平成28年度(2016年)の診療報酬改定では、
在宅領域(在宅医療・訪問看護・(ホスピス)緩和ケア・看取り)に関わる制度改定が多数行われました。
これは、在宅領域が医療・看護・介護業界に関わる”すべて”の方々に大きな影響があることを意味します。
しかし、webサイトでは、政府資料のペーストがされているのみで、情報が整理されているとは言い難いのが実情。
そこで、ビーナースが他サイトに先駆け、「在宅」にかかわる診療報酬改定項目を順次見やすい形に整理していきます。
今回は、中でも「看護師の業務に係る」に関わる改定項目(「看護職員と看護補助者の業務分担の推進」)を、用語解説を含めてご説明します!
※公式資料はこちら(本記事に関連するのはp62-63)
画像出典:hee.nhs.uk
「看護職員と看護補助者の業務分担」について
まず、看護補助者の役割について確認し、なぜ「業務分担」を推進する必要があるのかという背景部分について述べていきます。
「看護補助者」の業務範囲
看護補助者は、下記2つの要素を持つ職種になります。
- ①医療を提供する場における、看護チームの一員としての業務の補助であり、かつ、
- ②医療に関する免許を必要としない業務である(すなわち、看護師の業務 である「療養上の世話」と「診療の補助」自体を看護補助者が行うことはできない)
そんな看護補助者の業務範囲は、下記2つの要素をふまえて策定されます。
- ①看護の専門的判断を要さない業務であること
- ②医療に関する免許を必要としない業務であること
また、看護補助者の業務範囲には「生活環境に関わる業務」「日常生活に関わる業務」「診療に関わる周辺業務」等があります。
その点、日本看護協会の「看護補助者活用推進のための看護管理者研修テキスト」(平成25年3月)に業務範囲が詳しく示されています。
そちらを参照・引用して作成したのが、下表になります。
1.生活環境に関わる業務
業務内容 | 備考 |
1)病床および病床周囲の清潔・整頓
(1)環境整備 2)病室環境の調整 3)リネン類の管理 |
※以下の患者に関する業務の実施や方法に ついては、業務基準、もしくは看護職員 の指示に従う。
・呼吸器疾患患者(気管支喘息、ハウスダ ストアレルギーなど) ・感染症患者(疥癬等含む) ・放射性医薬品を使用した患者 ・気密性が要求される病室に入室している 患者(無菌室、陽圧または陰圧室など) ・特殊な治療を行う患者(脳低体温療法な ど) ・手術後の患者 ・医療機器や衛生材料をリネンとともに使 用する患者(熱傷、広範囲の創傷のある 患者など) |
2.日常生活 に関わる業務
業務内容 | 備考 |
1)身体の清潔に関する世話 (1)患者の身体の清潔・更衣 ・全身清拭、部分清拭 ・シャワー浴、入浴、部分浴 ・洗髪/洗面と結髪等の整容 ・口腔内の清潔保持 ・寝衣交換、おむつ交換 (2)必要物品の準備・片づけ ・使用した物品の一次消毒 ・感染症患者等に使用した物品の片づけ2)排泄に関する世話 (1)排泄の世話 ・排泄の介助(トイレ/ポータブルトイレ、便器、尿器) (2)便器・尿器・蓄尿瓶の洗浄消毒 ・便器、尿器の準備、片づけ ・膀胱内留置カテーテルにたまった尿の後始末3)食事に関する世話 (1)配膳・下膳 ・患者の準備(オーバーテーブルの整頓、エプロン、入れ歯確認、体位調整手伝い) ・食事制限等のない患者の配膳と下膳(配茶、食事摂取量の報告含む) (2)食事介助 ・食事介助/経管栄養の準備、片づけ4)安全・安楽に関する世話 (1)体位変換 ・臥床患者の体位変換(安楽な体位の保持)を行う看護職員の補助 (2)罨法 ・コミュニケーション障害や運動障害のない患者、医療機器等を装着していない患者の罨法/物品の準備と片づけ (3)見守り ・認知症患者等の見守り ・不安、不穏が見られる患者の見守り |
・看護補助者が単独で業務を行った場合、業務を通じて得られた情報(皮膚の状態、食事量、患者の自覚症状、患者の思いなど)は 適宜看護職員に報告する。・患者に直接関わる業務をする際は、その業務に関連するリスクや救急時の対応についての教育を十分に行い、 患者の安全を守るためチームとしての行動が取れるような準備をしておく。・入浴、シャワー浴、清拭、足浴、手浴、洗髪、結髪、歯磨き、つめきり、ひげそりなど多彩な身体の清潔援助がある。 また、ベッド上や浴室など行う場所が異なったり、全面介助、部分介助、見守り、物品のみの準備や後片づけ、 移送を含むかといった介助のレベルが異なったりする。 それぞれの効果とリスクを理解した上で実施できるようにする。・排泄物の後始末に関しては、量や性状の報告方法、検体提出時の対応、感染防止対策、 放射性医薬品を使用した患者のおむつや蓄尿の扱いをどうするかといった事項を検討し、業務内容を判断する必要がある。・汚染器具や洗浄消毒薬の取り扱い、洗浄方法は院内基準に従う。・患者の食事、水分摂取量のチェックが必要な場合、看護職員は看護補助者に、観察項目等を説明し、看護補助者は得られた情報を看護職員に報告する。 ・誤嚥のリスクや予防法、救急時の対応についての教育を十分に行い、患者の安全を守るためチームとしての行動が取れるような準備をしておく。 ・骨折や脱臼のリスクのある高齢者、特殊な治療を行っている患者(各種ドレナージなど)、体動制限のある患者、褥瘡や皮膚障害、 ・MRI 検査、RI 検査など、特別な準備を必要とする患者の移送は、移送先の看護職員とも連携を図る。 |
3.日常生活 に関わる業務
業務内容 | 備考 |
1)検査・処置等の伝票類の準備、整備
2)診療に必要な書類の整備・補充 ・電子診療録への患者データベースの代行入力 3)診察に必要な器械・器具等の準備、片づけ 4)診療材料等の補充・整理 5)入退院・転出入に関する世話 |
・医療クラークや事務職員との役割分担を考慮する。
・看護補助者が代行入力を行う場合は、看護職員が入力内容の確認を行う。 ・実施において得られた患者の情報(入院・退院への思いなど)は看護職員に報告する。 |
※参考 / 中谷順子:看護職と看護補助者の役割分担と連携について.看護 64(12).46-49.2012
看護補助者の役割の明確化について
看護補助者の役割の明確化については、上述した「看護補助者活用推進のための看護管理者研修テキスト」にて次のように述べられています。
看護職員と看護補助者が相互に役割を認識し、質の高いサービスの提供を目指して協働するためには、看護補助者の業務基準及び業務マニュアルのような明文化されたものが必要である。
看護管理者はこれらを策定し、看護補助者及び協働する看護職員や医療関係職に周知することが求められる。
では、なぜ近年この「業務明確化」が叫ばれているのか、その背景について述べていきます。
看護補助者活用推進の流れ
これもまた上に同じく、「看護補助者活用推進のための看護管理者研修テキスト」を参照し、要約すると、次のような経緯・背景があります。
- ・近年、医療現場では「チーム医療」の実践が広がっている
- ・看護職員をはじめとした医療関係職が専門性を必要とする業務に専念するための業務分担も推進され、業務を補助する看護補助者を看護チームの一員として効果的に活用することが望まれている。
- ・平成 19年 12 月厚生労働省医政局通知「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」/平成 22 年 3 月厚生労働省「チーム医療の推進について(チーム医療の推進に関する検討会報告書)」でも、協働に関する検討の必要性が示された。
- ・社会保険診療報酬においては、昭和 33 年の基準看護創設時より看護補助者は看護職員と区別せずに看護要員として評価されてきたが、、、
- ・平成 6 年度からは看護配置の低い病棟に対して看護補助加算として独立した評価がなされた。
- ・また、平成 22 年度の改定においては、一般病棟入院基本料の 7 対 1 等の比較的看護配置が高い病棟に対する看護補助者の配置を評価する「急性期看護補助体制加算」が新設された
- ・平成 24 年度の改定では、それまでの基準をさらに上回る看護補助者等の配置が、手厚く評価された。
- ・同時に新設された「夜間急性期看護補助体制加算」は、看護補助者の夜間の配置を促すもので、健康・安全・生活の 3 つのリスクがあると言われる夜勤・交代制勤務をする看護職員の負担軽減に直接的につながるものである。
画像出典:aishinkan.jp
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