要かつ十分な量の衛生材料又は保険医療材料を支給した場合」
に算定するものです。(厚労省資料より引用)
つまり、簡単に言えば。。。
治療を受けた医療施設から退院した患者が在宅で療養するに当たり必要となる各種の指導を受ける場合に算定される費用
のことです。(引用元)
「在宅療養指導管理料」には、次のような管理料が含まれます。
- C100 退院前在宅療養指導管理料
- C101 在宅自己注射指導管理料
- C101-2 在宅小児低血糖症患者指導管理料
- C101-3 在宅妊娠糖尿病患者指導管理料
- C102 在宅自己腹膜灌流指導管理料
- C102-2 在宅血液透析指導管理料
- C103 在宅酸素療法指導管理料
- C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料
- C105 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料
- C105-2 在宅小児経管栄養法指導管理料
- C106 在宅自己導尿指導管理料
- C107 在宅人工呼吸指導管理料
- C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料
- C108 在宅悪性腫瘍患者指導管理料
- C108-2 在宅悪性腫瘍患者共同指導管理料
- C109 在宅寝たきり患者処置指導管理料
- C110 在宅自己疼痛管理指導管理料
- C110-2 在宅振戦等刺激装置治療指導管理料
- C110-3 在宅迷走神経電気刺激治療指導管理料
- C110-4 在宅仙骨神経刺激療法指導管理料
- C111 在宅肺高血圧症患者指導管理料
- C112 在宅気管切開患者指導管理料
- C114 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料
- C116 在宅植込型補助人工心臓(非拍動流型)指導管理料
「在宅指導管理料等の適正な評価」の概要
では、「在宅指導管理料」について確認したところで、改定項目の内容に触れていきましょう。
・本改定の趣旨
「質の高い在宅医療・訪問看護の確保すること」
・本改定の基本的な考え方
「在宅酸素療法及び CPAP 療法の管理料について、医師の判断に基づき患者が受診しない月においても、使用される機器等の費用については評価することとする。また、睡眠時無呼吸症候群と慢性心不全を合併している患者に対する ASV 療法について、その有効性を踏まえ、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料における評価を明確化するとともに、あわせて材料加算を設定する。 」
<用語解説>
・在宅酸素療法(HOT)
Home Oxygen Therapyの頭文字 をとって、HOT (ホット)と呼び、在宅酸素療法という意味です。
在宅酸素療法とは、病状は安定していますが、体の中に酸素を十分に取り込めないという患者様に対して、長期にわたりご自宅で酸素吸入をする治療法です。
この治療法は、家庭生活や職場への復帰が可能となり、生活の質 “Quality of Life”を高めるお手伝いをします。(引用元)
・CPAP療法
CPAPとは、鼻に装着したマスクから空気を送りこむことによって、ある一定の圧力を気道にかける方法です。
Continuous Positive Airway Pressureの頭文字をとってCPAP(シーパップ)と呼ばれ、いまや睡眠時無呼吸症候群(SAS)のもっとも重要な治療法となっています。(引用元)
・ASV 療法
ASV療法とは心不全の患者さんに対して行う呼吸療法で、CPAP同様にマスクを装着して行う治療です。
CPAPは気道に酸素を送り込む機械ですが、ASVは呼吸に合わせて空気を送り、圧を調整してくれます。(引用元)
・改定項目概要
1. 在宅酸素療法指導管理料について、診療に関する評価と材料費に関する評価を分けた上で、医師の判断に基づき患者が受診しない月を含め、1回の受診で最大3月分まで使用される機器の費用を評価した加算を算定できることとする。 *
2. 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料及び治療器加算について、ASV 療法130に対する評価を新たに追加するとともに、診療に関する評価と材料費に関する評価を分けたうえで、医師の判断に基づき患者が受診しない月も含め、1回の受診で最大3月分まで、使用される機器の費用を算定できることとする。 **
3. 在宅呼吸療法の機器加算のうち、現在2月に2回算定可能としているものについて、3月に3回算定可能とする。 ***
* 「在宅酸素療法指導管理料」とは、「在宅酸素療法を行っている入院中の患者以外の患者に対して、在宅酸素療法に関する指導管理を行った場合に算定する」もの。(引用元)
** 「在宅持続腸圧呼吸療法」とは、「睡眠時無呼吸症候群又は慢性心不全である患者について、 在宅において実施する呼吸療法」のことです。
また、「在宅持続腸圧呼吸療法指導管理料」とは、「在宅持続陽圧呼吸療法を行っている入院中の患者以外の患者に対して、在宅持続陽圧呼吸療法に関する指導管理を行った場合に算定する」ものです。(引用元:同上)
*** 「在宅呼吸療法」とは、「機器を使って呼吸の補助をおこない、過剰にたまった二酸化炭素を排出し、酸素の取り込みを促す」治療法のこと。(引用元)
「在宅指導管理料等の適正な評価」の具体的内容
1.「在宅酸素療法指導管理料」に関する改定の具体的内容
まず、「1」の「在宅酸素療法指導管理料」に関する改定ですが、ポイントは下記に分けられます。
- ①診療に関する評価と材料費に関する評価を分けたこと
- ②1回の受診で最大3月分まで使用される機器の費用を評価した加算を算定できるようになったこと
具体的には、下の表のような改定が行われました。
現行 | 改定案 |
【在宅酸素療法指導管理料】(月1回) 1 チアノーゼ型先天性心疾患の場合 1,300点 2 その他の場合 2,500点(新設) |
【在宅酸素療法指導管理料】(月1回) 1 チアノーゼ型先天性心疾患の場合 520点 2 その他の場合 2,400点【在宅酸素療法材料加算】(3月に3回) 1 チアノーゼ型先天性心疾患の場合 780点(新) 2 その他の場合 100点(新) |
2.「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」に関する改定の具体的内容
次に、「2」の「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」に関する改定ですが、ポイントは「1」と同様、下記のように分けられます。
- ①診療に関する評価と材料費に関する評価を分けたこと
- ②1回の受診で最大3月分まで使用される機器の費用を評価した加算を算定できるようになったこと
具体的には、下図(中部)のような改定が行われました。
画像出典:厚生労働省保健局医療課
3. 「在宅呼吸療法の機器加算」に関する改定の具体的内容
最後に、「3」の「在宅呼吸療法の機器加算」に関する改定ですが、ポイントは概要文面のママです。
- ・在宅呼吸療法の機器加算のうち、現在2月に2回算定可能としているものについて、3月に3回算定可能とする。
具体的には、下の表のような改定が行われました。
現行 | 改定案 |
【酸素ボンベ加算、 2月に2回に限り、所定点数に加算する。 |
【酸素ボンベ加算、 3月に3回に限り、所定点数に加算する。 |
まとめ
以上が、「訪問看護」に関わる改定項目(「在宅医療における看取り実績に関する評価の充実」)の整理になります。
まだまだ改定から間もないため、独自の解釈は控えております。
今後、業務等で改定にかかわる疑問が出てきたときには、ビーナースでざっと把握していただければ幸いです。
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